第5話 俺と佐藤とお泊り
「黒尾くんって一軒家に住んでるんだね」
「元は祖父母の家だよ。お茶くらい出すからあがってけよ」
雫を背負ったままどうにか玄関を開けて、佐藤を誘った。
「ご両親はいないのかなあ」
「ご両親様はどっかに行ったきりだ。心配しなくても何もしないって」
「うーん、そうだよねえ。黒尾くんだもんねえ」
「なんかそこはかとなく男としてダメ扱いされた気もするが、ほら入れよ。もう暗いし、妹たちを寝かせたら送ってくからさ」
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
「おう。甘えろ甘えろ」
というか、さっさと雫たちを寝かせてやりたい。このままじゃかわいそうだ。
リビングの脇にある4畳半の畳の上に雫を寝かせて、佐藤の背中で寝ている邦志を預かり、雫の横に寝かせた。佐藤は何もいわずに、隅に畳んで置いてあったタオルケットを二人にかけてくれた。
「ありがとな。本当に助かった。今お茶持ってくるから。冷たいほうがいいかな?」
「できれば熱いほうがいいかなあ」
「まだ夜は冷えるもんな。ソファーに座っててくれ」
買い物袋を台所に持っていき、急須を出した。
「あ、門限とか大丈夫か。もしなんだったら電話しておくけど」
「うちは大丈夫だよ。それに黒尾くんが電話しちゃったらややこしくなっちゃいそうだよね」
それもそうか。雫の友達が来たときと同じことをしようとしていたが、考えてみれば佐藤と俺は同じ年なんだよな。
手を止めてソファーに座る佐藤を見つめた。
何だろうか。異物感というか、そういうのがない。何となくうちに溶け込んでいるような感じがする。これも佐藤の影が薄いことと関係しているのだろう。佐藤さんとは違う別の佐藤
ムフフと笑っていたら佐藤がこちらを見て首を傾げた。なんだろう。思わず目を逸らしてしまった。やましいことは考えていなかったのに負けた気持ちになった。
来客用の湯飲みと持ち手付きのコップで悩んだが、コップを選んでお茶を注いだ。リビングに出た。
「ほれ。熱いから気をつけろよ」
「あのね、黒尾くん。知ってると思うけど、わたしってそこまで子どもじゃないんだよ?」
「あ、すまん。つい」
コップをガラスのテーブルに置き、向かいのソファーに座った。佐藤がいただきますといって、コップを手にし、改めるようにリビングを見回した。
「あまり物がないんだね」
「あいつらがよくひっくり返すから物を減らしたんだよ。それにこっちのほうが掃除もしやすいしさ」
「へえ。掃除もするんだ」
「そりゃするだろ。あいつらは床で遊ぶし、
「そういう意味じゃないんだけど……」
俺だって鈍いわけではない。自分でいうのもなんだが、どちらかといえば勘は鋭い。だから佐藤のいわんとしていることは理解しているつもりだ。だがそこまで心を許すつもりはない。
お茶を一口すすり、コップをテーブルに置いて頭を下げた。
「今日は本当に助かった。恩に着る」
「うん。いいよ。子どもは好きだから」
「まあ、そんな感じだよな。雫はまだしも、あの人見知りの激しい
佐藤が、ううん、と悩んむように首をひねった。
「どちらかというと小学校の先生がいいかなあ」
「……やめておけ」
「どうして?」
「佐藤さんは舐められる。……あ、違う。子供にではなく保護者にだからな」
今度は挽回できたと思う。思っていた。佐藤が険のある視線を向けてきた。が、まったく威圧感はない。やっぱり子どもが抗議しているような感じしか受けない。
ふっと佐藤さんが眼差しから険を取り除いた。
「やっぱり黒尾くんは普通のクラスの子たちとは違うよね」
「普通だと思うけどな」
それはどうだろう、と佐藤が笑いながらいった。
