第34話 幕間 (回想)

「斉藤久美です、今日からこちらでお世話になる事になりました!よろしくお願いします‼」



○○○○東京株式会社○○店、ここは俺が勤める

自動車ディーラーの店舗だ、今日から新人の女性社員が配属される……と言っても俺にとっては妹みたいなもんなんだが……


「健兄さん、宜しくね♪」


「ここでは役職で呼べって言ったろ‼」


「だって今さら松田係長とかって気持ち悪いよ」


兄さんと言っても血は繋がってはいない、久美の兄がわりに俺がなったと言うだけだ。

久美には歳の離れた兄がいた、俺のやはり弟みたいなもんだった。


久美の兄とは小学校4年のころ、空手の道場で知り合った、ひ弱な奴でいつも学校で虐められていた。


「どうした浩二、また虐められたのか」


「……うん」


「何の為に空手はじめたんだ?やられたらやり返せば良いだろ!」



「でも、先生はケンカはしたらいけないって……けがさせたら破門なんでしょ?」



「んなもんあるわけないだろ?だいたいそんなのもっと上の人達だよ!俺達の歳でなる訳ないだろ、いいか?次やられたらやり返せ!どうしても怖いなら俺が一緒に行ってやる‼」



「うん、たけちゃんが一緒なら怖くないよ!」


そんなんで俺達は段々と仲良くなり、いつも一緒にいるようになった。

最も浩二はこの時1年生なので俺とは3つ年が違う。


そして4年後、浩二に妹が出来る

俺は中学1年生、浩二は小学校4年生だった。


浩二は俺の後ばかり追いかけてきた、俺がこの頃グレ始めたら同じ歳でグレる、俺が入った高校に入学する、そして俺が専門学校に言ってる頃、


「浩二の妹か?」


「うん久美って言うんだ、久美、挨拶は?」


「しゃいとうくみです」


「そうか、俺は松田健だ」


「たけるおにいちゃん?」


「おお、そうだ!浩二の妹なら俺の妹だ」


「こうじおにいちゃんとたけるおにいちゃん?」


「そうだよ、久美はお兄ちゃんが二人も出来ていいねー」


「うん!たけるおにいちゃんかたぐるまー」



「よし!こい、ほら!」


「あははは、はしる~!まわる~!」


「しょうがねーなー!ほらー!これでもか~!ん?なんだ?暖けー…………、何?……おい……浩二!」


「え?」


「なんだこれは……俺は別にご褒美はいらないぞ?」


「あははは、まわる~」


「濡れる~!うぉ……臭ー!」


「あははは、はしる~、ぬれるーあったけー、くせー、くせー、あははは」


「あははは……」

浩二は乾いた声で笑っていた……


そして久美は何かと俺と浩二の後をついてくるようになった、放任主義の親に言われ、浩二に久美の事を任せてたのも有るのだが、実は親が両親とも浮気していたのだ。

やがて浩二が18才の時親が離婚、久美は母親に引き取られ、浩二は俺がいた専門学校の寮生活、俺は専門学校から自動車ディーラーに就職、1人暮らしを初めていた。

この頃久美は俺の家に入り浸っていた。

まぁ俺としても久美は可愛い妹だ、だがこいつ友達居るのか?と時々不安に思う事がある。

やがて浩二が俺の居る会社に就職、俺はその他の後輩たちと走り屋のチームを作り、久美はアイドル的な存在となっていた。

正直小学生を夜中つれ回すのもどうかと思ったが、親公認の為、まあいいか……

浩二の母親は浩二の稼ぎもあるが、久美を育てる為に夜遅くまでアルバイトをしていた、俺もこの頃には家族ぐるみの付合いをしていたので浩二の母親は俺の事も何かと気にかけていてくれた。


やがて俺も28才で結婚、若干久美が不機嫌だが、入り浸る家が無くなったのが気に入らないんだろうとこの時は思っていた。


そして浩二にチームを譲り、俺も一時期引退をして、家庭に専念。

頭の毛も大分寂しくなった頃、浩二が他チームとの走り屋バトル中に事故って死んだ。

俺が30才、浩二27才、久美が17才の時だ。

俺は久美が心配になり、何かと家に居させた、嫁さんもそう悪い顔をしなかったから、問題無いと思ってたんだが、後から聞いたらそうとう気に食わなかった用だ。

やがて久美は医大に入学、この頃久美の母親が仕事が忙しく、殆ど俺が親がわりだった。

久美は浩二の事もあった為か、医学の道を目指しはじめた。

俺の仕事は順調で、様々な資格も取得、32才でマネージメントをする様になる。

ところが遂に我慢を重ねてきた嫁さんが爆発、俺は結婚5年目で離婚する羽目になった。


ここで久美が登場、俺の家に完全に住み着き、女房さながらに俺の世話役となった。

そして久美は医大卒業後、何故か職場も俺と同じ職場に就職、今日に至った訳だ……


「久美、お前おばさんにここで良いって言われたのか?お前なんの為に医大に言ったんだよ?」


「ママは関係ないでしょ!あたしの仕事なんだから」


「ハイハイそうですか」


入社してからの久美は、仕事は真面目、お客からの評判はよく、久美目当ての固定客まで付くようになった、そして俺への見方もハッキリと示す様になった。


「おっ木田ちゃん、悪い、そこの書類とってくれる?」


「これですか?、はいどうぞ」


「サンキュー」

と言ってお尻を触ろうとする俺へ

ザシュ!

