第30話拠点確保完了 神様も楽じゃない

そんなこんなで人材確保と同時に信仰までGETしてしまった俺だった。

 オチとしては、人間を通して神が世界を覗いている。俺は数ある神の瞳の一つであり、その依り代になる才能を生まれながらに秘めていたという設定で、闘技場へ来ていた国民に暗示をかけておいた。

 

 目の前に神が降臨した、奇跡をその目で目撃したという証を全員に刻むという名目で、刻印を腕に刻んだ。

 この刻印は、ステータスに加護『至高神の刻印』として表示される。

 所持者の健康状態を維持する、死の危険を察知するというお得な機能を備えている。


 量産型なので加護としては弱い部類だが、持っているだけで健康なんて十分チートだよね?馬鹿なことをしなければ、寿命以外で死ぬ確率が大幅に下がるのだ。

 神は戦乙女と一緒に天へ帰り、俺が地上に残される演出を、幻術魔法で映し出した俺は、ひと仕事終えた気分だった。


 「神様も難儀ですね」

 「まぁ、この世界で人として生きるには、色々と面倒があるんですよ」


 このエルリックという王はとても賢いようで、俺がどういう存在か理解しているようである。

 青く光る目は、バルドと同じ看破の力を秘めているが、王家の血筋に受け継がれる高位の血筋の証明だ。

 

 「では、約束通り役目を引き受けて貰うぞ?フィオリナは自由の鎖所属の使徒となる事で、この国を導く使命を果たして貰う」

 「はい!喜んで仕えさせて頂きます。ケイ様には感謝しても仕切れない程の恩が出来ました。私に出来ることならどんな事でもやり遂げてみせます」


 やる気十分なようで何よりだ。

 これから忙しくなってくる時に、素晴らしい戦力をGETする事が出来たな。


 「あの、エルリック様......」

 「フィオリナ、レオルの代わりを演じていた事を咎める気はないよ?こうして彼がもう一度生を得る事が出来たのだし、使徒となった君を罰する事が出来る者など、この会場には居やしないさ」


 申し訳なさそうにするフィオリナだったが、エルリックは初見で見抜いてから、5年間騙されたフリをしていてくれた人格者だ。

 公の場でああなってしまえば庇う事は出来ないが、自由にさせてくれるつもりだったらしい。


 「神さんも......いや、ケイも大変だな。これからは俺も大変になりそうだけどな。とりあえず、傭兵団には抜けるように話を付けてくるぜ。どうせ王都にはしばらく滞在するんだろう?」

 「まぁな、父や母もこちらに来ているようだし、適当に観光する事になるんじゃないか?」


 ガイゼルはやたら乗り気で、尻尾がブンブンと忙しなく動いている。忠犬ガイゼルと名付けよう。


 「ケイ様、この度は一家全員が格別なる奇跡を受けさせて頂いた事に感謝致します」

 「我が妻達に新たな生を与えて下さった事......一生忘れません」

 「貴族として、一人の人間として、受けた恩には必ず報いねばなりません、アルベリオン侯爵家はケイ様の為ならば、全てを差し出してでも恩を返します」

 「若輩者ですが、僕の力で役に立つ事があれば、何でも申し付けてください」


 アルベリオン侯爵家という、大きなコネクションも形成する事が出来たし、俺の野望への道は更に加速していくことだろう。


 「これも誇りある生き方をした、貴方達だからこそ協力したっていうのもあります。奇跡だって安売りするつもりはありませんからね、俺は俺なりの価値観に基づいて動きます」


 身内に甘く、他人に厳しいのは仕方ない。俺だって元人間だから、神という存在へなってもそこらへんは変えるつもりは無いのだ。邪魔するならば国だって滅ぼす気でいる。


 

 こうして、どたばたした武術大会は幕を下ろした。

 レッドストーンのケイとして、神の使徒、神の瞳としての名はあっという間に広がり、大陸全土へ波及していくこととなる。

 神がこの国に降臨したという劇的なニュースは、信仰という物にも多大な影響を与える事となる。

 今まで四聖神が中心となり信仰されていた、四神教や、マイナーな神を信仰する教会では激震が走った。

 混乱を抑える為に難儀する事になる俺だったが、この件に関してはまた別の機会に語ろうと思う。


 貴族からも、俺に対してちょっかいをかけようとする者が出ないように、エルリックが働きかけてくれた為、よけいな厄介事に巻き込まれないで済んだ、

 あの聡明な優男は気に入ったので、王としての責務を負えた後は、ぜひ手元に置きたいものだ。

 世代交代の時期を狙って打診する事にしよう、アムブロシアーを与えるに相応しい相手を見つけた。


 今回の騒動でもっとも苦労したのは、嫁、姉、妹達がくっついて離れてくれなくなった事だろうか?