「親戚のおじさんと話してるみたいな感じ、っていうのかなあ。そういう感じなんだよねえ」
「それは褒めてるんだよな?」
佐藤がくすくすと笑って誤魔化した。
まったく、よく笑い子だ。そんな顔をされたら追求できんだろうが。
「まあいいけど、それより商店街で何してたんだ? 用事ってわけでもなさそうだったけど」
「学校帰りにぶらぶらしてただけだよ」
「学校? 部活やってんの?」
「図書委員なんだ。ゴールデンウィーク前に棚整理とか棚卸とかを1年生だけでやることになっててね、それで」
「棚卸もやるのかよ。大変そうだな」
「そうだねえ。もう腕がパンパンだよ」
佐藤は顔をしかめて腕を揉んだ。本当に辛そうだ。
ううむ。参った。
「その上邦志まで抱えてもらったわけか。これはいよいよ感謝しないとダメだな」
「うん、いっぱい感謝していいんだよ?」
そういって佐藤はおいしそうにお茶を飲んだ。
こいつって、こういうやつだったのか。思わず笑ってしまった。「なあに?」と佐藤が不思議そうに訊いてきた。
「いや、なんでもない」
時計を見たら、20時半を越えていた。俺としたことがずいぶんと夕食が遅れてしまった。
「引き留めてすまん。送ってくよ」
「晩御飯は作らなくていいの? ハンバーグなんだよね?」
「まあどうせ米も炊かなきゃだし、米だけ仕かけて、その間に送れば問題ないだろ」
「手伝おうか?」
「いや、そこまではさすがに。それに時間があれだろ」
「うちなら大丈夫だよ? 昨日からおばあちゃんの家に行ってるから」
「佐藤さんを置いてか?」
「本当はわたしも行く予定だったんだけど、図書委員の仕事があることを忘れてたんだ。明日行けたら行くっていってあるんだけど、疲れちゃったからもういいかなあって」
「そうか。仲いいんだな」
「そうだねえ。妹たちがまだ小さいからおばあちゃんの家にはよく行ってるほうなんじゃないかなあ」
「小さいっていくつ? 弟? 妹?」
「2人とも妹だよ? 上が小学3年生で、下が1年生。雫ちゃんは2年生なんだよね?」
「まあな。でも校区は違うんだよな。そういえば佐藤さんの家ってどこなんだ?」
「知らずに送ってくれようとしてたんだ」
「送るといっても雫たちもいるし、駅までが限界なんだけどさ」
家から駅まで徒歩で15分だ。往復で30分。
米が炊き上がるのに40分。蒸らしの時間でプラス15分。佐藤を送って、夕食の下ごしらえ終わるころには蒸らしも済んでいる。何ら問題ない。
佐藤の家はうちの最寄り駅から一駅離れたところだという。だがうちから佐藤の家までなら自転車で15分の距離だった。校区は違う。ならば、佐藤の親と顔を合わせることはないな。
というか考えてみれば当たり前だった。佐藤と俺は通っていた学校が違う。まあ佐藤が私立の学校に通っていたという可能性はあったが、そこまで高い確率ではない。はなっから考慮する必要はなかったということだ。
となると、そこまで気を遣う必要はないか。しかも幼い妹がいるというではないか。さらにハンバーグ作りの手伝いを申し出るほどだ。料理の心得はあるのだろう。
これは使えるかもしれない。予定変更だ。
「家に誰もいないのかあ。それなら一緒に食べてかないか」
「ええ? いいのかなあ」
「どちらかというと食べていってくれたほうが助かる」
佐藤が目をぱちぱちと瞬いた。そしてまたもや首をひねった。
「いや、雫たちにはなるべく早く食べさせたいし、風呂にも入れなきゃならないしさ、佐藤さんを送るにしてもあいつらを寝かせてからのほうが助かるなあって。いや、ほんと、佐藤さんがよければなんだ。用事があるなら気にせずそういってくれ」
「用事はこれといってないんだけど。うーん、じゃあお言葉に甘えようかな?」
