第四章 新たな世界の始まり『神様は容赦なく突っ込みます』
幻想ハジメは冒険者ギルドの酒場で一人酒を飲む。
この大陸では酒を飲めるのは、十四歳からである。
幻想ハジメの年齢は今日で十五歳。だから昔から興味のあったお酒を飲むことにした。
『おいメアリー何で俺の名前そのまま使用されているんだよ。もっとかっこいい名前あっただろうが』
『知りませんよ私は。シナリオやキャラメイクを作成したのは全てAIなんですから』
『まあいいか続きを見ていこう』
『はい楽しみです。ワクワクします』
幻想ハジメはお酒を飲み終えると静かに酒場から出て行き向かうは冒険者が集うギルドである。
何の能力もないハジメには難しいクエストは受注できない。しかし、ハジメの夢は勇者になり魔王を倒すことだった。
ハジメは魔王を倒すべく先ずは力を付けることを固く決心したのだ。
「はあ~僕にできるクエストが存在しない。今日も帰るとするか」
ハジメは今日も何もクエストを受注することなく、しょぼくれた顔で帰っていく。
『いやいや受注しろよ。何なのこの主人公、見ていてイライラするんだが』
『まあまあ落ち着きましょうハジメさん。まだ物語は序章ですよ。温かい目で見守っていきましょう』
『俺の名前だから余計苛つくんだよ。頼むぞ幻想ハジメ』
ハジメは帰路の途中で複数のゴロツキに遭遇する。
正確にはゴロツキではなく同じ学園のクラスメートであるがハジメにとってはゴロツキ同然である。
ハジメは今日こそは意気込むが、脅しをかけられるとすぐ萎縮してしまう。
「おい、有り金全部出せよ」
「ないよ。僕貧乏だから」
「銅貨ぐらい持ってないのかよ、あ、そうだったなお前は何を始めても駄目だもんな。名前もハジメだし」
「僕だって夢ぐらいある」
「夢!? お前が? どんな夢だよ」
「勇者になって魔王を倒すことだ」
ハジメは真剣な表情でクラスメートのいじめっ子に夢を語る。
しかし、呆気なく否定される。
「ふははははは、お前が勇者。どんな冗談だよお前ごときは村人にもなれねえよ」
ハジメは残りの有り金を全部を盗られいじめっ子達は帰っていく。
ハジメは涙を流しながら悔しそうにしている。自分に腹が立っているのだ。
『凄い弱いなこの主人公。俺なら魔王を妄想一つで倒せるけどな』
『そりゃ~物語を盛り上げるためですよ。ハジメさんの妄想は強すぎて退屈でしたでしょう?』
『まあそうだが、でもこれストーリー長いのか?』
『さあRPG一本分ぐらいのボリュームじゃないですか』
『マジか、俺のメンタルが耐えられないかもしれない』
『数年かけて作った物語なんですからしっかり頑張ってくださいよ。ここから面白くなりますよ絶対』
ハジメは家に帰り一人ボロいベッドで眠る。
今日も散々な目に合ったと脳内で文句を神様に言い、眠りにつく。
「え!? ここはどこだ」
「ここは貴方の内面世界です」
「内面世界?」
「はい、貴方は不幸なお人ですから、せめて神からのプレゼントです」
ハジメは目覚まし時計で朝を迎える。
「夢だったのかな? プレゼントって何だろう」
ハジメはこの日神からのプレゼントを授かった。
この日を境に大きくハジメの運命が変わっていく。
『何かありきたりなストーリーだな。もっと斬新なストーリーを考えられなかったのかよこのAI』
『そうですか。とても面白いストーリーだと思いますよ。神様からのプレゼントって何でしょうね』
『それは物語が進めば分かることだろう。今日は疲れたし、また明日見ようぜ』
『そうですね。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか結末がとても楽しみです』
神様からの突っ込みは容赦ないが物語の中の人には届くわけもなかった。
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