第193話 テーセウスの覚悟

海王冥王の連合軍対エインヘリャルの戦いが対に始まりました。



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本文


ポセイドーンとエインヘリャルの戦場

テーセウス達は押されていた、エインヘリャル達の強さは並みではなかった。

アルベリヒ、シグムンド、ジークフリート、ミーメ、ハーゲン、ファーフナー、トール、フレイ、スルト、サーガと言った誰もが知る英雄達、皆があのヘラクレスやテーセウス級の強さを持っている。

このクラスの英雄は万夫不当、詰り万の兵が当たっても凡人では倒せないと言う事だ。

数では勝ってもテーセウス達の軍でエインヘリャルに対応出来る者はテーセウス、ネーレウス、メネラーオス、アガメムノーンの四人だけだ。これでは一方的に蹂躙されるだけであった。

そしてエインヘリャル達は全軍で当たってはいない…………後方で戦いを見守るだけの二人の姿が有った。


「我々が出るまでも無いようですね、父上」


「ああ、我等エインヘリャルも舐められた物だ、ポセイドーンもハデスも出てこないとはな」


北欧神話のトールと並ぶ最大の英雄、シグムンドとジークフリートの二人の親子だ。

シグムンドは王に、ジークフリートは不死の体になるので有名だ。

ジークフリートは後にブリュンヒルデを妻に迎える事になる。


「トールめ、この中で最強の相手を勝手に取りやがって…………」


「テーセウスか? まあそう言うなジークフリート、直ぐに我等が戦うべき相手も来よう」


「ハーゲンの相手をしているメネラーオスと申すやからは強いのですか? 父上」


「強いな、ハデスの元側近ミーノースの曾孫に当たる、ハデス軍ではアガメムノーンと並ぶ最強の部類に入るもの達だ」


「元? 今は違うのですか?」


「死んだよ、アグディスティスに殺られた」


「アグディスティスと直接敵対したのですか⁉」


「ああ、ハデスの命だったのだ、仕方無かろう…………息子にさへ危害を加えなければ大人しいあの女神を激怒させたのはミスだったろうがな」


「惑星をも一瞬で砕くあの女神は主神すら触れるなとおっしゃっていましたしね…………しかしミーノース程の男迄殺られるとは……」




現在テーセウスが雷神トールと、メネラーオスがハーゲンと、そしてネーレウスがファーフナーとアガメムノーンがスルトと戦いはじめた。


「流石だな~雷神トール、僕の攻撃をこうも弾くなんて…………」


「そう言う貴様も噂に違わぬ手練れよな、私のミョルニルをもう数初は食らっている筈がまだ立っていられるのは致命の攻撃を全て避けているからだ。致命の攻撃にのみ集中的に避け、その他の攻撃は敢えて食らう、見上げた戦士よ、貴様と戦えた事をこのトール誇りに思うぞ。だがその状態ではもう2~3発位が限界であろう、お前ほどの戦士殺すには忍びない、敗北を認めろ」


「残念だけどそうは行かないんだよね~、僕も海王軍の将軍だ、ここで敗北を認める訳には行かないんだよ~」


「そうだったな、愚問であった。では望み通り戦士に相応しい最後をくれてやろう…………な……何だ? 鞘に剣を納めるとは…………やはり敗北を受け入れるのか? いや、その構え……そうではないな」


『トールの言う通りだ、ぶっちゃけ後一発でもあのミョルニルを食らえばもう立つ事も出来ないだろう、だから一撃必殺、日本か…………一度行って見たかったな…………いや、こんな性根でこの技が通用する筈が無い‼ 行くんだ、このトールを倒して久美や大和君の祖国誕生の時には、僕が日本の将軍になろう。起死回生のこの技、抜刀術を生み出した侍になろう、その前に、このトールを必ず倒す‼』


テーセウスから闘気ではなく、恐ろしい程の剣気が立ち上った。

テーセウスがやろうとしているのは抜刀術、健にテーセウスは抜刀術で倒されたのだ。

そしてテーセウスは健からこの抜刀術を教えて貰った、抜刀術は同じ相手に何度も通用する性質の物では無い、故に一撃必殺、最高に迄高めた剣気でしっかりと大地を踏みしめ、最大の加速を持って抜刀し、相手を舜殺する。


「一撃必殺の技を放つと見た、それほどの気がお前から出ているのが解る…………初めてだぞ、このトールにここまで恐怖を植え付けたのは、だがその恐怖がまた心地よい。貴様が何をしようとしているのかは解らぬが、迂闊に踏み込めば俺は敗北する。そう俺の戦いの勘が告げているのだ」


「そうだね、一応この技の名前を教えておくよ、僕もこの技を大和君に食らって人性初めての敗北を経験したんだよ、まあ練習試合だったんだけどね…………この技は抜刀術、大和君の古郷日本と言う国で古くから受け継がれている、、、お察しの通り一撃必殺の剣術だよ、ただこの技も無敵ではない、初撃の剣線を見切れば防ぐ事は可能だ、だから僕が鞘から剣を抜いて何処に剣戟を放つか君が見切れれば君の勝ちだ! だが見切れなければ君は敗北する、其ほどの技だよ」


