第169話 偉大なる母

俺は対にハデスの城へと着いた。


「母ちゃん、ここがハデスの城なのか?」


「そうよ、ここはよく言うエリュシオン、冥界の死後の楽園と言われる場所」


「しかし、冥界にこんなもん創ってたのかよ」


正にそこは楽園だった。白いポプラが生え、辺り一面花園、所々に煉瓦の家が立ち並ぶ、確か神に愛された者達が死後に暮らすと言ってたっけ? ならあの家はそいつらの暮らす家か…………


「こんなもんとは失敬だな?」


「お前たちは? 何者だ⁉」


「俺はこの冥界で審判官を務めるラダマンテュス、こっちはミーノース、そしてアイアコスだ。ここは俺がハデス様に統治権を与えられて居る、故にお前たちは早々に立ち去れ‼」


「良いぜ? 正しここに有るマナの壺を返してくれればな?」


「あれはハデス様への献上品、故にハデス様の物だ」


「盗品を献上されて占有権主張とは随分とご立派な神も居たもんだぜ‼」


「黙れ‼ 我らの前でハデス様を愚弄等貴様命が要らんと見える」


「黙るのは貴方の方よ? アイアコスとやら!」


母ちゃんがアイアコスの首に手刀を突きつけて居た、だが動作が一切見えなかった…………


「な! い、いつの間に…………貴様ー!」


「待てアイアコス! この女、アグディスティスだ!」


「ミーノース、本当か⁉」


「たかがゼウスごときの小童が意気がるんじゃないわよ! ハデスに伝えなさい! アグディスティスとその子大和健がマナの壺を返して貰いに来たと‼ 直ぐに返さなければこのエリュシオンをぶっ壊すわよ‼」


「解った、少し待ってくれ…………」


「おい! ラダマンテュス‼ 良いのか⁉」


「身のほどを弁えろアイアコス! 我らが束になっても勝てる相手では無い! このエリュシオンで派手な戦闘でもやってみろ! 勝てればまだ良いが、そうで無ければ処罰されるのは我らだぞ‼」


「さて陛下、ナーナ、ルチル、どうやらやはりここが本拠地だ」


「解っています、有意の奥山、紡ぎます」


「イシュタル、楓の事を守りながらだが大変だけど……」


「お父様? イシュタルの魔力は底なしですよ? いくらでも供給出来ます」


俺は念のため神器を纏った、いつ戦闘が始まっても良いようにだ


「待たせたな、神殿に案内しよう」


この三人、確かゼウスの子でエリュシオンを統治するラダマンテュス、ミーノース、アイアコスだ。特に有名なのはミーノースとラダマンテュスの兄弟、ミーノースはミノア文明の由来でも有る、確か后がゼウスに呪いをかけられ雄牛と交わりミノタウロスを産んだ、そのミノタウロスを退治したのがテーセウス…………


「ここがハデス様の館だ」


かなり大きな館だ、中庭が有りコの字型の館は三階建てだ、中央に一際大きいテラスが有る


「趣味が良いとは言えないわね? 随分と先客が居るらしいわ? 健ちゃん、ちょっと疲れるけど暴れないといけないみたいよ~?」


「え? そんなに?」


「隠れていないで出てきなさい? この館ごと吹っ飛ばすわよ?」


ハデスは3階のテラスから出てきた


「お前! ハデス‼」


「まさか本当にここまで辿り着くとはな…………我が配下もまだまだと言う事か…………さて、これが最後だ、これが欲しければ奪ってみよ、ここまで辿り着く事が出来れば返してやろう」


ハデスは壺をかざしていた、あれがマナの壺か!

そして出てきた敵は10人近く居る、当然ラダマンテュス達も加わった


「良いか! アグディスティスに武器を使われる前にかたずけるのよ!」


「解った! エリス‼」


争いの神エリス、そのエリスが仕切っていた。


「お馬鹿さんね~、使う前になんてどうやってやるのかしら~? もう手にしてるのに?」


母ちゃんはいきなり武器をいつの間にかに手にしていた、そしてその武器は…………バジュラ‼

まさか…………俺や久美や朔耶が使ってたフォルムって⁉


「そうよ健ちゃん? ママが遠隔的に最初は力を流してたのよ~、だからね? バジュラ‼ ブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッド.ブラーフマナ‼」


「ヤベー! イシュタル! 楓とこっちに来い!」


「は! はい!」


俺には解る、これはマジでヤベー、このフォルムを使っていたからこそ俺には解る、これは俺が使ったブラフマーの数十倍ヤベー、なんてもん撃ちやがるんだ‼


光、強烈な太陽の数倍明るい巨大な光が弾ける、そして時にしてほんの数秒だが、とてつもなく長く感じた数秒、一瞬の静寂が辺りを支配した。

そしてその中心、そこには一瞬で神衣を纏った美しき女神が邪悪な笑みを浮かべて居る、辺りに居る神々は顔をひきつらせて居るのが見えた。

そして次の瞬間…………


ドッゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン!



