第49話 愛に生きた帝 後編

ルチルにより語られる真実に久美は呆然とするしか無かった。


「そうですね、先ずは創造主様から聞いたこの星の歴史からですね!先ずはこの星の先住民、それは魔物達です」


「今いる魔物達の事?」



「はい、でもそれは一部にしか過ぎません。

地底にいる魔物達は、未来から来た天空人様達が遺伝子改造を施した魔物達なんです。この行われた遺伝子操作が何時なのか?は創造主様でさえ解らない程遠い昔です。

魔物達へ遺伝子操作をした後、程なくして天空人様達は自らの世界へ戻ります」


「ちょっと待ってよ、その未来の天空人達は自由に時間を渡れるの?」


「いえ?一方通行らしいですよ?彼らは元の世界へは戻れません」



「ちょっとちょっと、でも健兄さんは戻って来たわよね?どういう事よ?」



「何故健様に出来た事が、彼等に出来ないかは私には解りませんが、少なくとも彼らは未来へと一瞬で進む事は出来ません」



「解らないわ、じゃあ彼等の元の世界ってどこよ?」


「あそこです」

と言って上を指差すルチル



「宇宙?」



「そうです、彼らは約3600年毎にこの星にやって来ては、この星に様々な干渉をして自らの世界へ戻ります」



「何故周期的に干渉を?」


「創造主様はニビル?そう言ってましたが詳しい事は……」



「ああそれで納得、彼らの住む星はその周期でこの星に再接近するのよ、でもそれ本当だったんだ……でも何の為に干渉していくの?」



「過ちをやり直す為にです。」



「やり直すって、時間軸が違うんだから、意味無いじゃん、自分達の世界が戻る訳でも無いのに」



「戻りますよ?」



「え?……ちょ、え~?」



「私は仕組みは知りませんから、聞かないで下さいね?でも創造主様はこう言っておられました。時間の概念など元から無かったんだ、そこが最大のトリックだったんだ!……と、詳しく知りたければ健様が記憶を取り戻したら聞いて下さい」



「じゃぁ、浩二兄さんは生き返ったり……」


「しません!」


「何故?矛盾してるわ!」


「私は先程も解らないと言いました、が……創造主様、いえ、もう健様でいいかもしれません、はこう言っておられました、。失った物は取り戻せる、だけど失った肉体は取り戻せない……」


「……まあ……解ったような解らないような……続けて!」


「はい、そして未来の天空人様は、何度目かの訪問の時、意図しない発達を遂げた魔物達をその目にします。

それは知識と化学力を備えた魔物、健様はその魔物をこうよんでいました、レプテリアン」



「ああ…………ヤッパリね……健兄さんがよく言ってたわ……レプテリアンは恐竜が進化したんじゃないか?って……マジだったんだ……」


「はい、そして未来の天空人様はそれらを排除にかかります、発達していない魔物達を狂暴に改造して共食いさせたんです」



「ねえ、そもそもなんでそいつらはレプテリアンを作ったの?」



「自分達人間をこの星に根付かせる為です。そもそもある程度は進化の課程を踏襲しなければ人間がこの世界に現れませんからね!」



「納得、それで?」



「はい、そしてレプテリアン達は避難をはじめました」



「宇宙に?」



「地下です、この星の」



「やっぱり有るんだ、アガルタ……まあUFOは宇宙からじゃなく海から現れるって言う専門化もいたしね、マジだとは流石に思わなかったけど……」


「その単語はよく健様も口にしていましたね?やはりレプテリアンは久美様達の時代にも残ってたんですね!」


「ええ、姿はあんまり見せないけど……それで?」



「そして地上には私達人間の先祖が訪れ住み着きます。」



「それは何処から来たの?」


「解りません、記憶を取り戻せば健様ならご存じでしょう」


「全部健兄さん便りか……」



「すみません……」



「良いわよ、それで?」



「レプテリアンと天空人様は戦争を始めます、ですがより化学力が発達した天空人様達に、レプテリアン達が勝てる筈が有りません。そしてレプテリアン達は地下への入口を閉じてしまいます。

レプテリアン達は地下世界で力と技術力を蓄えはじめました。そして天空人様達が居ない間に人間の支配と家畜化を始めます。」


「人間を食用にしたの⁉」



「不思議な事ではありませんよ?今の魔物達だって人を襲い食しているじゃないですか」



「まあ、、そうだけど……」



「当然人間達も只で殺られる訳では有りません、人間とレプテリアンの間で戦争が起きました。ですが人間達に勝ち目は有りませんでした、レプテリアン達は地下世界の技術力を使い気候の変動を起こし、地上世界に壊滅的な被害を及ぼしました。

