第210話 未来へ託す
大陽神シャマシュ、またの名をウトゥと言う、メソポタミアの神、ナンムの1柱だ。
エンメルカルであったかつての俺、前世の父だ。
現在俺はこの記憶の無い父と戦っている。
だが何故だか俺はこの記憶の無い父から父親の温かさの様なものを感じていた。
「ナーナ! 大丈夫か⁉」
『はい、実体が有るわけでも無いので大丈夫です、ですが痛みの様な物は感じてしまうんです』
『ですが…………解らないのはシャマシュ様が言われた一人で戦うなと言う意味です、術を発動させている私にも4が心を会わせて居るのは感じているんです、これ以上どうすれば?』
『ルチル…………待って下さい……先程シャマシュ様は一人で戦うなと言っていました、私にはそこに何か答えが有るような気がしてなりません』
『お姉様?』
「こういうのは本人に聞くのが1番てな…………おい親父! 俺はちゃんと4人で心を会わせているぞ! どういう意味だ⁉」
「何でも人を頼るな! お前はエンメルカルであった時からそうだった、本当に愛している女は自信が身の危険を感じた時には心無い事を言って遠ざけた、身勝手で浅はかな考えだ‼ 何でも一人でしょい混み何でも一人で出来ると自惚れている、だから未だに記憶を引き継いで転生出来ない、お前は愛される生来の性分だがそれを自ら遠ざけている、それで魂を育てられると思っているのか⁉」
誰一人反論出来なかった、確かに親父だった…………
俺が常に女から言われ続けていた俺の欠点だった、陛下もナーナも、ルチルでさへ認めざる負えなかった。
「お前のその短慮がどれだけアグディスティスを傷つけたと思っている! お前は母を愛していた、美しく気高いアグディスティスと言う母はお前の自慢だった。だがお前は肝心な時いつも母を遠ざける、そして愛した妻さえも、だがお前一人で生き抜ける程人としての試練は浅いものでは無いんだ! 愛する者と苦しみや悲しみを乗り越えてこそ真の人としての成長を遂げられる、そしてその成長はやがて神への頂きへと上り詰める事が出来るんだ‼ いい加減目を覚ませ‼ これが最後のチャンスだ! ここでお前が自らの過ちに気付けねばお前はもう一度生まれ変わる、そして更なる試練を乗り越えねばならん、その場合はそこにいる3人も巻き添えに成ると知れ! だがお前が過ちを正し、全てを受け入れられれば神への頂きに上る事が可能と成るだろう、では覚悟は良いか? 行くぞエンメルカル‼」
来る、俺の命を奪いに、其ほどの闘気が親父から出ている…………俺が死ぬのはまだいい……だが陛下達は巻き沿いには…………神衣を解けば皆は助かる…………
『健様! 心を乱さないで! 有意の奥山が解けてしまいます‼』
『ルチルの精神力が持たなく成るんですよ⁉ しっかりしてください‼』
「解け! ルチル! あれはヤバイ! お前達おも巻き沿いに成る! あれは其ほどの攻撃だ!」
『嫌です! 約束したじゃないですか⁉ 死ぬときは一緒だって‼ あれは嘘なんですか? 健様が居ないなんて、私は又健様を何れだけの時間待ち続けねばならないんですか⁉』
『まだ解らないんですか? 健様、又ジャーリアを健様は作るおつもりなのですか? バカ‼ 今お父様に叱られたばっかりじゃないですか‼』
「やはりお前には無理だったのか…………許せ、エンメルカル、この先お前が戦わねば成らないもの達に今のお前では太刀打ち出来ぬだろう、いずれお前は殺される…………なら、愛するお前を我が手で…………次ぎは必ず私の元まで上り詰め、私を越えて行け‼」
嫌だ! ここまで来たんだ、どうすりゃ良いんだよ!