ーーーーーーーーーーーーーーーー


レーテー


「この振動は‼」


「馬鹿な‼ アグディスティスを刺激し過ぎたんだ‼ 何故アグディスティスに武器を持たすような愚かな真似を」


「アグディスティスの武器とはそんなに恐ろしい物なのですか? アイオロス」


「ヒュプノス、話は後だ‼ このままアグディスティスを刺激し過ぎればこの冥界なんぞ跡形も無くなるぞ‼」


「な! そんなに…………」


「我らティアマト人が火星に居た事はお前も知っていよう!」


「はい、知っています、戦争で人の住めない死の星になったとか」


「あれはアグディスティスが破戒したんだ‼ その武器と自らのフォルムで!」


「何と‼」


「ハデスは知って居た筈だ‼ 彼奴は俺達と当事共に戦ったのだから、奴は何を考えて居る! アグディスティスを刺激し過ぎてはいけないんだ!」


「とにかく行きましょう‼」


ーーーーーーーー

久美達


「な! 何なのよ⁉ この振動、地震? 地下で?」


「アグディスティスです…………対に武器を持たせてしまったのです…………」


「ナンナ様? これアグディスティス様が?」


「シャチー、カーリー、ドゥンを私に貸して下さい、そしてあなたたちは引き返しなさい、神衣を纏っていないあなたたちではアグディスティスの攻撃の余波には耐えられません」


「そ…………そんなに強烈何ですか?」


「火星を人の住めない星に変えたのはアグディスティス何です」


「そ! そんな…………」


ーーーーーーーー


エリュシオン…………今は元そう呼ばれて居た場所…………と言った方が良い場所と成っていた……

有るものは影だけ残す、有るものは白く灰の様に成っている、辺りは一面高熱に焼けただれている。

建物は残骸だけ残し、跡形も無い。

核融合、巨大な水爆を母ちゃんは作り出した、俺のブラフマーの数十倍の威力で…………何故ここまで切れたのか? 多分俺だ…………神をこれだけ相手にするのは多分今の俺にはきついと思ったんだ、だから母ちゃんはここまでの事をしたんだ…………情けねー…………俺は親一人守る事が出来ねーのかよ……

そしてハデスは…………


「これで良い…………」


「何が良いのよ? 全員死んだわよ? 貴方の部下達…………」


「ああ……だがペルセポネーの暴走を止める為にはやむを得ない犠牲だった…………」


「今暫く生かしておいてあげる、話なさい」


「いや、いい母ちゃん、俺にはもう理解出来た…………」


「健ちゃん?」


「マナの壺をこの冥界に持ち込んだ張本人はペルセポネー…………そう言う事だろ? ハデス」


「お前は解っていたのか? 大和よ」


「ああ、あんたがこの戦いを望んでいなかったこともな」


「う~ん、ママ解らないわ~…………」


「後で説明するよ、先ずはやることやっちまおう! イシュタル、マナの壺を取り返した事をイナンナにここから伝えられるか?」


「はい、大丈夫ですよ、今伝えますね」



暫くしてここにイナンナが現れた、イナンナはイシュタルの軌跡を追って転移してきたのだ。

ここエリュシオンにはハデスの結界が張られて居ないので転移も可能だったのだ。


「………………大分派手にやったね?」


「健ちゃんは絶対守るわよ、もう二度と失わないわ!」


「そうだね、君はそうだったね…………」


何を言って居るのか俺には解らなかったが、、、

そして岩と開きに向けて用意が開始された、ナンナの指導の元、楓がマナの壺を抱え自らを媒体にしてマナを集めて居る。

この為に楓が必要だったのか…………

失われた魂のマナ、今までのジャーリア達のばらばらになった魂のマナ、これで呪いが解かれるんだ。

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