そして天空人様達が戻って来たとき、地上の状態を目の当たりにし、レプテリアンもろとも地上全土を焼き付くしたんです。」


「何をすれば全土を焼き付くすなんて出来るのよ⁉」



「月を地上にぶつけたんです」



「あは……あははは……ジャイアントインパクトも本当だったんだ……」



「それにより地上が3大陸に別れたと伝承にはありますね!健様もその伝承は正しいと言っていました。」



「洒落にならないわね……」



「未来の天空人様達はそれを悔いていた様ですね!その後は地上世界に干渉する事はなくなりました、、、その後今現在迄未来の天空人様達は現れていません」



「え?じゃぁ健兄さんが戦おうとしているのは?」



「レプテリアンです、健様自体そこにまだ気がついていない様ですが……記憶を取り戻せばそこはわかるでしょう。

ここまでが私の知る限りのこの星の歴史です。」



「レプテリアンの事、健兄さんに話さなくていいの?他の事も……」



「恐らくは健様の意思で、自ら気付くまで、話すな!という事なのでしょうね……」



「どういう事?」


「私達ジャーリアは創造主様と供に知り得た一切の事を誰にも話しては行けないと厳命されているんです……例え創造主様の生まれ変りだと解っても…………」



「あっ!…………解っちゃった……浩二兄さんね?」


「はい、コンストラクション右大臣です」


「やっぱりルチーナも親交が合ったのね、いつか聞こうと思ってたんだけど……」



「当然です、コンストラクション様を右大臣にしたのは私ですから」



「何故浩二兄さんはレプテリアンの事を黙っていろと?」



「私達が記憶を完全に引き継げない事はご存知ですか?」


「健兄さんに聞いたわ!」



「人間の能には記憶出来る最大値が有るんです、その許容量を越えると自動的に過去の必要無い経験則から抹消されて行くらしいんですよ。多分ですが完全に覚醒していない状態の健様に、余計な情報を居れたくなかったんじゃないでしょうか?だからコンストラクション様は口止めを……と言うよりコンストラクション様を使って健様ご自身がそうしたと今なら思えますね」




「同感ね……健兄さんの覚醒って?」



「健様はまだ完全に力を取り戻してないんです。多分マイケル様だった時の半分も出ていないんじゃ?」


「あれで半分以下?どんな化け物よ⁉」


「モーオニャ隊の時によく一緒に戦闘してた時は、大岩を素手で砕いてましたよ?」


「ちょっ!……大岩の素手も突っこみたいけど、その前にそのモーオニャ隊って何よ⁉」


「モーニングおにゃん子娘隊の略ですよ?」


「そんな事言われなくてもわかるわよ!その名前がどっから付いて誰の事をさすのかを聞いてるのよ!」



「今はヴァルキュリアと呼ばれていますが、それはコンストラクション右大臣が後から着けた物です。元々はその名前ですよ?それに健様もコンストラクション右大臣もモーオニャ隊での呼名は、健様は総帥、コンストラクション右大臣はド○ル中将で、ド○ル中将は軍義の時、発言前には必ず、闘いは数だよ、兄貴!と言ってから発言が許可される程徹底してまし…………どうしました?久美様、お加減でも……?」


久美はへなへなと倒れこみ、よつん這いになり脱力していた……

そして思った『聞かなきゃ良かった……少しでもヴァルキュリアを格好いいと思った私が馬鹿だったわ……考えてみれば、ヴァルキュリアを創設したのはあの二人、そしてあの二人が、特に健兄さんがまともな事やるわけ無いじゃない……』

そして


「うん……具合い悪い……モーオニャの話し止めてくてたら治るから……貴女の話しに切り替えてくれる?」



「そうですか……残念です、、では久美様は代々の帝がその時の一族で、一番神力が強い者が帝になるのはご存じですか?」



「知ってるわ、ナーナから聞いた」



「私もそうでした、幼少の頃より帝としての英才教育を受けました。辛い修業の毎日、魔力を使い果たしては寝て、起きればまた修業、マイ○ルと言う人にお逢いしたのはそんな時でした」



「最初からマイ○ルを名のってたの?」



「違いますよ、お名前は消されて覚えていませんが、俺をマイケ○ルと呼べと」



「間違いなく当時の健兄さんね……」



「辛い修業の合間にいつも歌って踊って、私はどんどん引かれて行きました、でもそんな時、父であったキルエスの宮がルチーナをアトランティス王の15番目の妻にすると公言したんです」


「嘘?もうその時は敵国でしょ?」


「はい、勿論各宮家が公然と反対を表明しました、当時の帝も。そもそも帝になる事が決まっている者を嫁に出す事など有り得ませんから」


「だよねー?」


「所がキルエスは各貴族と内通、当時の帝に反乱を起こしたんです。アトランティスの後ろ楯を得ていたキルエスは破竹の勢いで、当時の帝を対に討ち取り、ラ.ムーは一時崩壊の危機に瀕します。そこで私はアトランティス王の妻となる事でラ.ムーを危機から救おうと決心したんです、ですが……」


「健兄さんね?」


「はい、マイ○ル様は一部の兵と出陣し、キルエス軍を次々と打ち破って行きました。私はそのまま即位し帝となり、危機は脱したかに見えました。

ですがそんな時、レプテリアンがマイ○ル様を暗殺しようと動きだしたんです、私はいてもたってもいられなくなり、当時の大臣の一人にそそのかされたんです」



「普通に聞いても罠よ?引っ掛かったの?」



「はい、マイ○ル様を愛するあまり、回りが見えなくなっていたんです。大臣は天空人様とレプテリアンが戦った時の神代武器がある、それをキルエス領に使えば戦争は終わる、マイ○ル様も助かると……

