エピローグ


         *

         *  

         *


「退屈だな……」


 木漏れ日すら届かぬ暗闇の部屋で、囚われの魔法使いは、つぶやく。


「やはり、ヘーゼン先生は素晴らしいな……まったく……忌々しい」


 戦天使リプラリュラン。聖剣オリディクスを携え、一瞬にして敵を数千回切り裂く。その体躯は炎氷雷土を微塵にも通さず、鋼鉄より遥かに硬い。なにより恐ろしいのは、凝縮された聖光位体が弾け飛び、数千の敵を葬る『這う者への断罪』。それを一度躱したのは、さすがにアシュだけだろうが、連発できたのは全くの予想外。二度目に捕まり、身体はバラバラに弾け飛んだ。


 そのまま、約8年間、幽閉状態。


「こちらも、今までにない高位の悪魔がいる」


 先の戦いで召喚した悪魔では為す術もなく、敗れた。より、強力な悪魔が必要不可欠だ。いや、それだけでなく、アシュとの相性がよく、戦術に応じて柔軟な対応ができるような悪魔が――


「やれやれ……自由になったら、今度は捕まらないようにしないとな」


 でも……それでも……


 君ほど強く愛することは……


「……もう、ないんだろうな」


 『そんなことない』なんて、


 君は言うかもしれないけれど。


 それは、酷く……


「退屈だよ」


 ーーそんなことない。


「クク……やっぱり。じゃあ、僕にまた大切な人が?」


          ・・・


「……誰か……いませんかぁ!? 誰か……」


 その時、少女の声が聞こえてきた。


「やれやれ……お迎えが来たようだ……君がそうやって、言うのならば……仕方ないな。まあ、僕はあり得ないと思うけどね」


 バタン。


 扉が、開き。













「やぁ……美しいお嬢さん」


 闇魔法使いは、低い声で、笑った。





               第4章 END


 

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