「よし」
うっかり、グッと拳を握ってしまった。
「ん?」
「いや。気にしないでくれ」
危ない危ない。やましい心がないとはいえないだけに、安堵した。
しかし、これで余裕ができた。ここに聖和がいたらどんな顔をするかな。見てみたい気もするが、あいつのことだから余計な気を回しそうなんだよな。
それから少しだけ学校のことをしゃべって、ハンバーグ作りにとりかかった。佐藤にも手伝わせている。むろん佐藤は自主的に動いているのであって、俺は一応断った。一応だ。
世間には本音と建前というものがある。断ったのは建前というやつであって、本音は労働力ゲットだぜくらいの気分だったのだ。あとからマッサージでもサービスしてやれば文句はいわんだろう。
学校が休みの日に妹たちの昼食を作っているというだけのことはあり、佐藤の手並みは慣れているようだった。お菓子作りも好きらしく、話の流れで、今度お菓子の作り方を教えてもらうことになった。
そもそも俺が甘いものが苦手ということもあるのだが、料理を覚えるだけで精いっぱいでお菓子作りまで回す時間がなかったのだ。いつかチャレンジしてみたいと思っていただけに、タダでお菓子作りを教えてもらえるというのは非常に助かる。味見役は甘党の聖和にお任せだ。
最後の盛り付けを佐藤に任せて、雫と
雫と邦志を子ども用の椅子に座らせた。いつもなら2人の間に俺が座って、横並びで食事をするのだが、相手が聖和ならまだしも、佐藤をひとりで対面に座らせるのは
うちの食卓に佐藤が混ざるというのは不思議な感じだったが、やはり違和感はない。ニンジンを食べようとしない邦志をなだめすかしてどうにか食べさせて、俺もどうにか食事を済ませた。
しばらく雫たちを遊ばせれば、いよいよ一日の締めである最後の聖戦だ。
お風呂━━。それは幼い子を持つ大人にとって、非常な体力を要する仕事だ。邦志の服を脱がせた。子どもというのはすっぽんぽんになった瞬間に何かが弾ける生き物らしい。俺が上着を脱いでいる間に邦志が脱衣場から脱走した。
「こら、邦志」
上着を脱ぎ捨てて、リビングに入ったところで捕まえた。
「いつもいつも暴れやがって。何がそんなに楽しいんだよ」
「にーちゃ」
「はいはい。わかったからおとなしくしてくれ」
ソファーに座って本を読んでいた佐藤が、大きく目を見開いていた。
「ごめん、驚かせたか」
邦志を抱っこしたまま佐藤を見たら、ふっと佐藤が表情を緩めた。
「男の子は元気だねえ」
「寝起きでおまけに食後だからな。風呂でもひと暴れしそうで恐ろしいよ」
「そうなんだ。わたしは妹しかいないからわからないけど、弟くんは大変そうだね」
「雫も前はこうだったぞ?」
「そうなの? じゃあ性格なのかなあ」
佐藤はおかしそうに笑い、立ち上がった。
「わたしも手伝うよ」
「……いや、さすがにそれはどうかと」
「…………そう、だね」
俺たちが今からどこに行くかを思い出したらしい。佐藤が顔を真っ赤にして顔を伏せて、ぽ寸とソファーに腰を戻した。腕の中で邦志が俺と佐藤を交互に見つめている。
「じゃ、じゃあ、ちょっと待っててくれ」
「う、うん」
気まずい。しかも上だけとはいえ俺も脱いでいる。
なんでだろう。学校で女子に上半身を見られてもなんとも思わないのに、家で見られると異常に恥ずかしかった。
風呂場に邦志を放り込み、逃がさないようにしてから全裸になり、ぴしゃりと風呂場の戸を閉じた。雫は気持ちよさそうに湯に浸かっている。まだ小学二年生なのに、だんだんとおばさん化してきているような気がして仕方がないのだが……。暴れる邦志を取り押さえて、身体を洗っている最中に雫が湯船を出た。
「タオルとパジャマは置いてあるからな」
