第22話嫁達の語らい、格付けが済んだようです
「なんじゃこりゃーー!!!!」
いつの間にか人間を辞めていた。
やっぱり、使徒を量産したのが不味かったのだろうか?神に命乞いさせたのが駄目だったのだろうか?
心当たりがありすぎて原因が思い浮かばない。
「ケイ様?どうかしたのですか?」
「ああ......どうやら人間を辞めていたらしいんだ」
「え?そもそもケイ様が、自分を人間だと思っていたというのが初耳なのですが?」
あれ?、大いなる誤解が発生している気がするんだが......もしや、この認識の齟齬が原因なのでは?
教えて#【百科事典】__ウィキペディア__#さん!
『解』ケイ様に対しての信仰が集まり始めています。神クラスのステータスを持っている段階で、神化する素養を持っていましたが、人が起こせるレベル以上の奇跡を、現世で何度も行使した事が引き金となったようです。
故郷に帰ったらどう説明したら良いのだろうか?
そもそも、神様はこんな気軽に地上を歩き回ったり、武闘会に参加しても良いのだろうか?
考えてもキリがないので、両親にも本当の事を話す事にしよう。
「あの......貴方様から神気が漏れ出ているのですが、もしかして神が降臨されたのですか?」
「え?......あ、その、ですね?」
言えない、神ですだなんて言えない。
信仰している神達を脅して来ました!なんて、口が裂けても言えない。
「ジョブが使徒に変化していまして」
「まぁ!なんという奇跡でしょう!?」
苦しい、実に苦しい言い訳だ。
彼女が素直過ぎて通用しているが、どう考えても怪し過ぎる。
とりあえず、至高神(笑)に成ってしまった俺だが、至高神の加護に縋る事にしよう。
ジョブの表示を弄って、バグったLVを書き換えて......ああ、なんでこんな事に。
「これは神官長に報告しなければなりません!」
「え”?ちょ、待っ」 「大丈夫ですケイ様、捕獲しました」
走り出そうとしたシスターを、イーリスが瞬時に拘束して意識を奪った。
ここで大事になるのは不味い、表に顔を出すにしても【レッドストーンのケイ】でなければ、計画に支障が出る恐れがある。
「闇魔法でここ数分の記憶を奪うよ」
「では、このまま支えていますね」
シスターの額に手を当てて、闇魔法を使用する。
【#精神支配__ブレインジャック__#】
他にも礼拝堂には人が大勢いたのだが、「なんじゃこりゃー!!!!」の時点で、認識阻害と即時昏倒のイメージを乗せた【#精神波__マインドウェーブ__#】を無詠唱で発動してある。
全員の記憶を弄って、教会に天使が降臨、全員が歓喜と興奮で昏倒した事にしておいた。
「よし、脱出するぞ」 「はい!」
イーリスを抱きかかえると、宿泊予定の宿屋へ転移した俺達は、スイートルーム内へ直行する。
ボスンとベットの上に落ちたら、安心感で気が抜けてきた。
「ああ、ここで私は初めてを奪われてしまうのですね?」
「展開早くない!?今は2人とも10歳だからね?君は10歳とは思えない発育してるけどね?」
頬に両手を当ててクネクネしているイーリスだったが、瞬時に雌豹の構えに入ったので、眠らせる事にした。
【#睡眠の雲__スリープクラウド__#】『確実化(状態異常無効禁止)』
「こ、これは!?ケイ様、寝ている所を襲う......プレイです......か」「しないよ!?」
寝息を立て始めたイーリスに安心した俺だったが、悪夢はここで終わらなかった。
コンコンと部屋がノックされる。
「ケイ!居るんでしょ?あんな事したのに、放置して帰るなんてどういうつもりなの!?」
廊下からエリスの声が聞こえる。
不味い、この状況を見たら更に誤解を生むのではないだろうか?
そもそも、彼女はどうやってこの場所を嗅ぎつけたのだろうか?
「もういいや、開けちゃえ」
もう良くないよ!? 開けちゃらめぇええ!
