第28話 質問は拷問で

「どーゆーことなのか、一から説明してもらおうか」


八尾の前で正座するアン。


「どーゆーこと・・・と申されましても・・・」

なによイキナリっ、質問が漠然として何を聞かれていることやら・・・

大体が小さくなったのだって今解析中なんだからっ、まだ私にわかる訳がないでしょっ


「お前は熊だろう? なんで今、アンになってるんだ?」


なによっ、人を熊扱いしてっ

まぁでも一から説明したほうが却って早いかしらねっ


「説明しよ・・・ガフッ・・ゲフンゲフン」

声裏返したらのどがっ・・・


「ん、うん、 一から説明するわねっ。

確か、会うのは二回目ねっ。私の名前は・・・ええと、私の名前は・・・」


考えてみたら名前無いじゃないっ。あれが私の正式名称なのかしら・・・


「私は第九方面管理官、この世界を管理するところの者である。

ええぃ、頭が高い、控えおろう」


パシッ


あいたっ、頭ハタく事無いじゃないっ。暴力は良くないわっ暴力は


怒ったアンは机を叩くようにこぶしを八尾の足の指に振り下ろす。


「い・き・な・り・、あにすんのよおっ」


ドンっ!


こぶしはちょっとズレて八尾の足の小指に当たる。 ・・・却って痛い。


「いてて、真面目に説明しろっ、この熊っ!」


「熊じゃないもんっ管理官だもんっ。あんたこそ、そのチート貰っているくせに、お礼ぐらい言いなさいよおっ」


八尾は口に指を突っ込んで左右に広げる・・・


「まずはその減らず口を直してやるから、なんでアンに乗り移ってるのか言ってみろ」


「いひゃい、いひゃい、あかあ、はんりはんらろひっれるれひょっ」


「真面目に説明するか?」


「らからっ・・・ひゃいっ」

「いったー、口が伸びちゃうじゃないっ。まったくもぉっ。」


ほっぺを手でぐりぐりする仕草は可愛い。

逃げるように囲炉裏の対面に座った。

それを見て八尾も囲炉裏端に座りなおした。


「まず、私はホントに第九方面管理官なのっ、元だけどっ。そして、熊を使った時とちがって、今はアンなのっ。

この子が死んだときに降臨しちゃったのよっ

そして・・・アンが抜けた体を私に合わせる為に、今若干補正が入っているみたいねっ。

管理官がわーるどに降りるということは通常ないのっ、こちらの時間だと数億年に一回ぐらいかしらっ?

わーるど間のデータ転移と言うのも普通は起きないのっ。

通常は発生してもパラメータがズレて時空自体に欠損がでちゃうから、消滅しちゃうのよっ

だからあなたは凄くラッキーだったって訳っ」


一気にまくし立てた。説明が今一アレなのは人間の脳の処理能力とのマッチングだろうか?


