為替と株の値動き

みぃの人

序章 為替と株の値動き ~I fell in love with manholes~

01:株の動き 1日目 


 ぬぬぬ、やあ。俺の名はかぶ。今回はこれといったこともないので1日目は終了だ。(大嘘

 ああああ、ちょっと待って、ブラウザバックしないで!

 せめて数話くらい読んでってくださいな(ニッコリ。



 俺はちょっとした探偵業を営む二流のサラリーマンだ。探偵といっても、人探しとかパシりとかが主な仕事内容だったのだが。

 この度、かなり値のはる仕事が舞い込んで来やがった。

 依頼は簡単。対象を24時間監視するだけだ。これだけで、報酬は7桁。うまい話じゃないか。フッヽ( ´ー)ノ

 さて、ようやく本編だ!!

 と見せかけて。詳しい状況を説明する前に、一言マンホールの蓋について語らせていただく。

 そもそもマンホールの蓋は何のために存在しているのか。それは、人々に必要とされたからだ。人が求めなければ、マンホールの蓋が生まれることはなかったのだから。

 ……どうでもいい、だと?本気でそんなことを思うのか!?いいか、考えてもみろ。もし、我々がマンホールに蓋が無い生活をする事になったら、と。

 地面には穴と言う穴が開き、なんとも言えぬ安心感や充実感が損なわれてしまうことであろう。そんなことになっては、まともな生命活動が不可能になるだろうよ。――したがって、マンホールの蓋はなくてはならない存在なのだ!!

 …………なぜ俺が、こんなにもマンホールの蓋などという下等で愚劣な金属の塊について長々と語ったか、そろそろ知りたいだろう。

 今回の依頼主の名は、為替かわせ。詳しい特徴はあえて記さない。が、俺は彼女を若干ではあるがとてつもなく愛しているのだ。(文章の矛盾を許して頂きたい。俺たちの間には、のっぴきならない事情があるのだ。)

 しかし。

 彼女は…………マンホールの蓋製造業などという、第2次産業に身を落としていたのだ。

 いや、別に決して第2次産業(主にマンホールの蓋製造業)に従事されている方々を非難する意志は毛頭ない。

 それに、彼女の父上は、業界ではかなり高名なマンホールの蓋の作り手らしい。全日本優勝(?)も経験している、すごいお方なのだ。

 とまあ、そんなことはどーでもよい。

 何はともあれ。

 By the way.

 斯々然々かくかくしかじかで、彼女の見張りをする事になったわけだ。

 

 

 彼女に彼女の監視を頼まれたのは、昨日のことだ。

 彼女は、多重人格者らしい。

 なんでも、自分がマンホールの蓋を製造しているときの記憶が全く無いというのだ。これは、なにか裏があるやもしれぬな。俺はそう思っていた。

 ――いよいよ、作戦開始だ。

 



 am8:00 町外れの小汚ない(笑)工場へと潜入。

  

 ついに始まった。失敗は許されない。工場の裏口へ回り込み、容易くへいを飛び越える。(へー)そして、慎重に歩を進める。そこら中に散乱している鉄屑が、何故なぜいとおしく見えてき頃、受付のような場所へと到着した。見たところ、人はいなそうだ。

「あ、あの……見学を希望していた者なのですが。」

けっこー大きな声で叫んでみた。すると、奥から30代くらいの女性がしゃしゃってきた。

「見学の方だべかあ?あんれまあ、こんなとこまでぇよくきたんなぁ」

その奥様に連れられ、俺は奥へと案内された。

「ほんじゃまあ、ごゆっくりなすってなあ」

さて……。仕事の時間だ。

 誰もいない通路を1人で歩く。為替のいる部屋へと着いたようだ。2回ノックし、戸を開ける。

「お邪魔しまぁす」

そうっと室内へ入る。

 なんとそこにいたのは。

 ただの為替だった。

「遅い」

安っぽそうなオーバーオール(つなぎのことだよ)に、無造作に束ねられた漆黒の髪。ふて腐れたような面で頬を軽く膨らませているのだが、整った顔立ちはどのような表情でも可愛く見えてしまう。腕と足を組み、こちらを凄まじく攻撃的な目で睨み付けてくる。ああ可愛い。だってちっこいし。

「……まあいいわ。」

そう溜め息をつき、話を一方的に始める為替。

「久しぶりね、株。えっと……詳しくはもう説明したと思うけど、念のためもう一度言っておくわね。私は――」

「あーストップ」

俺は、片手を上げて彼女の話をさえぎる。

「とりあえず、マンホールの蓋を作ってる様子、見せて頂きたいのですが」

「……」

無言で立ち上がる彼女。自分の話を途中で遮られ、非常に不快そうだ。笑える。

 作業場へ着いた。なんだか、暗い。電気ついてるよな、これ。

「それじゃあ作り始めるけど、ずっと見ててよね?本当に、なにが起きるかわからないから……」

言われなくとも、ずっと見てるよ。なんなら、依頼完了後も見続けてやろうか。嫌われたくないからしないけども。そんなことを影ながら思った。

 一応隠れといてほしいとのことなので、物陰に息を潜める俺。さて、どうなることやら。

 

 ******

 

 えーっと。なんだろう。

 まっっっったく変化が見られない。薄暗く、遠目であることに変わりはないし、対象の見た目が変化したわけでもない。

 近くに、行ってみよう。

 そーっと足音を立てないようにしてゆっくりと

『ガコン』

 あーっと。足元の鉄パイプにぶつかった模様。ゆーっくりとこちらを振り返る為替。その表情は、さっきとうって変わって、無表情だ。なんの感情も出ていない。改めて、彼女が多重人格者なのを理解する。

「……こっちへ、来て」

なにか禍々しい気を感じる。探偵の勘だ。だがしかし。見つかった時点でほぼほぼアウトな上、これ以上この件に関わっても、厄介なことになる気しかしない。ここは、応援を要請しよう。後ずさる俺。決して目を反らしてはならない。……あくまでも、撤退ではない。一時的避難だ。

「そっか……それが、あなたの答えなのね。……残念」

フッ……あと数メートルで出口だ。

「……ごめんね、株くん。…………私のために、消えて?」

え。

 

 足元に違和感。なんと。工場とはいえ、とんでもない数のマンホールが床にひしめいていた。俺としたことが、全く気がつかなかった。そして……違和感の正体。マンホールの蓋は、本来あるべき位置になかった。というか、

「マンホールの蓋が…………ない」

偶然開いているマンホールの上に立つ確率の低さと、この前考えていた、『マンホールの蓋がもしなくなったら』について思い出しつつ、ゆっくりと自由落下フリーフォールしていく。

 謎い、謎すぎる。謎過ぎるぞお!!いくら探偵でも、こんな展開は予想出来ない。

 (俺……死ぬのかな……。まだレンタルしたフロッピーディスク、返却してないのに。畜生、延滞料金払わなくちゃだな……。)

 それだけが、心残り、かな。

 てか、今時フロッピーディスクとか誰も知らんだろ。

 

 この俺、かぶ 咎仁とがにがこの世で最後に思ったのは、そんな下らないことだった。



to be continue.....

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