無情にも開けかれるドアに戦慄したが、ここで瞬時に奔った閃きに従う俺は、高速でドアの前に移動していた。
「ケイ!居るんで」
「エリスじゃないか、もう体は大丈夫なのか?」
「あ、あの......うん、ありがとう」
エリスの頬に手を当てた俺は、心配そうな素振りで平静を装った。
部屋に入る前はあれだけ強気だったのに、こうやって顔を合わせるとモジモジする辺り、この娘は純情である。
「じゃなくて、何なのよ!このステータスは!」
【ステータス】
エリス (26) LV362 種族 ハイエルフ ジョブ ■■■の花嫁
HP 5420■/5420■ MP 10340■/10340■
スキル『生産技能』採取 LV71 農業 LV69 狩猟 LV56 料理 LV52
『戦闘技能』兵器習熟 LV78 指揮 LV35 カリスマ LV64
『便利技能』ステータス LV71 鑑定 LV87
『特殊技能』【基礎LV300】【精霊支配】【緑の加護】
【■■■の加護】
あかん!これはあかんやつやで!
どこかで見た事がある光景が、また目の前に広がっている。
「何の騒ぎですか?ケイ様」
目を擦りながら、フラフラとこっちに歩いてくるイーリスが目に入る。
なんでだ!魔法で眠らせたはずなのにどうして。
【#復讐者の花嫁衣裳__アベンジャーマリッジクロス__#】「レアリティ SLG」
【斬撃無効】【刺突無効】【衝撃吸収】【状態異常無効】コイツが犯人だ!→【魔法激減】【形状変化】【破壊不可】【拷問スキル付与】【強制蘇生】【強制再生】【不老】
しまった!?俺とした事が、この事態は予測していない。
無効だけじゃなくて激減効果まで持ってるなんて!こんな厄介な装備渡した奴誰だよ!?......俺だった。
「この子は誰?まさか、私を毒牙に掛けただけじゃ飽き足らず、こんな可愛い子まで手篭めにしようとしてるんじゃないでしょうね!?」
「待て、彼女は」
「ケイ様の妻でございます」
「ちょ、おま」 「嘘?ケイ......あんた......」
しれっと爆弾発言をしたイーリスと、絶句して口をパクパクしているエリス。
責任は取るつもりだったが、物にはタイミングという物がだな。
いや、俺が往生際の悪い態度で接するのが問題なんだな。ありがとう、イーリス。
「いや、違いないさ。俺の魔法で同年齢まで若返っているが、彼女は立派に成人した女性だよ。」
「そうです。運命の出会いをした2人は、永遠の契りを交わしたのです。もはや死すら2人を分かつ事は出来ません!」
「だ、駄目!......その、ケイは駄目なの!」
「言っている意味が分かりません。言いたい事があるならば、分かりやすく簡潔に述べなさい」
一切の容赦が無いイーリスの態度だったが、それでもエリスは折れなかった。
むしろ、エリスの決心をイーリスが引き出した形なのだろう。よく出来た嫁である。
「せ、責任!あんな事したんだから、責任取りなさいよね!」
「あんな事とは?責任とは一体何を指すのですか?」
「そ、そそそ、それは......その、きっきき......キス!キスしししたんだから、わた、わわわ」
「成る程、ではキスをしたからどうして欲しいのですか?」
淡々と質問攻めにしてエリスを追い詰めていく、なんというやり手......イーリスってばしゅごい。
つかつかとエリスに詰め寄り、尚も問いただすイーリス。
「初めてだったのに!ああ、あんなにされたら駄目でしょ!ケイ!なななんとか言いなさいよ」
「待ちなさい、ケイ様との話は私との話が終わった後です。質問の答えがまだですよ?」
「ああ、あうあう......すすす好き!」
「隙あり?」
「ちが!ちち違うの!......好きになっちゃったんだもん!仕方無いでしょ!」
真っ赤になったエリスが開き直って話し始めると、「やっと素直になりましたか」とイーリスが洩らす。
「あああ、いい......言っちゃった、言っちゃったよぉ~......はうはう」
「それで、好きになったから?貴方はどうしたいのですか?」
「え”!?ささっきので.....その、こた、答えになるんじゃ」
「お黙りなさい!私という伴侶がいながら、小娘1人とキスしたくらいで、何だというのですか?」
10歳の小娘が、成人している大人を相手に小娘呼ばわりした挙句、圧倒している。
もう、嫁同士の格付けは済んでしまったのだろう。
