第43話 最強対最強

『間に合わない!健様、申し訳ありません』


「アンナーーーー!」


超速で駆け寄るリグ、その速度マッハ!と呼べる程の速度だった、手に持つは紅蓮の炎を纏う槍、アンナの胸に突き刺さった……かに見えたが


「えっ?何だよこれ?全然手応え無いじゃん……お前何したんだよ?」


アンナはその場には居なかった……


「どうやら間に合いましたね‼」


「世話になります、ラフィーネ、おかげで命拾いしました」


「ミスラは倒したの?」


「だからここに化血神刀が有るんですよ?久美様」


と言ってリグに向かって構えるラフィーネ


「リーアはどう致しました?ラフィーネ」


「さあ?どうでしょうか、今頃何処かでリグを狙っているかもしれませんね?アンナ様」


「そう言う事なんだ~、まさかミスラがジャーリアみたいな雑魚に殺られるなんて、口ほどにもないなー」



「ミスラは強かったわよ!」



「まあいいさ、数秒寿命が伸びただけだよ、死にな」



またも超速で槍を振るうリグ今度こそラフィーネを串刺しに……


「化血陣か…………厄介だね~」


ーーーーーーーー


戦闘前


「今度は久美とアンナだ、二人ともちょっとキツい役回りをやって貰うかもしれない」



「リグ、でございますか?」


「げ、マジで?」



「絶体じゃない、でももしリグとミスラ以外のアスラが出てきたら、俺がそいつを相手にする事になるからな、初物は他じゃ荷が勝ちすぎるだろ?」


「まあ、健兄さん程の神器の知識が私には無いからね……」



「そう言うことだ、んでな、一つだけ言っておく、リグを相手に闘うな!」



「はあ?意味わかんないんだけど?」


「先程はリグの相手をしろと聞こえましたが?」



「ああ、確かにお前達二人にリグの相手をしてもらいたい、だが闘いはするな!」



「つまり逃げ回れと言うことですね?」



「ピンポンピンポンピンポン」



「ちょっとねー……まぁいいか、それほどヤバイ相手って事何でしょ?」



「ああヤバイ、もし伝説が本当なら……てか大体今まで本当だったから、間違いなくあいつは俺でもちょっと、解らないな、」



「ちょっとー!ならどうするのよ……」


「全く手が無いわけじゃない、とにかくだ、まず久美とアンナは戦闘が始まったら乾坤圈だけ早めに潰す事だけ考えろ。あれさえ潰してしまえばとりあえず逃げるだけなら出来る、そしてラフィーネ達と必ず合流するんだ!乾坤圈は防げない、だが他のは化血陣で防げる」


「他の?リグは他にも神器を持ってるの?」



「おいおい、忘れたか?乾坤圈は誰が持ってた武器なんだ?」



「それは那托…………て、、嘘⁉、、あたし那托と闘うの……」



「那托とは?強いのですか?」



「ああ強い、恐らくはアスラの中でトップクラスなんじゃないか?奴は乾坤圈の他にも神器を三つ持っている筈、火詮槍、混天綾、風化二輪と言った物だ。だが乾坤圈がその中でも最悪だ、とにかくそれだけはできるだけ早く潰すんだ、後は化血陣が防いでくれる」



「何故化血陣が防いでくれるって解るの?」


「化血陣がどういう物か聞いたろ?」


「はい、相手との距離感を狂わせると」


「乾坤圈ならいざ知らず、火炎放射機と三半規管狂わせるだけの玩具に化血陣が敗れる物かよ」


「火炎放射機?そうなの?」


「ああ、あくまでも那托の伝説から考えての事だが、火詮槍は火炎放射機付の槍だ。混天綾は恐らく人間の三半規管を狂わせるだけの魔道具みたいなもんだな、風化二輪は自分の重力制御が出来る靴だ。

何れにしても化血陣を敗れる程の物じゃない、だからと言って手は出すな、必ず俺を待て、いいな?奴の本当の恐ろしさは神器じゃない、蓮の花の化身と言われるその体にある、その秘密を解かない限り勝ち目はない!」


「なんかヤバそうな相手よね……」


「ですが相性は久美様と私が確かに良さそうです」



「んでな?具体的な方法は、乾坤圏はトーラスとも言うんだけど、円環武器何だよ‼

車のタイヤ、そうだな、アンナは馬車の車輪を思い浮かべればいい。あれは地面との設置面積が少ないだろ?だからそこの設置部分には例えば、百キロの過重なら物理法則で行くと、地面と釣り合ってる場合は200キロ、倍の過重がかかってる事になる。

