第50話 宮家

天楼閣 神言の間

ここは高司祭以上の者達が、今後の政事や神道を行う道を話し会う会議場と言った所だ。

かつての日本もそうだったが、政治は司祭が行い、役人がそれを実行する。

だがこのラ.ムーでは神道一辺当になるのを防ぐ為に、ワンクッション置いた貴族による政治も取り入れている。


「健様、こちらです」


「あれ?セリナは来ないのか?」


「私はこの中には入れませんよ!ここは高司祭以上、詰り皇族か高司祭以外は入れません」



「そっか色々悪いな、セリナ!戻って休んでてくれ、んじゃルチル、行くぞ」


「本当に私、良いのでしょうか?」


「今更何言ってんだ!陛下が来るように言ってんだ、ごちゃごちゃ言う奴は俺が殴る‼」


「健様‼それは絶対だめですよ!手だけは上げちゃ」



「解ったよセリナ、なるべく頑張る、行くぞ」


俺はノックもせずドカドカ入る、わざとじゃない、純粋に忘れたのだ


「あーもう、ノックも名乗りも上げずに、もう本当に知りませんよ!私のせいじゃ無いですからねー!」


逃げ出しモードに移行するセリナであった



そこには陛下とナーナが1段高いご座所に、真ん中に帝、左前にナーナが座り、皇族10名と高司祭約20名程が向かい合って座っていた、そして久美がご座所の下、ひな壇を降りた前に控える。


「いくら天空人殿とは言えど、多少の礼儀は弁えて貰いたい物だな?」



「言い様は最もです、鎚打つちだの宮公、ですが御身の物言いもどうかと存じ上げますが?」



「これは帝、失礼を」



「セルマ伯爵婦人が着いておられた筈、いかがしたのじゃ?」



「そう言えば朔姫さくひめの仰有る通りですね?健様、セリナ様は?」



「ああ、わりいナーナ、そう言えばノック忘れてた!セリナは先に戻したぞ?ここ入れねーっつうし」



「なんと言う不遜な物言い、帝!この者が本当に天空人殿なのか?それにいささか妙な物を連れてるようだが……」


力技りくぎの宮公、何度も申し上げましたよ?私達天空人は身分の無い世界から来ていると、天皇家に対してもそれは同じです‼天皇家に対しても国家の象徴として敬いはする物の、身分は一般人のそれとかわりません、あくまでも対等の立場です」


「りくぎよ、お控えください、久美の申す通りです、天空人様をお迎えするのに我等の道理を押し付けるはそれこそ不遜と言うもの」


「陛下、ちょっと待ってくれ。

いいか、そこの髭のおっさん、それとここにいる奴等全員に言っておくぞ!俺は陛下以外には誰にも従わねえし、誰にも縛られねー!

それと俺の大切な物に触れたら全力で叩き潰す、このルチルもそうだしそこの久美も俺の大切な女だ!

そして久美がさっき言った事は俺達の住む日本国の一般論だ、だが俺は違う!日本は思想の自由が法律上認められている、俺の思想は天皇陛下は絶対だ!詰り俺にとってこの陛下も大切な者だ!これは俺の思想に従っての行動だ!それを忘れるなよ!」



「なんと!いくら天空人とは言えそんな身勝手がまかり通ると思ってか!このラ.ムーにあってはラ.ムーの法に従うは物の道理と見るがいかが?」


「健様、申し訳ございませんが今の鎚打の宮公の仰せにお応え頂けますでしょうか?」



「ああ、いいぜナーナ、従えねーな!以上だ」


「なんと申される、物の道義を弁えぬ者をこのラ.ムーに置いておくなど、帝の御身を危うくすると言うもの、即刻追い出すべきですぞ!帝」


『健兄さん……事前に打ち合わせしたでしょ!ちゃんとやってよ!』


小声で俺に言ってくる久美、だが……


「俺は返事してねー!まあまて、久美……

おいおっさん、りくぎとか言ったな?それにつちだか、あんた達通称からすると戦闘職の頭と武器職人の頭ってとこか?てことはお前らがこの国の軍事を担ってる訳だ、それでいいな?」