「見れば、ステータスにはジョブまで【花嫁】とか、うらやま......んんっ!素晴らしい肩書きを頂いておきながら、その情けない態度はなんですか!」
「ひゃい、ごごごめんなさい」 「謝れば良いのではありません!」
余り苛めるのもどうかと思うし、男がこれでは格好が付かないしな。
2人に向かって歩み寄ると、両腕で2人を抱きしめる。
「俺は2人を助けた時に決めていたんだ。これからは悲しい思いをさせないってな。出会い方はあんな形だったけど、2人のこれからについては、一生を掛けて幸せにしていくつもりだよ」
ニコリと微笑んで2人に言うと、2人とも真っ赤になって黙ってしまった。
だが、ここで態度を明確にしておく必要があるので、言葉を続ける。
「イーリスとは既に誓いを交わしたね?俺はあの言葉を違える事は無い。もう一度ここに、永久の愛を誓う。赤い鎖の束縛に見合うだけの幸せを君に捧げ続ける。だから、一生傍に居てくれるね?」
「当然です!身も心も捧げると申しましたわ!この身が滅びようと、魂が砕かれようと、赤い鎖が繋がれている限り2人の絆は永遠なのですから!私の愛は何が起きても不変です」
目の前で深く長い口付けを交わす、俺とイーリスの姿は、エリスの目にどう映っているのだろうか。
啄ばむような浅い物から始まり、クチュクチュと舌を絡ませて、唾液を絡める2人の姿を目前で直視したエリスは、衝撃に身を固めて真っ赤になりながらも、目を逸らそうとはしなかった。
やがて、永遠の様に感じた口付けは終わり、俺はエリスの方に顔を向ける。
「エリス、俺はイーリスと誓いを交わした。だけど、エリスも幸せにしたいと思っている。先に断っておくが、エリス1人だけを大切にする事は出来ない」
真剣に見詰め合いながら言葉を告げる、俺の言葉を遮る事無くエリスはただこちらを見つめていた。
「それでも、2人を愛する事を誓うよ。君が望んでいた関係とは違うかもしれない。でも、俺はエリスにもこれからの人生を共に歩む関係になって欲しいんだ」
「でも、私は......支えられるような力なんて無いし、子供だし、イーリスにも怒られて」
フニャリと力無く垂れる耳が、自分への自信の無いエリスの心境を表す。
モジモジと身を捩りながら言い訳する姿に、イーリスがイライラし出すが、ちょっと待ってね。
「そんな事は関係無いよ?俺がエリスと一緒に居たいって言ってるんだから、何かと引き換えになんて事は思っていない。エリスは俺と一緒に来てくれないのか?」
「そ......それは、でも......だって私は」
もう一押しって所か、可愛げがあっていいんだが、ツンツンしてる時の勢いでいいのに。
「ああ、残念だな。エリスは俺と一緒に来てくれないのか......気持ちが通じてくれたと思っていたんだが」
「ああ......あう、駄目!いやあの、駄目じゃなくて......一緒、一緒が良い」
「だぁ!告白までされてるのに......この馬鹿!抱きついて愛しています!で良いのよ!!」
腕から離れたイーリスが、エリスの背中を押して、俺の方に向けると、俺はもう一度言葉を紡いだ。
「もう一度聞くよ?俺と一緒に......俺達と一緒に生きて行こう!エリスの答えを聞かせてくれないか?」
「......好き!好きなの!大好き!離れるなんて嫌!来るなって言われても、一生ついて行くんだから!!」
そう言って抱きついてくるエリスを抱き返し、俺達は長い長い口付けを交わした。
やれやれと溜め息を付きながら見守るイーリスも、とても満足げだった。
エリスと俺が離れたのを見計らって、イーリスがエリスに声を掛ける。
「これからは私達がケイ様を支えていくのですから、貴方はもう少ししっかりとなさい」
「うう......ごめんなさい」
「まぁ、第一婦人は私のようなしっかりした大人の女が勤めるから心配しなくてもよろしくてよ?」
ファサっと態とらしく髪を書き上げる仕草をしたイーリスが、エリスを元気付けようとするが、エリスが発した次の一言が、新たな騒動を巻き起こすのだった。
「はい!これからもご指導よろしくお願いします!#お姉さま__・__#!」
「「お......お姉さまぁ!!?」」
一体どうしてこうなった。
見た目10歳児の子共にお姉さまと言いながら、抱きついてスリスリと頬ずりするエリスの発言に、驚愕の言葉を隠せない俺とイーリスだった。
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