 「お姉ちゃんは説明を要求します!」 「ライムも!ライムも......ようきゅーします?」

 「ケイの女たらし!変態!スケベ!エッチ!どうして次から次へと......私にもかまってよ」

 「ケイ様、あのように愛人を気軽に量産されますと、ハーレムの建設が大変になりますので」


 これである。

 俺にどうしろというのだろうか?特別な何かをしてしまった訳では無く、俺が自分の生き方に素直に行動しただけなので、これは譲れないのだ。

 でも、これ以上周囲に女の子が増えると肩身が狭くなりそうである。ここは忠犬ガイゼルに期待しよう!


 「優勝おめでとう!ケイが立派に成長してくれた事を誇らしく思うぞ、だが親に隠し事をするのは駄目だぞ?」

 「そうね、私の子供が知らない間に立派になっていく......秘密を持っていたのは感付いていたけど、もう少し早く教えてくれて良かったんじゃないかしら?」 


 にこやかに話す両親だが、目が笑っていない。

 ここは素直に謝ろう。全てを語る事は出来ないが、これでも理解がある人達なのだ。

 数え切れない恩もあるし、俺自身が誰よりも尊敬している、第2の人生を一緒に過ごして来た大切な人だ。


 「ごめんなさい、いつかは話すつもりだったんだけど、秘密がバレる出来事が重なったせいで報告が遅れたのは事実だからね。だけど、僕にとって一番大切なのは、何があっても家族のみんなだよ」

 「意地悪な言い方をして悪かったな。父親として、ちょっと悔しかっただけなんだ」

 「私がお腹を痛めて生んだ子が離れていくようで寂しかったのよ。でも、貴方はもう立派に自分の意思を持って生きているのね」


 前世の記憶や、隠していた力、莫大な財については、ある程度ぼかして話しておいた。

 俺が王都で組織した自由の鎖については、その方針について賛同を得る事が出来たし、協力してくれる事になった。

 今回の武術大会の報酬として、貴族街にある王家管理の豪邸を1件と名誉子爵位を貰った。

 辺境と王都を移動する拠点として最適なので、俺は転移魔方陣を設置する事にした。

 王家管理の屋敷だけあって、中庭を含めて総面積が700坪という化け物屋敷である。


 これからこの屋敷を拠点として自由の鎖を運営していく事にしよう。

 フィオリナは王都に住んでいるので、基本は侯爵家で過ごしたら?と提案したが、ケイ様の傍に居なければ役目を果たせません!と聞き入れてくれなかったので、ここに住んで貰うことにした。

 ガイゼルは、傭兵らしく依頼に合わせて宿を転々としていたらしいので、拠点が出来てくれしそうだ。犬小屋ではないからね?


 バルドの奴隷商で過ごしていた使徒達もこちらに移って貰う予定だ。部屋は腐るほど余っているし、彼等の中には屋敷を維持していくのに最適な技能を持った人物が多く居るのだ。

 職務をこなしながら屋敷の維持も頼もうと思っている。自由に使える費用として、金庫に金貨を200枚ほど入れておいたので、きっと活用してくれるだろう。


 屋敷の防犯設備も完璧にした。

 過剰防衛もいい所だが、秘密組織の拠点である。いくら元は王家管理の物件とはいえ、油断する事は出来ないのだ。

 

 屋敷全体を覆う結界を展開した。この結界には、外部からの魔力遮断、内部の景色を偽装する効果を持たせた。

 俺が許可した魔力や、魔道具の通信以外は遮断するようになっている。

 結界強度は、MP10000000で想定してあるので、砕けるのは神クラスだけだろう。


 正門の左右には、守護者ガーディアン代わりに彫像を配置してある。

 ミスリルをアダマンタイトでコーティングしたゴーレムは、基本レベルが5000で設定してある。この金剛仁王像「阿行君と吽行君」は、両手に特殊な装備を持っている。

 俺が魔改造を施した【自動追尾型捕縛兵装一式 次元幽閉の独鈷杵】を武器としており、破壊困難な上、独鈷杵を投げるまでに破壊しなければ、アナザーディメンションなチートエネミーである。


 地面にに敷かれた石畳の一枚一枚にも刻印魔法が刻まれており、侵入者には捕縛、睡眠、麻痺、昏倒の魔法が降り注ぐのだ。

 壁や彫刻にも仕掛けが施してあり、非常事態にはヒルダ【ホーリードラゴン】LV 62750 カイム【ダークドラゴン】LV 63241 が召喚されるようになっている。

 そのまま召喚したらやばくね?と思った俺は、サイズの変更だけはセルフで頼むよ?屋敷破壊しないでね?と、念を押しておいた。


 色々と苦労したが、王都での時間は有意義に過ごす事が出来て満足した。

 しばらくは王都でゆっくり出来るだろうし、嫁や姉妹を連れて(連れられてという説もある)観光しようと思っていたのだが、事態は急展開を迎える事となる。

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