第4話 キマちゃんとスイミング
キマちゃんと私はお互い姉と同じ保育園に
通うことになった。
音楽教育に力を入れているカトリック系、私立幼稚園。
ここで私とキマちゃんは1年間離れることができた。
キマちゃんは年小さんから入園。
私は年中さんからの入園予定。
キマちゃんが幼稚園に行っている間
私はとっても平和だった。
遊びに誘われることも減り
イコールで自慢されることも減った。
公園では好きな遊具で遊べたし
家では自分の今見たい絵本を見れた。
離れたのは
お互いが違う習い事を始めたのも原因のひとつ。
キマちゃんはピアノ。
私はスイミング。
共に姉と同じ習い事だ。
姉妹とも同じ教室でピアノを勧められたが断った。
確かに家には母のピアノがあったのでピアノを習っても
おかしくはない。
しかし自らキマちゃんには近づきたくない。
これが私の答え。
それに我が家は毎年夏に海へ旅行に行っていた。
その為、ある程度泳げて欲しい。
との親の希望があった。
実際、私達姉妹は水が大好きだった。
ピアノを回避したところで
平和は長くは続かない。
キマちゃんが私のスイミングを羨ましがり
入会してきたのだ。
キマちゃんは私より始めたのが遅かったこともあり
当然一番下の級からのスタート。
でもキマちゃんがそれが気に食わない。
「みおちゃんより下。」
こんなことキマちゃんの中で許されるわけがない。
ここで登場。キマちゃんママ。
スクールに掛け合い(きっと脅す勢いだったんだろう)
私と同じ級まで飛び級してきた。
ママがモンスターと分かれば
先生たちの態度も変わる。
キマちゃんはスイミングでもお姫さまだった。
そもそも水が苦手なキマちゃんがすんなりできるわけもなく。
プールサイドに座ってのバタ足ですら
顔に水がかかるだけで嫌な顔。
挙句、
「みおちゃんがキマちゃんに水かけた」
と泣きだす始末。
だから嫌だったのに。
わざわざ通う曜日まで被せてきて
私を悪者にしようとする。
私は一日でも早くキマちゃんより
上の級に上がりたかった。
その為にオフロでもできる練習をした。
進級試験の日。
私は本当に頑張った。
産まれて初めての「努力」だったかもしれない。
スクール終了後プールサイド。
みんなの前で進級者が発表され進級証明カードが配られる。
結果は私が望むものだった。
キマちゃんは残留。私は進級。
これで私はキマちゃんと離れられる!!
喜んで更衣室で待つ母のもとへと行くと
そこにはプールサイドの様子を見ていた
母とキマちゃんママの姿があった。
「みおこ、おめでとう。」
そう母が言ってくれて嬉しかったが
後ろで泣いているキマちゃんの声が大きく
よく聞こえなかった。
早々に着替えを済ませて更衣室を出ていったキマちゃんに
チクリと罪悪感を感じたが、これは間違いなく私の努力の結果だ。
母も喜んでくれた。
帰りにアイスを買ってくれると約束もしてくれた。
私はどのアイスを買ってもらおうかと
思いを巡らせながら更衣室を出た。
するとそこには
キマちゃんと先生。
もちろんキマちゃんママも。
申し訳なさそうに先生が口を開く。
「みおちゃん…あのね?キマちゃんがね?
みおちゃんがいないと不安って言ってるの。
だからね?もう1カ月今までの級でキマちゃんと一緒に
頑張ってくれないかな?」
キマちゃんを難易度の上がる級へ無理に上げるよりも
私にもう1カ月簡単なことをさせる。
その方がいい。スクールの判断だろう。
のちに聞いた話だが母はこの時
「この1カ月の月謝はいただきませんので。。」
と先生に耳打ちされたらしい。
結果は
「私も残留。」
「みおちゃんは、キマちゃんと一緒じゃないとアカンねん。」
と言って帰って行ったキマちゃんの声が
頭にこだまして、母や先生にかけられた言葉も
耳には入ってこなかった。
1カ月の屈辱に耐えたのち
私はスクールに通う曜日を変えた。
変更先はもちろんキマちゃんがピアノの日。
のちにキマちゃんは小学校1年生までスイミングを続けた。
私とスクールで顔を合わせることはなかった。
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