その時、朔の…………いや、楓の声が聞こえた…………
『今はいいの…………でも、ここで貴方と離婚しても、必ず貴方は気付いてくれる、久美は貴方の大切な人なのよ? だから大事にしてあげてね? でも心の何処かで私の事も忘れないでね? 私は貴方の事を愛して…………だから…………今は…………』
なんて言ってたんだ? 楓、あのお前が出ていった日、、、久美の事怒ってたんじゃ無いんだよな? なら…………そうだ…………楓は久美の事を怒ってたんじゃ無い、あの時俺は…………狙われていたんだ! 解らない連中からマークされて、尾行されて、命を狙われた‼ あれが二回目の転移の後だったんだ‼ だから俺は楓と久美を遠ざけようとしたんだ‼
楓は俺に、、『私は貴方の事を愛している事を忘れないでね、だからあいつらは私が引き付ける、今はこれでいいの、貴方はここで起こった事を忘れてしまう、必ず生きていてね‼』
こう言ったんだ、楓は俺と離婚までして追っ手を一人で引き付けた、俺と久美を守る為に…………
楓だって力は相当制限されていた、恐らく命がけで俺達を守ったんだ、死ねるかよ、俺にかけてくれた奴等に申し訳立たねえじゃねえか‼
この一撃、何としても止める‼
「皆力貸せ‼」
『はい!』
『健様‼』
『今更言わないで下さい‼』
ガツーーーン‼
『弾く‼』
陛下が猛烈な魔力で盾で受け止めたシャマシュの攻撃を払い除けた
「まだ足掻くか? エンメルカル」
「いや、もう足掻かねー」
「どういう意味だ?」
「一人で足掻くのは止めた」
「ほう……」
「俺には妻が居る、信じて命をかけてくれた大切な人も居る、そしてかけがえの無い仲間も居る、足掻くなら一緒に足掻く事にした」
「その心の真実、私に見せる事が出来るか⁉」
「ああ、見せるさ、あんたが気付かせてくれた、だからそれを見せるさ、陛下!」
『はい!』
「ナーナ!」
『はい!』
「ルチル!」
『解っています‼』
「ああ、今から俺の体、お前達に預ける、だから死なねえ様に守ってくれや!」
『え? …………あ! はい‼』
こう言う事だったんだ、親父が一人で戦うなってのは、神衣は人々が神を信仰する明かし、だから神もその人々の思いを受け止めてこそ本来の神と人間の中での連帯感が生まれて来るんだ。人々が神を信仰しなくなれば神の力も弱まる、それはこう言う事だったんだ。
神衣がその姿を変えた、真っ黒な今までの神衣から黄金の光が放たれ始め、その色までもが黄金に輝き始めた。
「さあ行くぞ! これが本当の最後だエンメルカル‼」
恐らく俺はこの手で親父の命を絶つ事に成るだろう…………
だが…………其が道なのかも知れない、ここで俺が手を抜けば、それは命をかけて俺を導こうとした親父に対しての侮辱何だろうな…………
くそう…………何でこんなスポコンアニメみたいな事やってンだ俺は…………だけどよう…………
「ああ行くぜこのクソ親父‼」
「何! 何だこの強烈な…………爆発はーー!」
ドッガーーーーン‼
俺と親父のぶつかりあいは付近の物全てを盛大に巻き込んだ、月の内部にあった動力炉の一部は爆発で一部表面が露出している、中にいたものはその殆どが落盤の下敷になった、まあ皆神衣を着ている、死にはしないだろう…………
だが…………親父には俺の天の叢雲が刺さっていた…………
「見事だ、エンメルカル…………良くこの土壇場で理解したな…………」
「ああ、すまねー、親父…………俺、、出来が悪くってよ…………」
「馬鹿者が…………男がそう簡単に泣くな……良いか? エンメルカル、お前はまだ、、やっと神と言う存在の入り口に立ったに過ぎない…………神衣の使い方が少し理解出来ただけなんだ…………だが、、その神衣はそんなお前にもこれ程の力を与えてくれる…………傲るな、自惚れるな、それはお前の力ではなく、その神衣の力なのだ。其ほどの力が有るからこそ、、イナンナはその力を分散させた…………だがそんな力も、お前達4人が信じ会い、認め会い、そして互いを愛する心があって初めてその力を具現化させる事が出来るのだ。エアはお前を選んだ、それはお前が愛される宿命があったからこそ選んだんだ。だからお前はそれを受け入れろ、其が出来るように成れば…………ゴハッ!」
「親父‼」
「聞け! エンメルカル……其が出来るように成れば…………お前は争いの無い宇宙を造る事が…………出来る…………様に…………成るだろう………………………………………………………………」
「健ちゃん!」
「母ちゃん…………ワリイ、俺…………親父を…………」
「健ちゃん………………」
ガラン‼
「皆、大丈夫か⁉」
「我は何とかな……」
「私も平気です!」
「私とタナトスも問題ありません」
ガランガラン‼
「ちっ! 口ほどにもねえ、シャマシュのやろう死んだかよ!」
「ガキにほだされて負けたんだろう、情けない奴だ」
「ごたくはもう良いか? 20秒だけ時間をやる、言い残した事が有るなら早めに言え」
「小僧が図に乗るなよ? シャマシュを倒した位で吠えるな‼」
「時間だ、死ね‼」
簡単だった、こんなに呆気なく倒せるのか…………親父が言いたい事がよく解った。神衣のなんたるかを俺がしっかり理解していれば親父は死ぬことはなかったんだ。
何時までもうじうじしてる訳には行かない、それこそ顔向け出来なく成る!
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