「如何にも‼」



「なら一つ聞きてえんだけどよ?お前ら本当に内乱鎮める気あんのか?俺にはお前らが内乱をわざと長引かせてる様にしか見えねーんだけどよ?そこんとこどうよ?」



「なんと不遜な物言い、いくら天空人殿と言えど我等に対する侮辱、感化出来ぬぞ!」



「控えるがよい、りくぎ公、帝の御前じゃぞ?さて天空人殿、妾は桜と申す、以後お見知り置きを」



これまた凄まじい美人だ、歳は見たところ40手前だが美人だ、だが不思議な事が1つある、もう一人、確か朔姫だったか……桜姫と歳も変わらない感じがする。清楚で桜姫に負けない位美人なのだが……

桜姫には俺のキャノンがビンビンに反応するのにこの朔姫には無反応だ。いや、何かキャノンの意思が朔姫を敬遠しているような……

まあいい……気のせいだろう


「ああ解った桜さん」


「さて天空人殿、御名で御呼びしても宜しいか?」



「逆にそっちの方がありがてー」



「では健殿、先程申されたりくぎ公達が内乱を長引かせていると言う物言い、如何いかな理由を持ってその様に言われるかお聞かせ願いたい」


「成る程な、思っていたよりもこりゃ重症だぜ!陛下も大変だな?」


「あの、健様?私にも健様が仰っている事が解らないのですが……」



「陛下はそれでいいさ、んじゃちょっと、久美!これ飲んで良いの?」


「飲んで良いから早く話しなさいよ!」


「ああ解った、んじゃ聞くがよ、このムーの内乱がはじまって何年だよ?髭のおっさん」


「りくぎだ!もう5万年近くになる」


「ほうほう、何でそんなに静まらねーんだ?

理由が聞きてえな?」



「反乱軍にはレムリアやアトランティスに内通している者がおる!如何な我等でもその様な手合い手に余るは!」



「アトランティスやムーの大軍が攻めて来たのか!そりゃきついわなー?んーきついは……」


「いや……実質戦った訳ではないが……」


「そーだよな、俺はこの国に来て様々な文献を読んだ、この国が他国と戦った歴史は、3万年まえに起きたアトランティスの天空人率いる3万の大軍と戦ったナギールの戦い以後、1回もない!他国が攻めて来てる訳でもねーのに内乱を沈められないのは無能な頭がいるからだよ、お前だー‼」

俺は怒鳴りながらりくぎを指差した


「最早堪忍袋の尾も限界と言うもの、表にでろ!」



「控えよりくぎ!帝の御前であるぞ!……じゃが健殿、貴殿の申されよう甚だ最もなれど、何度部隊を派遣しても内乱は静まらなかったのもまた事実、如何なお考えかな?」


「桜さん、あんたは戦その物をその目で見たのか?」


「いや、妾は見ておらぬ」



「俺はこの国に転移して始めて見たものは戦だった!それで……」


「桜御前 このような物の言うこと……」



「控えるのじゃりくぎ!妾もこの者の話しに興味が湧いた、続けるがよい天空人殿」



「さ、朔姫……」



「あんたは?」


「妾は朔じゃ、上皇、詰り元帝じゃ」


「マ、マジカ!」



「今は隠居の身じゃ、気にするでない、話されよ」


「解った、その戦で見たものはな、兵士の死体なんか見てねーんだよ!全部ここにいるルチルのようなジャーリアの死体だけだよ……

相手の兵士を殺さないでジャーリアだけ殺してんだから、内乱なんて終わる訳ねーだろーが!

