第1話 7月10日

ピピピッ、ピピピッ。

朝7時半。定刻通りのアラーム。目が覚めるとまず7時40分まで携帯をいじる。

今日みたいに朝早く起きると、7時50分になったら動き出す。

社会人3年目になると、朝7時半に起きることができるかどうかで1日の行動が無意識のうちに決まる。


(もう7時50分か。あーだるい。通勤するには天気よすぎだっての。)

奈々枝はベッドの上で、大きな欠伸をし、猫のようにうーんと背筋を丸めてヨガのポーズをしてみる。そしてまた、ベッドの上で大の字になる。腕の力、足の力を抜いて、ダランとさせると急に倦怠感が襲ってくる。

(ずっと今日はごろごろしていたい。今日1日の時間が止まればいいのに。)

毎朝同じ。毎日、朝になるとずっとそう思う。特に今日みたいな朝は強く思ってしまう。


ーピコン!

(あ、亮司か。)ベッドに転がりながら、奈々枝は携帯を見る。


亮司 <おはよう。昨日は飲みすぎてたけど、よく眠れた?俺はもう出勤だよ。>


「相変わらず早いな~。亮司は。」ため息が一つ出てしまう。

奈々枝<おはよ。眠れたよ。ありがとう。いってらっしゃい。私もそろそろ準備して出るよ。>


最近、亮司との関係はぼちぼちだ。これといって何か胸が高揚することがあるわけでもないし、かといって不満があるわけでもない。可もなく不可もなくの安定期なのか、倦怠期なのかはよくわからないけど、きっとどっちか。


「あーそろそろ、出なきゃ。準備しよう。」

独り言を言いながら、時計を見ると時間はもう、7時55分を指そうとしていた。


(やばい、また1本乗り過ごすな、電車。)

そんなことを思いながら、ベッドから勢いよく立ちあがる。

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