「そこまで詳しく話す所を見ると、余程その技に絶対的な信頼を置いていると言う事だな、抜刀術か、面白い‼ 見事見切って俺が勝利をつかんで見せよう‼」


トールがミョルニルを構えた、そしてテーセウスに向いミョルニルを放つ、だがその前にテーセウスの剣が鞘走りを起こす


「抜くかテーセウス‼」


剣筋を睨み付けるトール、そしてテーセウスの剣が鞘から放たれる瞬間…………


ザシュ‼


トールの腹が鎧を通り越し一文字に裂かれた


「初撃の剣線か…………馬鹿め…………そんな早い剣筋見切れる訳が無かろう! 一杯食わせやがって…………」


「だよね~君と同じことを僕も大和君に言ったんだよ~…………でも一応嘘じゃ無いんだよ~、この抜刀術実は二撃もあってさ~、一撃めを剣で受け止めても更にそこから加速させて二撃目が跳んでくるんだよ~だから剣で一撃めを防ぐのはご法度何だよね~、だから一撃めを見切って避けるしかないんだよ~」


「…………馬鹿目が、そう言う技を無敵と言うんだ」


ドサ‼


トールが倒れた、テーセウスが勝ったのだ


「ば!…………馬鹿な‼」


「父上!」


エインヘリャルに衝撃が走る、エインヘリャルでも最強クラスの雷神トールが倒されたのだ、そして英雄シグムンドが動いた。


「シグムンド!」


「アルベリヒ! トール程の男を倒す者だ、ここは私が行こう」


「解ったシグムンド、お前に任せよう、だが気お付けろよ? そいつはトールをたおした‼」


「ああ、油断はしない、だが…………満身創痍だな、トールとあれだけの時間戦っていたんだ、無傷ではすむまい」


テーセウスは焦っていた、もうテーセウスだって戦える状態では無いのだ。


「だが全力で行かせて貰うぞ‼ お前はトールを倒した男だ‼」


『全力で来なくて良いからーーーー! てかどうする⁉ ヤバイよ!』


シグムンドの剣グラムがテーセウスを襲うとしたその時、強烈な神気がシグムンドへ襲い掛かった


「な! 何だこの神気は! ハデスか⁉」


「ご苦労様テーセウス、雷神トールを倒したその功績、海王軍最強の名に違わぬ見事な戦いでした、後は私達に任せて少し休んでて下さい」


「ヒュプノス、伯父貴…………遅いよ! マジで死ぬ所だったよ~」


「悪かったなテーセウス、少し休んでいろ!」


「アイオロスはともかく、ヒュプノス、貴様迄来ているとはな……」


「あまり歓迎されていないようですね」


「オリュンポスの中でも貴様とタナトス程厄介な相手はいないからな、まあ貴様だけで良かったぞ。」


「誰が弟だけだと言った?」


「な! 貴様テーセウスとの戦いで死んだのでは無かったのか⁉」


「生きてたさ、ハデス様が何の神だか忘れたのか? それに俺自信も何の神だと思っている? 戦ったのは地上ではなく冥界だ、そこでおれ自身が死ぬなんて事が有るわけ無いだろ、テーセウスは俺が復活するだろうと見越して俺の体を焼かなかった。だから俺は再生出来たんだ‼」


「そもそも相手の命を奪う戦いでは無かったからね!」


「さて俺の相手はお前か? シグムンド、それともお前か? アルベリヒ‼」


「調子に乗るなよタナトス‼ いくら貴様ら兄弟が十二神並の力が有るとは言え我等も主神同様の力が有る事を忘れるな‼ それにこちらはトールを欠いたとは言え9人、貴様らは俺達の相手に成りそうな奴は貴様らを逢わせても7人しかいない! そこのテーセウスはもう戦えまい、なら6人だ‼」


「7人です!」


「朔耶‼ お前…………」


「心配は不要ですアイオロス、私も充分強く成りました、此の方達は相当強いようです、早めに倒さねばこちらが敗北してしまいます」


「ならばここは女神通しで戦いましょう、私はサーガ、見たところ貴女女神になりたてみたいだけど、、大丈夫? 私こう見えても結構強いわよ?」


「大丈夫です、私も強いので、それに私楓姉さんから様々な技を伝授されました。姉さんからお墨付きも頂いています、私…………当時の姉さんよりも強いそうですよ?」


「アハハハハハ、姉さんからお墨付きね…………どんな三流女神だか知らないけど…………まあ良いわ、じゃあ向こうに行きましょう、この面子で闘うと私達も被害受けるから少し放れましょう」


「解りました」



笑ってるのはサーガとエインヘリャル達だけだった…………

ヒュプノス達やアイオロス達は…………顔をひきつらせていた。

当然だ…………この面子は楓が誰だか知っているのだ、楓はアプスー、そのアプスーが自分より強いと言うのだ…………

何を持って自分より強いと言うのか…………

普通に考えて魔力等はアプスーより強いと言うのは有り得ない。だが戦闘力もアプスーを越える事も有り得ないだろう。年季が違い過ぎる…………

では何が楓よりも強いのか? これがヒュプノス達が顔をひきつらせる原因だった。


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