第75話 対アトランティス

シオンへ到着してから俺に待っていたのは報告の嵐だった。

アトランティスに来た天空人が随分と精力的に動いていると言う。

レムリアの方はあまり目立った動きは見せていないと言う。

レムリアの方はそれよりも内戦の噂がちらほらと噂されている様だ、引き続き監視を強化するようにセルマさんには伝えておいた。

問題はアトランティスの方だ、どうも天空人は一人では無いらしい。

現在アトランティスで確認されている天空人は2人、金髪白人の男と黒人女性だと言う。だが恐らくもう一人居るのではないか?との報告だった。

その天空人は姿を見せない為に、性別も能力面も全く解らないらしい、只次々と新しい武器が量産されている事から、天空人が関わっているのでは?との事なのだ。

確認されただけでもどうやら飛道具まで有るようだ、話を聞くにこの世界には無い筈の銃だ……

俺はその話を聞いて即行動に移した、防弾チョッキの制作だ!

紫綬仙衣の量産である。

そしてもし向こうに銃が在るなら今の武器では戦争に成らない、こちらにも新しい武器が必要になる。



健二の部屋


この頃健二は一応喋る事が出来る様になっていた、勿論俺以外の前では片言だが……


「隊員達の防弾は紫綬仙衣で良いとして、問題は武器だよな……」



「向こうが飛道具を出して来るならこちらにも通常だと無ければお話しに成らないからね、たけちゃんは何か考えでも在るの?」



「わりい、俺は銃を持たせるしか思い浮かばねー」


「成る程……それならたけちゃん、一つセオリーを無視してみない?」



「どういう事だ?セオリーって」



「銃に対向するには当然銃がセオリーだよね?」



「当然だ、その銃を信長の時代に世界一の生産体制を誇った日本だからこそスペインは日本に対して植民地制作をしないで布教制作を取った。豊臣秀吉は明を攻める事でスペインのアジア侵出に待ったをかけたんだ、それが秀吉の朝鮮出兵の真実だ」


「そう言う事だね、本来アトランティスが銃を制作したならその歴史に乗っ取って銃を制作しなければムーは攻め落とされる。だけどたけちゃん、ここには魔法が在る、そして銃の最大の欠点は接近戦に弱い事だ!リボルバーでも在れば別だけどいくら優秀な天空人が来たってこの短期間であの複雑なリボルバー式の銃をこの世界で制作出来るとは思えない」



「そうだな、俺もそう思う」



「なら恐らくどんな協力な銃だってたけちゃんが創った核融合のフォルムを一回とは言え防いだ紫綬仙衣を簡単に貫く事は不可能だよ!そこでだ、数発凌げば敵に接近出来たと仮定したらどうなる?」



「銃の部隊は壊滅するな……風化輪か!」



「そう言う事!ホバー機能まで入れる必要は無いよ、簡易的な重力制御さへ出来ればいいんだ、それに恐らく高速で移動する風化輪持ちに狙いを定める事は不可能だよ」



「オーケイだ浩二、紫綬仙衣と風化輪の量産を急がせる」



「両方とも簡易的な物で充分だよ!あくまでも銃対策だから、ワルキューレ隊の戦闘力なら一発も食らわないと思うからね、一般隊員には紫綬仙衣を模した盾が在れば良いと思うね」



「解ったぜ!」



俺は魔道研に行き、早速開発を急がせた、そこで俺は妻達の分の紫綬仙衣と新たな武器を持たせる事を考えた。

久美は浩二の使っていた剣が在る、自動的に俺が王者の剣の所有者になったので俺も問題無い。

一番の問題はアンナ、リーアだ。

セレスティアやセフィリアも多少問題が有った。


マルティアやセーラは家に伝わる名剣を所持していたので問題は無い。


まずセレスティアとセフィリアは近衛の時に使っていた剣だ、アンナに至っては量産タイプの杖と何処にでもある短剣、リーアも量産タイプの弓と同じ短剣だ……


そこで俺は朔にこの事を相談してみた


「なるほどのう、確かにあれほどの弓の名手、そこいらの弓で遊ばせておくには惜しいのう、そうじゃ主人殿!我が家に伝わる梓弓をリーアに貸し与えてやろう」



「なんか良い魔道具なのか?」



「魔道具では無い!何でも魔道具の力に頼るのは如何なもんぞ?梓弓は神事に使う際用いる物じゃ、つまり神に奉納するが為に造る物じゃな!我が家に伝わる弓はその弓を造るさいに二本造り、一本を家宝と定めた物じゃ、当然材料も良き物を使う、神木じゃ!つまり霊厳あらたかな木で造られておる梓弓と言う事じゃ、その弓は必中の弓と言うての、持つものが名手であればどのような鏑矢であろうと鎧を突き破り急所へ刺さると言われておる。妾も一度つこうたがそれで放った矢は鎧を7枚は突き破ったぞ!」