「ぐはっ!」


シャーペンで俺の腕を突き刺す久美


「係長、セクハラはいけませんよー!」



「だからってシャーペン突き刺す事ねーだろ!根性試しか?俺は根性試しやってるのか?」


解説しよう


根性試しとは俺がグレはじめた時に流行ってたくだらない遊びである。

片手を広げて机の上におく、親指の外側を支点にして指の間に次々とシャーペンを親指と人差し指の間に刺す、また支点に戻す、次に人差し指と中指の間、また支点に戻すを行い全ての指の間を刺し通したらまた初めからのループを行う。

当然より高速にそれを行うと根性があると認められる訳だ。

当然その途中で指に何度か刺さるが、何事も無かったかの様に、スムーズに執行せねばならない。指に刺さる事はミスではなく、如何にそれを平然と行うことが出来るかが重要なのである。

万が一声を出そう物なら「シャバ‼」と見物人から声がかかる、この場合は根性が無いと烙印を押されてしまう。

より上級な馬鹿になるとナイフなどで行うが、俺は流石にしなかった。

良い子は真似しちゃいけないよ!

話しを戻そう




「訴えられるより良いと思いますよ~」

久美は何事も無かった様に仕事に戻る……


ところが俺が久美へ対するセクハラは笑ってすまされる……


流石にこうなれば解る、久美は俺をハッキリと異性として見ている、兄に対する見方とは違う。


だがこうなると回りが黙ってはいない、セクハラ魔神と社内で言われているこの俺が久美以外の女性社員にセクハラ出来ないんだ。

当然妙な噂が立ちはじめる。


久美は俺の愛人だ!とね……

逆に久美はこれを否定していない。


俺には判断できなかった、勿論久美に答えてやる事は出来た、久美は美人だしスタイルもいい、気心も知れている。

だが俺にはどうしても踏み込めない一線が有った。

浩二の存在だ、俺は墓前で浩二に約束した。

父親のいない久美を俺がお前に替わって嫁に出す……と


それに13も歳が離れている俺の処に嫁に来たって久美が幸せになれる筈が無い……


ここで俺の部下松本が俺に久美への気持ちを打ち明ける。

「係長、ちょっと良いですか?」


「なんだ?女を紹介してくれんなら何時でもいいぞ?」



「いや、ちょっと真面目な話なんすけど……」



「そうか、まあいいや、んで?」



「実は俺斉藤さんの事……気になってて……でもへんな噂聞いて、それで……」



「ほう、お前久美が好きなのか……」



「名前で呼び捨てとか……やっぱり本当に……」



「バーカ、久美と俺はそんなんじゃねーよ!死んだ幼なじみの妹でな、父親と兄がわりなんだよ!」



「そうなんですか……」



「ああ、それで?お前久美が好きなのか?」



「はい!でももしかして斉藤さん貰う時って、係長に下さいって言わなきゃいけないんですか?」



「気がはえーんだよ!久美に気持ち聞いてねーんだろ?こう言うのは当人同士の問題だ!お互いの気持ちが一つになったらもう一度こい!」


「わかりました!」


「いいか松本!久美は死んだ俺の親友の妹なんだ、もし久美がほしいなら死ぬ気で幸せにする覚悟しとけよ、んじゃなきゃぶっ飛ばす」


「解ってます!」


その後久美は松本と結婚、俺が大分勧めた為も有るみたいだが、敢えなく1年と立たずに離婚する。

そのまま実家に久美は戻り、今は母親と暮らしている。

後で聞いたんだが、久美は殆ど夜の相手をしてくれなかったそうで嘆いてた、


そして問題の日、

「松田係長、やっぱり斉藤さんはいつもどうり家を出たそうです」


「そうか、あいつが寝坊とかするはず無いしな……

今日家に行ってみるよ」


久美は連絡もなく2日も会社を欠勤した


「木田!斉藤が担当してたお客さんのリスト、帰り迄に用意しておいてくれ!万が一明日も休んだら少し考える」


「でも明日フォローしないと駄目なのも有りますよ?それに誰かに回すって言ってもみんな手いっぱいだし」


「俺がやるからいいよ」


「係長全然休んでないじゃないですかー、明日も出社したら20連勤ですよ?」


「木田ちゃんがパンツくれたら30連勤出来るぜ」


「じゃあ5万で譲りますよ」


「いくら何でもたけー」


「なら休みましょう」


ーーーーーー


久美の家に着いた


「おばさーん、健だよ!久美は戻った?」


「健?、まだなのよ、事件とかに巻き込まれたのかしら?」


「最近何か家でかわった様子はあった?」


「いつもと変わらないわ、会社ではどう?」


「無いなー」


「警察に捜索願い出した方がいいかしら?」


「取り合えず今日1日待ってみよう、大学の友達とかの家に居るかもしれない、リストある?」


「これが久美の友達リストアップした物よ、健から電話で言われてたやつ、スマホから抜き出しておいたの」


「スマホから?」


「ええそうよ?」



「じゃぁ、あいつスマホ持って出なかったって事だよね?」


「そう言われたら、置いてくなんていつもしないわ」


「スマホ見せて!」

怪しい電話してた形跡は無いな、パソコンのメールは、も無い……


「おばさん、久美は出る前家電誰かと話してた?」


「そう言えば……1時間位話してたわ」


「何時頃?」



「10時くらいかしら?」


「おばさん、ちょっと着歴と発信履歴見せて!」


「こっちよ」


「この番号は誰?」


「親戚よ、私が話してたの、久美はこのすぐ後に誰かと話してたのよ」



「非通知は、非通知で表示するな、じゃぁあいつ誰と話してたって言うんだよ、、、、、おばさん、、、、警察に行こう」


俺はこの後おばさんを連れて警察に行った、幽霊と電話してた久美の捜索願いを出しに


着歴も発信履歴も電話には記録されてなかった、て事は誰とも電話していない事になる……

だがおばさんは久美が誰かと話しをしていたと言っている、内容は子機で自分の部屋からしてたので聞いていないと。

久美は誰と話していたんだ?

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