ちいさいころのおはなし。

humu

しあわせなまいにち

1995年11月19日。

東北の冷たい風が病室の窓をたたく。

この日、私は生まれた。

「この子の名前は”海(ウミ)”。

お兄ちゃんが選んでくれた名前よ。

きっと海のように心の広い優しい子になるわ。」

ママはそう言ったらしい。

この頃の記憶はもちろん覚えていないし。

あとでママから聞いた話だ。

この後ママは私と2つ上の兄”侑(ユウ)”を必死で育ててくれたそうだ。

私が10歳を超える頃から「あの頃は本当に大変だったのよ」と、毎日のように話していた。


3歳頃からだろうか、私の記憶は大体ここから始まるが、

覚えている限り私と兄は毎日喧嘩をしていた。

殴り蹴り泣き叫び、まさに死闘。

パパはいつも仕事で家にはいないし、

専業主婦のママは家に独りきり、

喧嘩ばかりの私と兄の面倒をみて

本当に大変だったと思う。


ママはイベントごとが大好きだった。

誕生日にクリスマス、お正月、ひな祭り、こどもの日、七夕…ー。

思いつく限りのイベントごとはすべてお祝いしていた。


パパは仕事が休みの日によく一緒に遊んでくれた。

春にはお花見、

夏には海でキャンプへ行き、

秋には紅葉狩り、

冬には雪が降ると、アパートの駐車場で大きなかまくらと滑り台を作ってくれた。


兄のことは大嫌いだったが、とても幸せな毎日だった。


いつまでも、こんな平凡で幸せな毎日が続くと思っていた。

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