それに俺は実際に乾坤圏を持って解ったが、重さ約30キロは有り、重心が中心部よりずれていた。更に内部のスポーク、中心部から円に伸びる支柱の事だが、そこに移動式の重りが着いていて、真円ではない。

これらを総合して考えると乾坤圏には少なくとも速度、回転運動、上下動があり、係る力は、過重、遠心力、コリオリ力、がある。コリオリ力ってのはスケートの選手がスピン中、回転している時に腕を伸ばしたり、縮めたりして回転速度を変えてるだろ?あれの事だ‼」


「だから圏の回転速度を自由に変えられるのね?」


「そう言う事、奴は圏の到達速度、回転速度、を魔力で自由に変えているんだ。

そして最大級の秘密はその重量だ!あれはリグの細腕で扱える重さじゃない。だが奴はあれほどの速度で圏を飛ばしてくる、その秘密はやつが持っているもう一つの宝貝、風化輪だ!あの重力制御が有るからこそあれほどの速度で圏を飛ばしてくる。それだけの力、運動、速度の宝貝だ、まともに相手にしたって勝てないだろう。

そこで裏をかく、それだけの力なら追尾機能が合っても大きくかわさなきゃ避けられる。

圏は即座に小回りは効かない!それにな、弱点がない訳じゃないんだ。

あれはさっきも言った円環武器だ!

トーラス構造を持つものは全て立て回転運動をするものに使用されるんだ。

トーラス面、つまり面での力は弱い!

そして久美、お前のフォルムなら弾く事が出来る、これはミスラが教えてくれたんだが、宝貝どうしは弾く特性が有る、これは俺が実際試したから確実だ!」


「乾坤圏を壊した後は健様がお戻りになるまで逃げ回れば言い、ですね?」


「ああ、だが化血神刀の存在は絶対だ、だからラフィーネとリーア!久美とアンナの死体を見たくなかったら、確実に俺の作戦通りやってくれよ?」


「了解!」



ーーーーーーーー


「ここからは健様の仰る通り、時間稼ぎに撤します、それで良いですね?アンナ様、久美様」


「解っています、今はラフィーネの化血神刀が頼りです、お願いします」


「そうね、多分だけど健兄さんが言ってた那托の体の秘密って、不死身の体なんじゃないかって思うのよ」


「……⁉こちらの攻撃が効かない!と言うことですか?」



「ええ、アンナの言う通りよ!だから闘うなって健兄さんは言ったと思うの」



「それも久美様達の世界に伝承として?」



「ええ、そうよ、でもねアンナ、絶体の不死身なんてあり得ない、だから秘密を暴く為に兄さんは自分をまてと……」



その時ラフィーネが叫んだ


「火炎が来ます‼」



ーーーーーーーーーーーーーーーー

そろそろバカ2人を見てみよう




「バーカバーカ、お前のカーチャンデーベーソ!」



「うるっせー、お前のカーチャンなんてう○こ垂れじゃねーかデーブ!」


悪化していた……


だが健は気付いた‼



『ちょっと待て、こんな悩脂肪な奴の、低レベルな争いに何故俺が付きあわにゃならんのだ、殴っちまえばはえーじゃねえか!よしぶっとばそう』




同時にブローマも思った


『待てよ?なんで俺がこんなカスの低能な言い合いに付き合わねばならんのだ?構うことはない、殴る!』



同時に拳をくり出し、幻のクロスカウンターが炸裂する!

