最終章 桜散る雨の日
____ガタンッ...ゴトン...ガタンッ
俺たちは、土で汚れた缶の箱を抱えて家に向かっていた。
沙織のさっきの言葉...。なんだったのかな...。桜散る雨の日...か。
「先輩。私、言わないといけないことがありますっ!」
「言わなきゃいけないこと...?」
もしかして、さっきの言葉の事か...。
「わ、私...ごめんなさい、ごめんなさい.....」
途端に沙織の眼には、大粒の涙でいっぱいになっていた。昔から沙織が泣いてる所を見たことが無かった俺は、あまりの光景に驚きが隠せなかった。
「沙織?どうした。一回落ち着こう。家帰ってからな!?な、なぁ!亜美。」
「先輩、ちゃんと聞いてあげてください。これを逃すと沙織が後悔する。けど、先輩の言うとおり家帰ってからにしよ。」
二人ともどうしたんだ...。沙織が言いたい事があって、今逃すと沙織が後悔して...。
「あの日......涼香が死んだ日。私知ってたんです。」
家に着いた途端、沙織は話し始めた。
_____2年前・・・
『ねぇ、沙織。私、明日死ぬの。ごめんね、沙織』
『涼香...?も、もう、冗談やめてよ!?死ぬとか簡単に言わないの!!!それに、なにかあったら竜輝先輩も、私も亜美も居る。だからそんなこと言わないの!』
『ごめんっ!私、頼れなかった。...虐められてたの。ちょうど、竜輝と付き合いだした時....だったと思う。りゅう、人気あったし...。まだ私が、クラスの中心に居た時関わっていた子の中に、りゅうの事好きな子がいて。上手くいくように手伝ったら、私が告白されて........』
「そして、次の日...桜散る雨の日、涼香は線路に飛び込みました。今まで、黙っててすいません。」
...沙織は、嘘ついてるように思えなかった。だから、沙織を恨んだり責めたりはしなかった。
亜美は、ただ無言に抱きしめた。沙織が泣き崩れて、気づいたらみんなで寝ていた。
「先輩今日はありがとうございました。明日から新学期なので。先輩も頑張ってください。」
「あ...。うん。頑張るよ」
......明日から新学期か。学校か。
「りゅう!」
「涼香!ごめん。俺、守れなかった。虐められているの知らなくて。気づいてやれなくてごめん。」
「りゅう。自分を責めないで!約束して。私が居なくても生きること。りゅうは強い。優しい。亜美ちゃんと、沙織ちゃんを守ってあげてね?」
「涼香...。じゃあ、俺との約束。...天国で幸せになれ。」
『ありがとう。』と。最後に涼香はそう言った気がした。
桜散る雨の日 紫陽花 @Minaduki-Azisai
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