私は配下の者に密かに攘夷を出し、その武器を使用してしまいました。でもまさか、あれほどの物だなんて大臣は言っていなかったんです。

当時のキルエス邸でレプテリアンとキルエスが会合を開いていると言う情報の本、邸宅を破壊する程度だと……


そして私は……領民ごとその街を消してしまいました。当然帝と言えどその国に住む罪もない人々を大量虐殺するなど許される事では有りません、私は自らの死を持って償おうと、ですが」


「ああ…………その先は言わなくてもわかるわ」


「はい、マイ○ル様は自信がそれを行った事にして私を庇い、ラ.ムーから逃亡してしまわれたんです。」



「全く……何れだけバカなのよ!頭に来る位バカね……でも……健兄さんよね……本当バカ、やっぱりあたしの兄さんだ……」



「はい、でも私は、どうしてもマイ○ル様から離れたく無かった、そして私は……国を捨て、民を捨て、卑劣な裏切り者として、レムリアに身を寄せていたマイ○ル様の元へ向かったんです……」



「ふざけないでよルチル!あっ、ごめん……貴女じゃ無いのよね……ん?貴女よね?……ああ、もうどっちでもいいわ!とにかくルチーナよ!もし貴女が分身対じゃなく、ルチーナその人だったら殴っているわ‼」



「はい、殺されてもおかしくない行いをしてしまったんです、私は……」



「違うわよ、国を棄てた事も、民を棄てた事も、核兵器を使った事も!そんな事を私は怒ってるんじゃないわよ?」



「え⁉じゃあ何を?」



「何故健兄さんを最後まで信じられなかったの?悪いけど私なら健兄さんがいくら狙われていようと信じたわ!健兄さんと供に闘い、最悪運命を供にしてたかもしれない、でも後悔はしない、愛する人と最後まで一緒にいれるんだもん、それが女の役割りよ?何故最後まで愛する人を信じなかったの?何故黙って着いていかなかったのよ‼」


ルチルは茫然と立ち尽くしていた、そして……目から溢れでる涙を手で拭い、両手で顔を塞ぎ声を出して泣きはじめた


「そうですね、そうですよね……今なら久美様の言う事が解ります。何故私は健様の元に最後まで居なかったのでしょうか?全て私の過ちだったんです、私は取り返しの付かない事をしてしまった……」



久美はしゃがみこんでいたルチルをそっと起こし

「違うでしょ?ルチル、失った命は取り戻せない、でも失った物は取り戻せるんでしょ?健兄さんが言った言葉、信じようよ?」




「久美様…………そうですよね?覚悟が出来ました、私……健様ともう絶対放れません、最後まで健様のお側にいます、供に闘います!ありがとうございました、久美様、私はまた同じ過ちを犯すところでした」



吹っ切れたルチルから久美は感じていた、取り戻した帝としての威厳をそして神々しさを


「ねえルチル?一つお願いがあるんだけどさ、聞いてくれる?」



「なんでしょう?久美様のお陰で覚悟が出来たんです!私の出来る事ならどんな事でも」



「良かった、ならね、様を外してほしいの!だって同じ人を愛する私達同士でしょ?なら様とかつけられたら嫌なのよね」



「えと……それは……身分が……その」



「貴女元帝でしょ?何言ってるのよ」



「それはそうですが、今はジャーリアです、いくら何でもいきなり……」


「嫌よ!ねールチル?同じ過ち繰り返さないんでしょ?なら今の健兄さんが何の為に貴女達を自分の女として連れて回ってるのか、考えた事ある?そりゃ勿論あの変態が自分の下半身の事を考えて無いってのは嘘になるけど……でも一番は絶対違うわよ?」


ルチルは思い出す……

そうなのだ、健はジャーリアとなった自分を、ラフィーネ達を救いたい、そう名言していた


「そうですね、健様は……私達の宿命から……私達を……救いたいと」

溢れる涙を拭いもせず、ルチルはただただ健の事を愛しく思っていた


「でしょ?なら健兄さんの事を考えてあげて!健兄さんの事ならいざ知らず、せめてあたしの事位は同士として見てちょうだいね?それが少しでも健兄さんの思いに答えてあげる事になると思うのよ?」


「はい!なら久美さんと……」



「はー……まあいいか……なら戻ろう、みんな遅くて心配してるかも?」



「はい!」


ルチル達が戻って来た、そしてルチルが



「健様ーーー!」



「な!なんだ?どうした?」



いきなり飛び付いて来て俺に抱きつくなり



「愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています」



そう連呼しまくっていた



「なんだなんだ?久美一体どうしたってんだ?」


「バカ……」



「はあ?」


「本当にどうしようもないバカよね?どうしてこんなにバカなの?健兄さんて……本当バカ!」



「んなっ!意味わかんねーぞ!いきなりお前はバカの連呼かよって…………久美……」



「おい!久美……」



「五月蠅い、少しこのままでいさせなさい!」



何故か久美も俺に抱きついて泣いていた……



「そうだな……解った……俺はバカだ!」



まあいいか……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る