第3章 七転八盗のシークレットガーデン PART1
1.
九条と陸弥がチャペルの扉から出ると同時に閉まった。さきほどまで明るかったステージが暗くなり会場が静まっていく。
「ご協力ありがとうございました。では、再び休憩を取りたいと思います」
シロウの合図で皆、席を立ち上がっていく。今、まさに即席の結婚式が始まり終わったというのに、その余韻を味わっている余裕はない。
「30分後、またよろしくお願いします。それでは休憩に入ります」
零無から無言の合図を受け、彼女の後ろをついていく。すると彼女は後ろを向いたまま小声でいった。
「私は後でいくわ。さっきの場所で待ってて」
◆◆◆
零無のいう通り、専用の休憩所で待っていると彼女は遅れて到着した。
「とりあえずこれで1組のカップルが成立したわね……」
零無は休憩所につくと腕を組みながらいった。
「私と手を組めばこのまま逃げ切れると思うけど。どうするの? 四宮君」
「お前と手を組むのは正直乗る気がしないが……それもありだな」
現状、零無の力を認めるしかない。二人を結婚に導いたのはほぼ彼女の一人の力だ。彼女の手腕があったからこそ、最初の危機を脱することができたのは間違いない。
「そうでしょう、悪い風にはさせないわ」
そういって零無は静かに微笑みながら鋭く質問をする。
「ところで四宮君、手を組む前に質問があるのだけど、いいかしら?」
「ああ」
「どうして陸弥さんを選んだの?」
ちくりと胸が痛む。なんとなくいわれる予想はついていたが、こう直球で来るとは予想していなかった。
「何をいっている。俺は七草を選んだ。お前の指示通りにな」
「とぼけないでいいわ。どうして陸弥さんを選んだのか教えてちょうだい」
零無の刃物のような視線が突き刺さる。やはり彼女にはそれがわかってしまっているらしい。
「……なぜ俺が陸弥を選んだと思うんだ?」
探りを入れるようにいうと、彼女はため息をついた。
「そんなのは簡単よ、消去法で考えればすぐわかるわ。まず九条支配人の投票数を8票から1票に変えて…全員の投票を10票とすると陸弥さんを選んだのが6票。そのうち確定しているのは陸弥さんと九条支配人。そして二岡君」
九条と陸弥、二岡を外せば3票だ。だがそれでも自分が投票した結果にはならない。
「残りの3票は五十嵐さん、八橋さん、それと四宮君。あなたよ」
「どうしてだ。他の人物が入れたものまでわかるはずがない」
「……そうかもしれない。でもあなたは陸弥さんよりも七草さんの方が次に結婚できそうだと思って保留にした。そうでしょ?」
彼女の的確な言動に何も言い返すことができない。
「二岡君は七草さんに気があったから、陸弥さんを選んでいるのは話したわよね? 他の女性陣は陸弥さんの話に共感できたから彼女を選んだのよ。つまり、後の一票はあなたしかない」
「なぜ、壱ヶ谷と参浦が七草にいれたとわかる?」
「幼馴染だからよ」
彼女の吐息が胸の辺りに掛かる。
「あの二人は七草さんを早く結婚させたかった。彼女の両親とも繋がりがあるからよ」
「ということはお前が、七草を押したのもそういう理由か?」
零無は見つめると、彼女は視線をうるさそうにして首を縦に振った。
「まあ、それもあるわね。だけど、陸弥さんを別の人と結婚させたかったというのが一番の理由になるわ」
「それは……」
「まあ、陸弥さんに投票したあなたに教える権利はないわ」
そういって零無は近くにあったソファーに座り込み足を組んだ。
「ああ、お前のいう通りだ。俺は陸弥に投票した。しかし九条が票を入れたことで結果は変わらなかったぞ」
「……確かにその通りね」
彼女は重たそうに口を開く。
「ごめんなさい、このことはもう不問にするわ」
自分から訊いておいて話を止めにするとは彼女らしくない。もしかすると協定を結んだことによって友好関係にひびを入れたくないのかもしれない。
「じゃあ、俺からも一つ質問してもいいか? 俺とお前の協定を結ぶために」
「ええ」
「なぜ協力者に俺を選んだ? 壱ヶ谷と参浦はお前の幼馴染なんだろう、なぜあの二人と組まないんだ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます