第11話 便秘になった助けて!

ここのところ、5日間ほどウンチが出ていない。困った。以前から緊張すると便秘になっていたけど、この5日間は、例の苦痛の夜の5日間であったので、緊張していたからかもしれない。


「なんで早く言わないの、便秘薬があったのに」


「恥ずかしかったから、でも下腹が痛い」


「そうだ浣腸したらいい。イチジク浣腸」


パパがすぐに駅前の薬局に買いに行ってくれた。


「使ったことある?」


「ないけど、使い方が書いてあるからやってみる」


トイレで試みるが、やっぱりだめ、でない。


「やっぱりでない、下腹とお尻の穴が痛い」


「浣腸の仕方が下手じゃない、やってみていい?」


「恥ずかしい」


「はい、お尻を出して」


私は恥ずかしくてどうしようか迷った末に覚悟を決めた。


パパがお尻の穴を覗き込んでいる。やっぱり恥ずかしい。


「太い黒いウンチが顔をだしているよ」


パパは薄いビニールの使い捨て手袋をしてきた。パパが触っているのが分かる。


「これは固い。痛いはずだ。これは手で取り出さないと」


もう、ほじくって取り除き始めている。


「固いけど、ポロポロとれる。顔を出している部分を取り除いたら、普通のお尻の穴になった」


パパはさらにお尻の穴に指を入れてくる。奥の方から掻き出しているのが感触で分かる。だんだん楽になってきた。


「楽になった。ありがとう」


そういうと、ようやくパパがお尻の穴から指を抜いてくれた。恥ずかしさに気づいて、すぐにトイレに駆け込んだ。トイレに入るとすぐにウンチが出た。快感。安心した。


恥ずかしさも収まったのでトイレから出ていくと、パパが申し訳なさそうな顔をして待っていた。


「出たー! 20㎝はあったわ、太いのが、パパに見てほしかったけど」


「結構です、はしたない。うら若き女性の言うことか!」


「恥ずかしくて、恥ずかしくて」


「臭い仲になってしまったね」


「望むところですから」


その後、私は以前にも同じことがあったことを思い出して話をした。


「パパとママが結婚して、3人で一所に生活を始めてからしばらくして、今まで男の人と同居したことがなかったので、やはり過度の緊張で便秘になったの。夜中にお腹が痛くて痛くて我慢できなくなって、両親に言ったところ、パパがとても心配して、すぐ119番に連絡して、見てくれる病院を探して、車にのせて連れて行ってくれた。処置は今回と同じで看護師さんが手で掻き出して浣腸してくれた。


パパは、『なぜ早く言わない。体の具合が悪かったら、遠慮しないで、すぐに言わないと。もう家族なんだから』と言ってくれて『大事にならなくてよかった、本当によかった』と喜んで、抱きしめてくれた。これまで父親に接したことがなかったので、とても頼もしくて、うれしかったのを覚えているわ。


また、パパは暇を見て勉強も助けてくれたので、とてもありがたかった。父親ってこういうものなんだと、父親ができて初めてうれしいと思ったの。それで、それまでおじちゃんと言っていたのをパパと呼んでいいかと聞いたところ、照れくさそうに『パパか』と言って『いいよ』と、とてもうれしそうだった。それから、徐々にパパが好きになっていったの」


死んだパパと今のパパ、兄弟だった。道理でどこか似ている。このウンチ事件から、私は夜に明かりを消してと言うのをやめた。恥ずかしいけど全部見てもらって好きになってほしいと思ったから。


そして、二人には、人にはとても言えない秘密ができて、前よりもっと気持ちが通じ合うようになった気がする。夫婦ってこんなふうに少しずつ絆が深まって行くのかしら?

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