だがこの場合、双方狙った訳ではないので双方とも相応のダメージが入った、てか、本場も両方痛いんじゃね?めり込んでるし……

と言うのは置いといて


「野郎デブ、やりやがったな!もう手加減なんて

してやんねーぞ!」


「そりゃこっちの台詞だバーカ、こっちこそ三分の一の力も出してねーんだよクズ」


「なにー!こっちこそ四分の一だ!」


「うるせー、なら五分の一!」


「6分の一」


「十分の一」



そしてまた同時に拳を出し会う

「ウラー!」


しばらく殴り合い、ついにガキのケンカの代名詞、健による幻のヘッドロックがブローマに決まる‼


「オラッ‼どうだ‼デブいてーだろ!ギブか?」



「フゴー!痛くねー!」



「ほーうそうか……ならこれでどうだ、フンガー!」



「あぁぁぁぁ!イテーイテー‼」



健の右腕が更にブローマの頭を締めつけ、左拳がブローマの後頭部に何度も降り下ろされる


「オラッオラッ!いてーだろ!ギブしろギブ」



「解った解った、何だかわかんねーけどギブするよ!これあげるから許してくれ!」



そう言って宝貝を取り出すブローマ、余りの痛さにそれを使う事をすっかり忘れているようだ……


「俺の方が強くて頭が良いって認めるか?」



「解ったよ、イテテテテ、あんたの方が強くて頭も良いよ、認める!認めるから!放してくれ!」


「俺は天才、お前はバカ!そうだな?」


「それはずるいだろー!」


「ウオリャーーーーーー!」


更に激しく締め上げ、右のロックはついにチョークスリーパーに至る


「フゥオーーーーーーー!イテー!苦しい!」


「オラオラー!早く言えば楽になるんだぞ‼俺は天才、お前はバカ!」


「解ったよ、苦しい、イテー!俺はバカ、あんたは天才ダヨー‼」



「よーし!ならそれよこせ!後他にも持ってる物全部よこせ!例えば金とか、他にも金とか!金とか!」



調子に乗る外道健、確実に畳の上ではこいつは死ねないだろう



「解ったよ、これで全部だ……」



「本当かー?ちょっとそこで跳び跳ねてみろ!」


大人しく跳ぶブローマ、本当に持っていないようだ……


ブローマの持ち物をひとしきりカツアゲした健はその中にある宝貝を見てようやく我にかえる



『そう言えば……俺なんで殴り合ってたんだ?しかもこの宝貝結局どんな効果だったんだ?…………まあ、いいか……』


お互いにフォルムも宝貝も使わない低レベルな子供のケンカがここに終わりを告げた



「よし!お前は許してやろう、とりあえず帰れ!」



「うーん……このまま帰っても怒られるしなー……兄貴に付いていっちゃだめか?」



「はあ?何言ってんだお前」



「このまま帰ったら俺マヒシャ様やヴリトラに怒られちゃうんだよ」



「いや、まあそりゃ怒られるだろうな……てか俺にそれ関係ねーだろ!」



「なー兄貴!付いて行かせてくれよー、兄貴はこれからリグと闘うんだろ?俺あいつの体の事知ってるから話すよ‼それに兄貴になら娘のシャチーをあげてもいいからさ」



「ほうほう、なら話してみろ、特にそのシャチーの事を」



健はブローマからあくまでもついでにリグの秘密を聞きだす



「解った、ならブローマ 、お前ここで待ってろ、シャチーはレムリアにいるのか?」



「解ったよ兄貴、家族は全員こっちに来てるよ!」



「そうか、なら呼んどけ!ベスティアの所にいたらいろいろ危ないだろ?」



「ああ解った、兄貴もきぃつけてな!その宝貝があってもリグは強いぜ?」



「秘密さえわかっちまえばどうっつう事もねえ」



健は走り出す

『まさかなそんな秘密があったとは、でもこれでリグは恐くねー、ブローマとのアホな闘いもわりかし役に立ったじゃねーか。

でもシャチーって言えば帝釈天の妻だったはず、あいつはブローマンて事か……

帝釈天はシャチーにゾッコンだったはずだ、俺帝釈天とももしかして闘うはめになるの?…………』



「まあ後の事は今考える必要はない、今はとにかく間に合ってくれよ」



そして健が付いた時、もう4人はボロボロだった


「あっ!遅いよ健兄さん‼」



「ワリィ、でも何とか皆無事だな!」



足を血だらけにしながらラフィーネが

「とりあえず化血陣で被害を最小限度までにする事は出来ました、でももう限界ギリギリです」


アンナも腕から血をダラダラ流している

「健様のお言いつけどうり、戦闘は極力避けました、ですがやむなく何度か反撃したのですが、何故かこちらの攻撃が全てすり抜けてしまうのです」


「解ってるアンナ、よく耐えてくれた。それでだ、皆聞いてくれ、奴の相手はここから俺がする。

先ずは全員その間に回復してくれ!だが当然俺の攻撃も通らない、一応奴の攻撃を防御する策はあるが、何時までももたない。

そこで必要な物がある、それを出来るだけ早く、沢山集めてほしい」



「解ったわ!それで何を集めればいいの?」



「ああ、お前達のショ○ベンだ」



「な、、何お……まさか飲む気?そこまで変態になったの?」



「チゲー!バカ野郎‼そこに含まれる塩が必要何だよ!いきなり食塩水なんて今作り出せねーだろ!いいから早くしろ!ルチル達にも貰ってこいよ」


そう言ってリグと対峙する


「やー、タクシー君、本命は君と遊びたかったんだよねー、でもまさかブローマまで殺られるとは思わなかったよー!僕の知る限り、あいつに攻撃当てるのってかなり難しいはずなんだけどねー?どうやったの?」