声だけかけて邦志を包んでいる泡を流した。雫は「うん」と答えて出ていった。
そろそろ邦志もひとりで着替えくらいできるようにさせないとな。保育園の先生も家で練習をさせてくれといっていた。保育園でも指導してくれているらしいが、邦志は甘えん坊さんではあるが普段はおとなしい。ところが着替えに関しては手こずっているらしい。
邦志を湯船に放り込み、俺も軽く汗を流した。後からちゃんと風呂に入るから適当でいい。
バシャバシャと暴れる邦志を叱るも、少ししたらまた暴れ出す。二度目に暴れ始めたときが風呂を出るときだ。これは俺が決めたルールで、教育的な意図があるわけではない。
本当は邦志に自分でパジャマを着させたいのだが、今日は佐藤がいる。手を貸そうとしたら、邦志がパジャマを手にした。
「着るの」
邦志が自分で着るといってくれたことは素直に嬉しい。だが、なぜこんなときに限ってやる気を出すんだよと思わなくもない。まあ、得てしてそんなものだ。世の中はままならないということなんてわかっている。
手を貸したいのをどうにか堪えて、邦志の着替えを見守った。
ズボンの前後が逆だ。上のボタンもひとつづれている。
「にーちゃ」
邦志がパッと両腕を開いて、満面の笑みを浮かべた。この笑みを見て、誰が責められようか。
「よくやった。偉いぞ」
抱き着いて頬擦りして、ちゅっちゅした。
「にーちゃ」
「うんうん」
ひとしきり堪能して開放すると、邦志は一目散にリビングに向かった。雫に報告に行ったのだろう。
はたして雫がどんな反応を示すことか。ちょっと心配だが、そのときはそのときだ。シャツだけ変えてジャージを
リビングの床に尻もちをついたように座って、邦志がしくしくと泣いていた。
案の定だった。
雫と邦志は仲がいい。ただ、雫は邦志に対して厳しいときがある。俺が邦志に甘いから雫が代わりに厳しくしているのだと聖和はいうが、雫にこそ甘いと自分では思っている。
邦志ももちろんかわいいのだが、雫は女の子だ。しかも小学2年だ。あと2年もすれば頬擦りもさせてもらえなくなるに違いないのだ。
雫を堪能できるのは、あと2年くらいしない。今のうちにかわいさを堪能しておこうと思っているから余計に構ってしまうわけだ。そういう理由もあり、少々のことでは雫を怒ることはしない。
もっとも雫はあまり悪さをしないから怒る必要がないという理由もあるけど、お姉さんだからという理由で雫を怒ったことはない。これは断言できる。雫にはもっとわがままをいって欲しいくらいだ。受け入れる用意はあるのに、雫は感受性が強くて、かわいくて、お兄ちゃん思いで弟思いで、かわいくて、学校にもつれていきたいくらいに愛おしくて、そして何よりもかわいい子だから、どこかで遠慮しているのかもしれないと心配している。
佐藤は俺が来たことに気づくや、俺を見た後で困惑の眼差しを邦志に送った。佐藤の横に雫が座っている。本をせがまれたのだろう。
雫は本好きだ。これには俺の影響もあると思うが、雫の本来の性格もあるように思う。軽く手を振り、気にするなと合図を送って、邦志のもとに向かった。
佐藤が朗読を始めた。読んだ覚えのある話だった。ポケットに入っていたかつお節の削り粕を台所前のカウンターに置き、邦志をなだめながらパジャマを正しく着せ直した。
そうだ、思い出した。佐藤が読んでる本は……。有名な児童文学だ。少年三人とあるおじいさんの話だ。最後におじいさんが死んでしまうんだよな。雫にはまだ読んで欲しくない本なんだけど、なるようになるか。
「雫、そろそろ寝ろよ」
声だけかけてぐずっている邦志を連れて、先に歯磨きを済ませた。あれだけ寝たのに、邦志は布団に寝かせた後ですぐに眠りに落ちた。
「ねえお姉ちゃん、続き、だめ?」