それにな、お前ら誰かナーナがさらわれた理由突き止めたのか?陛下とナーナが二人の秘密で入れ替わってたから、たまたま陛下が拐とらわれなかっただけで、本当は陛下が拐われてたんだぞ?どうなんだよ‼」


「りくぎ公、返答は如何に?」

桜姫が詰め寄る、そして


「妾も聞きたい物じゃな?敵兵を打ち取らぬ戦など聞いた事がない、つちだよ、そちはどうなのじゃ?」



二人は下を向いて黙っている

「簡単だよ朔さん、桜さん、ここにいるルチルはな、朔さん、あんたなら知ってるだろ?ヴァルキュリア伝承の分身体なんだからな、しかも5万年前の天皇、ルチーナリリアーヌのな‼

さっきお前このルチルが妙な者と言ったな?ここにルチルがいる事が妙なのか?かつての帝が居るのが妙なら、朔さんがいる事も妙な、、、になるとおもうんだがな?どうよ?」


「答えるがよろしい、りくぎ殿」

シビレを切らした陛下がついに口を開く



「そ、それは……」


「返答や如何に?」

桜姫がガンガン詰め寄る


「俺が変わりに答えてやるよ、こいつが自分で言った内通者だ。

ジャーリアは皆ヴァルキュリア伝承の分身、つまりアトランティスにとっては最大の敵、そしてレムリアにとっては驚異以外の何物でもない。

こいつらはそれを知ってたんだ、だから内乱を利用して片っ端からジャーリアを始末してたんだ。そしてナーナ誘拐もこいつらが裏で手引きしてたんだ、だって不通この天楼閣に入るんだって警備は並みじゃねーだろ!

何かにつけ俺に食ってかかって追い出そうと今もしてるしな?大方本当は俺がアスラ神軍を2人片付けて、ラフィーネとリーアだけでアスラ1人片付けたのだってもう知ってんだろ?」



「な!それは誠か?天空人殿、、御身が転移してから一月も立っておらん、久美でさえ内乱を鎮めるだけで精一杯だったと言うに、アスラを2人も……

それにジャーリア2人だけでアスラに勝ったと申すか……」


「朔上皇、誠でございます、健様はお姉さまが、夢見でずっと見てこられた最強の天空人様その人、私もこの目でヒュドラを舜殺するのを見ております」



「成る程、天空人殿の仰せ誠に理にかなっておられる、もし天空人が帝の見られていた最強の天空人ならば、レムリアもアトランティスも邪魔者以外の何物でもない」


「このジャーリアがルチーナ様の分け身であるならば尚更じゃの、それにラフィーネとリーア、天空人殿の連れてるジャーリアの名じゃ、2人でアスラをの?してそれは誠で有るのか?ルチル殿」



「それは私が保証致しましょう、私とナーナはヴェスティアの軍勢をルチルさんのヒフミの祝詞により退けたのですから‼またラフィーネさん達はかつてのレムリア王族、軍神と言われたその人」




「な!なんじゃと?神代の失われた祝詞を使ったと申されるか!そして王族⁉」



後ろの方で司祭達まで騒いでる、ルチルが歌った祝詞ってそんなヤバイもんだったのか……



「はい、壮大勝つ神秘的、ラ.ムーの全てを包み込むような暖かさがあり、さりとて勇気を奮い立たせ、体の奥から沸き上がる新たな力は力強く、ですが私もナーナも魔力の殆どを使い果たしてしまいました」


「帝とナーナの魔力を持ってしても枯渇する程とは、恐ろしき神代魔法よの……」


「あっ、あれは久しぶりだったので魔力の流れを上手く操れなかっただけなんです、今度はもっと上手くやります」


「今度、と言うたな?ルチル殿、それは妾達に手をかす、と言う意味にも取れるがいかに?」


「はい、分身体とは言え私もかつての帝、健様が帝の為に闘うんです、このラ.ムーに住む人達を助ける為なら私も共に戦います」



「それは僥倖、さて、そこな二人、何も答えぬは罪を認めたも同じ、帝の御前で申し開きをするがよい」

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