「ああ、ちょっと頭閉めてやっただけさ。さて、お前とは第2ラウンドだな……ちょっと場所移そうか、お互い全力でやりあいたいだろ?お前と俺がやり合えば相当派手な事になるはずだ」


「いいねー、面白そうだよー‼それじゃ僕に捕まって!」




二人は久美達から数十キロも放れた広い高野に来た

「便利な物だなーその風化輪てやつは一瞬でこんな遠くかよ……」



「自然は大切にしないとね!タクシー君は破壊し過ぎだよ?」



「耳が痛いな……さて、始めるか!全力で行くぞ!」



「じゃぁ!遊ぼう~」



健はいきなりフォルムを放つ


メルト‼

猛烈な轟火がリグを襲う


ルドラ‼

完発入れてルドラを放つ


「まだまだー!インドラ!」


最早回りの地形は変りはて、辺り一面が黒焦げになっている、それでも健は止まらない


「俺の最強の技も食らいやがれ!」


サンヒター、ブラーフマナ、アーラニヤカ、ウパニシャッド!


「死ねや!ブラフマー!」



一瞬にして大気の全てが集束を始める、高熱の光が一点に集中して集まる、音もない光りも影も無い、その瞬間、弾け、大気が震える、周囲の全てが溶け出す、大地は震えて防風の風が吹き荒れた、さながら小規模な核爆弾だ、そう、これは健がフォルムで作り出した小規模な核融合だった。


遠く放れた場所で

「……⁉なんて物造り出すのよ……健兄さん……

皆伏せて!特大の暴風がくるわよ!」


数十キロも離れた地点にまで、激しい熱風が吹き荒れた


「これは!……くっ!あ、あれは……何ですか……恐ろしい……死を撒き散らす光の様にも見えます……」


「そうよ、あれは……あの光はやっちゃいけない物、絶体に、貴女の言う通りよ……リーア……」


「それほどの敵と言うことです……遺憾ながら、あれを健様に、もう打たせたくないのなら、言われた物を直ぐに集めましょう」




セレスティアが怯えながら呆然と黒煙を眺めている


「み、帝、あれは、……まるで地獄の轟火のようです……」


ナーナもそれを眺め

「天空人様とアスラ神軍、げに恐ろしき闘いをするものなのですね……太陽がもう一つ輝いたと思えばあの熱風……正に鬼神と修羅の戦い」



「あれは、あれは健様です、心の葛藤が伝わって来ます」



「解るのですか?帝」

セフィリアが青い顔をしながらも帝の前に立ち守りながらも問う



「解ります、健様、どの様な事になっても私は……あなたのお側に……その地獄の轟火の中にも、貴方のお側になら、この身を投じましょう」



ーーーーーーーーーー



「……マジか……これでも駄目かよ‼」


リグの体は半身が焼け爛れ、皮のような物が垂れ落ちていた


「…………ふざけるなよ何だよ今のはーーーーーー!死ぬかと思ったじゃないかーーーーーー!

この僕が死ぬかと思ったんだぞーーーー!」



狂った様に健に切りかかるリグ、火詮槍で火を放ちながら目茶苦茶に暴れまくる



「うぉわ!アブね、もうちょっとまともに闘いやがれ!」


「お前が言うなよお前がーーーーーー!あんな無茶苦茶な魔法撃ちやがってーーーーーー!、みろ!あの地面!砂が変な色して固まってるじゃないかーーーーーー!あんなの見たことないぞー!溶けたんだぞ、僕の一部がーーーーーー!」




テクタイト、隕石落下などで高温に晒された石や砂が舞い上がり 、数百万度にも熱せられ、その後急激に冷やされると硝子状になる。

これらは隕石落下等の条件がないと生成されないので、貴重なパワーストーンなどにもなっているが、もうひとつ生成可能な現象がある、核だ……











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