リビングに戻ったら雫が立ち上がって、佐藤の制服の
「雫。無理はいったらダメだ。お兄ちゃんが後から読んでやるから先に歯を磨いとけ」
「でもお兄ちゃんすぐに話を変えるもん」
ぎくりとした。思いあたることがありすぎる。
「ねえ、お姉ちゃん。お兄ちゃんね、シンデレラと王子様をくっつけないんだよ」
佐藤が困ったように顔をゆがめた。そりゃそうだ。雫の説明で理解できる者などいないだろう。だが雫がいったのは事実だ。
たしかにシンデレラには同情すべき点もある。だが、あいつは
だからシンデレラの対抗馬として、亡国の元プリンセスという人物を登場させた。元プリンセスは国の復興を願っており、そのために何としても王子様と結婚しなければならなかった。
覚悟が違うのだ。そして自分では何もしないシンデレラは王子様を奪われて、元の生活に戻る。そういう話を雫にした。雫は非常に不満そうだったが俺は満足だった。
「白雪姫もね王子様とくっついちゃダメなんだよ」
佐藤が困惑顔で説明を求めてきた。だが、まさか白雪姫と7人の小人が継母のさし向けた暗殺者と戦い、最後に王子様をたぶらかして国を乗っ取る話をした、なんてことは、とてもいえなかった。
思い返してみると、よく雫が真っ直ぐに育ったものだと思う。感心するしかないな。
「とにかく、佐藤さんはお客さんだから」
「でも……」
雫が悲しそうに見つめてきた。正直負ける、と思った。本当にダメな兄ちゃんだと自分でも思う。どうやって説得しようかと考えていたら、「いいよ?」と佐藤が答えた。
「読んであげるから一緒に寝ようね」
「ほんと?」
「うん」
「お、おい……」
佐藤が立ち上がり、俺を見て頷いた。
ふ、狙い通りだ。佐藤ならそういってくれると思っていたよ、俺は。これで雫に悲しい思いをさせずに済む。つまり俺が傷つかずに済む。まるっと解決だ。
「そうとなったら、着替えろ。制服が皺になるからさ」
「……本当に親戚のおじさんだね、黒尾くんは。でもどちらかといえば親戚のおばさんかな?」
「おばさんは勘弁してくれ。これでも一応男の子をやってるんだから」
「そうだねえ。じゃあ雫ちゃん、歯を磨こうね」
「うん」
雫の手を引いて佐藤が出ていった。
付き合いがよすぎる。そして、出来る
佐藤と雫を先に行かせて、俺は寝室に向かった。ダブルベッドがひとつと、化粧台に
「
無人の部屋に声をかけて、タンスの引き出しを開けた。防虫剤の臭いが鼻を衝いた。
「これは洗わないとちょっと無理か」
タンスを閉めて、一度部屋を見回してから自室に向かった。
机は綺麗とはいいがたい。片付けしようと思いつつ後回しになっている場所だからしょうがない。そんな時間があるなら勉強があるし。
寝間着なら風呂場の前の廊下にあるのだが、今日のところは私服でいいだろう。タンスを開けて、部屋着を持って雫の部屋に行った。といっても、
部屋は余っているが、雫が小学3年生になったら一人部屋にするといってある。今しばらくは邦志と一緒に過ごして欲しいと、そう願ってのことだ。
同じ家にいるんだし、雫をひとり部屋にして俺が邦志と一緒に寝ればいいのだが、まあ俺の勝手な想いだ。
「佐藤さん、着替え……」
雫が横になったままどうしようという目で見つめてきた。まだそんなに時間は経っていないはずだが、雫が起きてて、佐藤が寝ていた。そういえば図書委員の仕事が大変だったといってたっけ。
しー、と口に指をあてて部屋に入り、佐藤の手から本を取って枕元に置いた。雫のかぶっているタオルケットを佐藤にもかけた。
「おやすみ」
雫の頭を撫でて、電気を消して、そっとドアを閉めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます