第163話「火種の洞窟、火の試練(3)」
ザーリダーリ火山まで戻ってきた俺とテオは、火山内の狩場の1つである『火種の洞窟』を訪れた。
洞窟内部の仕掛けを解除し、さらに奥へと進んでいくと、『火の精霊王の
空中に浮かぶは、赤く燃えるライオンのように凛々しい姿な『火の精霊王』。
そのあまりの
『我、
我、
我、
頭の中に“
ゲームのそれとは違い、耳を通ることなく、脳に直接語りかけられてくるというか、いわゆるテレパシー的なやつだろう。
だけど言葉はゲームのものと一言一句同じ気がする。
なら次は、“あの質問”が来るはずだが――
『神に愛されし光の子よ……
……
「はいッ!」
待ち構えていた通りの問いに、迷わず俺はゲーム通りの答えを返す。
『なればひとつの試練を与える……
証明せよ……
ひときわ強く脳内へと響く声。
と同時に地面が光り、目の前が
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――次の瞬間、
先とは違う洞窟内の小部屋。
どこもかしこも黒色の岩の壁で囲まれた20帖ほどの空間。
天井こそ高いが、出入口は見当たらず、閉め切られているから外の光は入らない。
だが魔術で周囲を照らす必要はない。
地面に埋め込まれる形で、明かりの魔導具がいくつも設置されているからだ。
「なッ?! ななななんででででッ?!」
背後からテオの声。
くるっと振り返ると4コママンガみたいに分かりやすいパニック真っ最中だった。
「落ち着けテオ――」
「だだだだだってッ!! ピカッ、グニャアッ、ブワァッ――て知らないとこにいるんだぞッ! ていうかッタクトこそむしろ慌てろよォッッ?!」
俺は一瞬考えてから、ようやく彼の状態を理解する。
「あ~もしかしてお前、『
「へ?? て……てれぽぉ……と?」
きょとんと首を横に傾けるテオ。
うん、こりゃ全く心当たりがないって感じ。
「『
「そっ、そんなスキルあったのか?!」
「
俺が言葉を濁した理由。
それは『
厳密に言えば魔術もスキルの一種であるのは事実。
しかしこの世界の人たちが“魔術術式”を総称した際、普通は『魔術』呼びするのが慣例で、『スキル』呼びは聞いたことがない。
背景には『魔術』と『それ以外のスキル』の仕組みの違いがある。
魔術は精霊の力を借りて魔力を自由に扱う技で、他のスキルは精霊に頼らずそのまま魔力を扱う技だ。
感覚的には、横浜生まれの人が「横浜出身」とは言うけど「神奈川出身」とは言わないのとだいたい一緒だな。
仮に俺が“魔術”と説明していたら。
テオは素直に聞いただろう、“
その質問に俺は答えられない。
なぜなら『
テオはじめこの世界の人にはオーバースペックすぎるから、あまり詳細に説明したくないんだよな……ま、このまま誤魔化し続ける方向でいくってことで。
「じゃあテオも落ち着いたことだし、この後の流れを改めて確認するぞ。まずここは、火の精霊王の試練において『火の待機所』と呼ばれる場所だ」
「あ、作戦会議でタクトに聞いたとこ! でもまさか移動方法が
「
ゲームでの試練承諾時もパーティ全員で待機所に飛ばされるわけだけど、移動後には特に会話イベントが起きないから、テオがあんなに慌てるとは考えてもなかった。
まぁ『
「……だが待機所に来るまでの流れ自体は想定通りだったし、この後もたぶんそこまでずれることはないとは思うぞ」
「えっとー、試練を受けられるのは
「ああ。ちゃんと準備してきたよな?」
ニカッと笑うテオ。
「もっちろん! 水にごはんにオヤツにお酒、本も紙もインクもいっぱい持ってきたし、楽器だって弾きまくれるさ♪ 寝る時はテント広げるし、お風呂やトイレも問題なし。1ヶ月でも2ヶ月でもこもりまくれるぜっ!!」
流石に2ヶ月はかからないって。
とはいえ俺が試練を
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