「スゲー弓だな…………」


「それと杖は桜に相談するとよい、良いものを持っている筈じゃ、それとセレスティア達の剣はこれを渡すと良い、これは妾が昔造らせた物での、試作品じゃ!斬鉄も出来るぞ」



「朔…………これが在るなら量産しといてくれよ…………」


「おお!主人殿はやはりこれの良さが解るのか」


「いや朔……これは俺の時代のほんの数百年前まで使われてた世界最強の剣だよ、斬鉄処か落ちてきた木葉でさへ真っ二つになるだろ?」



「うむ。そうじゃ…………そんなに良いものであったか…………作り方が少々手間でのう、量産まで出来んかったのじゃ」


「わりいが朔、それはマジで欲しい、その剣は俺の時代でも最強の剣なんだ、俺が考えている対アトランティス戦術にそれが在れば鬼に金棒だ!早速量産の手配を頼む」



それは紛れもない日本刀だった、日本刀は世界で唯一斬鉄が本当に出来る剣だ。

太刀と日本刀は基本的に同じ部類にされやすいが別物だ。

太刀は合戦などで使用される長刀で反りの大きい物を言う、それに比べて刀は短く接近戦では無類の強さを誇る。

この時代では太刀の他に直刀が多く使われており、やはり出来が悪かった。日本刀が使えるのならこれに越した物はない。



俺は先ず梓弓を持って、リーアとラフィーネが勤務している詰所に向かった、と言っても俺の妻は全員天楼閣内に居るのだが……


「どうだ?リーア」


「どうもこうも…………これ程の弓は今まで見た事が有りません……」


「そうですね、ラフィーリアは王妃、勿論レムリアに神代より伝わりし魔道具等も幾つも所持しておりました、その中には勿論弓も有りましたが……」



「そうね母さん、ここまでの物は見た事が有りません……」



「だが朔は魔道具じゃ無い様な事を言ってたけどな?」



「魔道具だと言えば魔道具だし、上皇の仰有る通り、そうではないと言えばそうでは有りませんね」


「ああ?どういう事だ?」


「魔道具はこの化血神刀の様に本来その物とは別の力を持たせた物を言いますが、これはそう言った力は有りません、ただしこの弓にも勿論魔力があります。その魔力はとにかく弓本来の狙い、飛距離、威力という、とにかく弓本来の力にのみ特化した部分に降られているんです」


「母さんの言う通り、これは持ち主を選ぶ武器ですね!名手が使わねば唯の出来の良い弓で終わってしまいますが、持つ者により最強の弓にも変わる化け物です」


「使えるか?」



「健様が折角私の為にお借り頂いた物です、必ず使いこなして見せます!」


リーアは早速練習に入った様だ、次に俺はアンナの所に向い、桜の所に行った。


「アンナの武器のう」



「健様、私はこれで充分です、魔法に杖は威力を増程度の働きしか有りませんし」



「まあ、普通の杖ならばそうじゃな……じゃが普通でない杖ならばそうではないぞ?」



「普通じゃない杖が在るって事だな?」



「これはかつての帝がその昔バビロニアの王から送られた物でのう、先程朔がアンナにくれてやれと申しておった」



「そんな高価な物私ごときが頂いて宜しいのですか?」



「よいよい、そなたはもう家族ではないか、それにムーを統一しようと言う時じゃ、妾の元で遊ばせておくより余程いいじゃろうて、これは単に魔力を高めるだけじゃのうて、魔力を打撃力に変える力があるのじゃ、軽く叩いただけでも魔力を通せば大岩を砕いてしまう」



「アブネー杖だなおい!」



「そうじゃのう、主人殿がまた良からぬ事をしておったらそれで殴ると良い」



「しかと承りました!」


「死ぬわ‼」



何か墓穴を掘った気がするが…………

一先ず妻達の武器防具は良いだろう、そして俺は次のステップへと移行した。内政だ!


現在りくぎとつちだ不在による、ワルキューレ隊以外の軍の総指揮は朔が変わりに取り仕切っている、そして武器防具開発は俺、予算組や会計等はシエラが陣立や陣決め兵糧等はマルティアが代理でやっているが、正直いっぱいいっぱいだった。


そこで俺は増えた軍に対して今の体制では限界を感じていた。

りくぎとつちだを再度導入する事にした。

当然今までのような四大貴族にはしない。


先ずりくぎは後の征夷大将軍の地位にした。

武家の頭領の役職だが、今の処士族の頭領にはせず、単なる役職名にした。

次につちだは所謂人馬奉行の地位にした。


これでムー統一の用意は一先ず良いだろう

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