第126話 モツとクズ肉は早めに消費するのだ
「おぅっ、タケル、獲れたんだってなぁ」
「お奉行、今はお奉行ですぞ、口の聞き方にご注意召されぃっ」
「あっ、近さん、田野倉様も久しぶりねっ」
「これ、アン殿、今日はお奉行様であらせられあるぞ、近などと言う遊び人風情では無い、口をひかぇぃ」
「内輪しかいねぇんだし、いーじゃねぇか、全く田の字は融通がきかねぇなぁ、ほれ報奨金だ、有り難く受け取れ。おっしゃ完了、今からおいらは只の近さんな」
と報奨金を受け渡すと移動式囲炉裏と言う名のバーベキューコンロを取り囲んだ
「旨そうな事やってんなぁ、こいつはひとつ、ご相伴させて貰おうじゃねぇか」
と言って懐から箸を出した。
「なる程、報奨金出しちゃうとタダの近さんデスか」
「あぁっ確かに近さん懐が寒そうねっ」
「ってやんでぃ、シヤルスクっ子は宵越しの銭なんざ持たねぇのよ、どうでぃ参ったか」
田野倉は懐から竹筒を取り出して八尾に渡す
「ヤオ殿、こいつを土瓶に移して、、な」
皆まで言わんでも解る、これは酒、、、いや般若湯だ
「ちわーっ、おじゃまー、いよっ亀鶴おげんこ?」
「なんでぃ夜鳴きのおりょうじゃねぇか、どこから嗅ぎ付けやがった」
「へへーっ、そこは蛇の道はヘビってねー、あっヤオ君ごちねー」
「おぅおぅっ、ウワバミだけあって蛇の道かぁコイツは良いや」
「うっさいわね、あら近さん居たの?」
八尾と鶴はひたすら洗濯機ホース(気道)を輪切りにしていた。
ごま油、味塩胡椒をサラッと振って小型のフライパンで火を通す。
ナンコツ(気道)の周りがキツネ色に成ってきたところで
「ほい、ナンコツ一丁上がり」
「熊ゴロー、ちょいと待ちねぇ」
と、鶴は九条ねぎを刻んで上から振りかけた
脇に野芹を一本添える
これだけで見た目がおしゃれな一品に化けた
「鶴さん相変わらず洒落てるわねー」
「本当っ、凄い美味しそうだわっ、見た目全然違うっ」
「そんな事ねーよー、こんなんこうで良いんだよー」
と、余ってた芹とネギをドカッと載せた。
見た目台無しである
「おぅっ、このネギ馬鹿っ辛ぇなぁ、なんでこんなに盛りやがる、ナンコツまで箸が届かねぇじゃねぇか」
「生ネギだもん、って、あら近さんネギ食べられたのねー、どれどれアタシも一口、、、
うゎ辛ぁいー 飲み物飲み物ー」
と、おりょうは田野倉の湯呑みを奪ってゴブっと一のみした。
「あーっ、これこれ、この一杯に生きてるのよねーっ 田のさんおかわりー」
「これこれ、おりょう、煎じ薬を一気に飲み干す奴がおるか、もっと味わって呑め」
「田野倉さんよぉー、煎じ薬味わって呑んでどーすんだよー、こんなんはこーで良いんだー」
と、ガバッと湯呑みを煽る
豪快そうに飲み干すが、中身はさほど入ってはいない
八尾は松ぼっくりに成ってしまった肉とトリミングした切り落としを南牧場特製凸型鉄板に乗せていく。
「あーっ、そうだっ、思い出したっ
田野倉様、先日の立て替え精算してないわよっ」
「おぉ、そうだ拙者急用を思い出し、、」
「べるでっ、確保っ」
「田野倉サマ、お会計はこちらデス」
とソロバンを持ち出してパチパチと見せる
アンは田野倉が紙入れを出した所で奪い取りザラザラっと小銭まで出して数える。
「ちょっと足りないけどっ、まぁオマケしとくわねっ」
と、空に成った紙入れを返す
田野倉は紙入れを逆さにするが、埃しか落ちて来なかった
「お奉、、、、近さん、ちと融通し、、」
「おぅっ、おいらの懐当てにしても駄目だぜぃ
15文チョッキリしかねぇしな、後でおりょうの店でバソを手繰って帰ぇるんだ」
「ちょっとぉー、近さん、うちのソバは16文よ、変な数え方してももう騙されないんだからねー」
「ヤオ君このイノシシは旨いねぇ、うちの豚も旨いけど、風味が違うねぇ」
ジャンさんはイノシシの脂身を噛み締めながらしみじみと呟いた。
どうも最近、豚肉の売れ行きが良くないらしい
東牧場が新しく出来て豚メインで営業を始めたとかなんとか、、、
「イノ豚とかどうですかね?差別化出来そうですよね」
「ヤオ殿、なる程、豚は元々がイノシシと言われて居るからな、豚とイノシシを掛け合わせれば豚の繁殖力とイノシシの味わいがあるイノ豚が出来るって事じゃな、流石ヤオ殿じゃ、では早速、、、さっそ、、喰ろうてしまいましたなぁ、ハハハ」
「心当たりは無くも無いわよーっ」
「本当かい?アン嬢ちゃん、ねぇ、ねぇ」
アンはジャンさんに肩を掴まれ前後に揺さぶられた
「ちょちょっとやめっ、やめっ、うぷっ」
「あー、いつの間にどんだけ呑んでんの?
俺の煎じ薬は?俺のっ」
やおかはジャンさんとアンの間に割り入ってジャンを制止したが、アンの息が酒臭いのに気が付いてアンの肩を掴んで揺さぶった。
「ちょっとちょっ、やめ、やめっ てーぃっ」
アンは八尾を蹴り飛ばすと裏手に走って行くとタパタパと小さい音が聞こえてきた。
「あーっもーっ、酷い目にあったわっ」
と戻って来ると、べるでがジャンさんの前でソロバンを前に価格交渉をしていた。
「べる嬢ちゃん、ここはもう一声これ位に成らない?」
「いえ、この辺りが精いっぱいデスよ、中々性格が穏やかな種ジシは珍しいと思いマスよ?」
「そこを何とか、この位でどぉ」
「ではギリギリこんな所で如何デス?」
「よし決まりだ」
「おめでとうゴザイマス、これで種ジシはあなたの物デス」
その後ろでは何時もの乱痴気騒ぎが始まっている
ひっくり返され仰向けになった八尾に気付けと言いながら竹筒からダイレクトに酒を注ぐおりょうの姿があった。
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