八尾の前で端末が点滅した。


「あ、データ抽出が終わったみたいねっ」


ひょいと立って八尾の前に座る。ちょうど胡坐を掻く八尾を座椅子にしているような・・・

そして端末を操作する。

八尾には分らない文字のような記号のような絵のような画面が流れる。速い。


「うん、大体わかったっ。」


「これだけ速いの全部読めるのか?目が追いつくのか?」  ・・・素直な疑問である。


「うん、斜め読みするから大体だけどっ」 ・・・斜め読みかいっ

「小さくなっているのはアンの食事事情が悪くて、再生時にスケールダウンしたみたいだわっ

ここでの10両は元の世界に換算すると100万ねっ、ただ、このわーるどのこのゾーンは世帯所得が低くて

平均で8両ね、ほとんど物々交換だからかしらっ。ここの村だと平均で1両半位らしいわっ

それと・・・端末からの情報によると、この子は両親と共に別わーるどに転生したみたいっ、一応幸せみたいよっ」


「転生したのか・・・まぁ幸せならそれで良い・・・のか?な?」


で一方、こちらの現世はダメである。お金がたまる頃にはミラの年期は明けている。


「100万かぁ・・・1両10万か」 ・・・今の八尾は一文無しである。

「ちなみに、貨幣の種類ってどうなってるんだ」


「ええと、種類だと金銀銅貨があってっ、それぞれ大中小があるわっ。

小10枚で大1枚、中4枚で大1枚ね。大10枚で上位種だわっ。」

「金が両、クオタ金、分金、そして銀が銀、クオタ、分、銅が銅、クオタ銅、文って言うみたいねっ。」


「つまり、1両が10万円とすると1分金が1万円、1銀が千円、1分が100円

1銅が10円、文が1円か・・・・

クオタはクオータ?で1/4?」


江戸時代とも単位がちょっと違うようだ。


「なんか稼げるチートは無いの?宝くじが当たるとか、明日の株式が判るとか、畑掘ったら漢委奴国王印が出てくるとか」


「あるわけ無いじゃないっ。 これから発生する未来なんかわかる訳ないでしょっ」


「じゃ魔法はどうだ?異世界なら魔法は無いのか?」


「そおねぇ・・・そういえばっ、確か指ケガしてたわね。ちょっと出してっ」

黙って指を出す八尾。回復魔法か!?


「じゃ行くわよ。痛いの痛いの飛んでけーっ  ・・・これで治るわよっ ・・・小傷なら3日位でっ」


「いひゃひゃひゃ・・いひゃい・・ほめんなさい・・・」


「もっとこう、空が飛べるとか 念じた所に行けるとか 派手なの無いのか?」


「ふぅ、だから魔法なんてある訳ないじゃないっ 何人も物理の法則には敵わないのよっ」


そりゃそうか、と八尾は思いつつ、自分の目の前にある端末はどうなんだと・・・


「じゃなんか金になるようなことは何かわからないか?」

 

「う~ん調べてみますかぁっ、 ええとゾーン:ここ、キーワード 金策 っと、えいっ」


「ええと幾つか出てきたわっ」


「急募、船上瓶詰工場 カニを瓶に詰めるだけの簡単なお仕事です。」

「国外旅行のついでに荷物運び、トランクの内張りに入る包装物を運ぶだけの簡単なお仕事です。」

「ええと他は・・・」


「全部却下」


「え~なんでよっ、時給良いわよっ?」


「もっと堅気な仕事は無いのか?どう聞いても全部怪しいじゃないか」


「う~ん・・・あ、来週行商人がここ通る予定って書いてあるわね。

この熊の毛皮とか売っちゃうっ?」


「おぉ!売れるんだ、他の鹿とか猪は?」


「熊に比べれば安いけど、売れないことは無いみたいねっ

あ、ちょっと待ってっ、毛皮はダメだわ」


「え?なんで?」


「あなたハンターの資格持ってないし、登録もしてないから密猟になるわねっ。」


「ハンターの資格なんてあんの?ちょっとそこ詳しく読み上げて」


「あ~面倒くさいわね、もうっ。 ちょっとココに手を置いてっ。 そうそう、そこ」


ピリッと来た。目の奥に光が走った。そこから脳の奥に痛みが走る。


「これで読めるでしょっ?」


「痛ってぇ・・・イキナリなにすんだよ」


「いひゃい・・あはまひひんほーとひは・・・ひょっといひゃいっけ」

「まったくもぉっ、口が伸びるでしょっ、いい加減にしてよ。」

「説明するのが面倒くさいから焼き込んだのっ!男でしょっ、ちょっと痛いのぐらい辛抱しなさいよ。

読・め・る・でしょっ、これでっ!」


「おぉ、すげぇ、このQRコードみたいなの文字なんだな。

ん?この右上の128、352Gってなんだ?

そういえば、物取り出すときにここ頻繁に絵柄が変わってたよな・・」


「あぁ、それねっ。あなたの銀行口座の残高、部屋から消耗品を取り出すときに現地価格で

引かれてたでしょっ。際限なく出せると面白くないからチョット機能つけてみたのよ。面白いでしょっ」


「お・お前は・・よ・余計なことを・・・」


「いひゃい・・いひゃい・・いひゃいってはー・・」

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