第64話「スラニ湿原で、資金稼ぎ(2)」
俺とテオは資金稼ぎ目的で、スライム族の魔物の狩場として有名なスラニ湿原にやって来た。
スライムには魔術が有効だ。
だが俺達が訪れた際には、既に多数の冒険者パーティが湿原で狩りをしていた。
【光魔術】を見られるわけにはいかないため、基本的に魔術はテオが、それ以外を俺が担当することに決めたのだった。
半径50m以内に生き物や魔物がいるかどうか何となく知ることができるスキル【気配察知】を俺が常時展開した状態で、戦闘中の冒険者パーティの邪魔にならないように気を付けながら、しばらく湿原を歩き回る。
なるべく他の冒険者達が少なそうなエリアを選んで移動していると、数十m先にキラキラッと粒子が集まり始めるのが見えた。
「あ、なんか生まれそうっ」
戦闘態勢を整えつつ、足早に粒子へと近づいていく。
粒子が小さなスライムへと姿を変え終わったところで、俺が素早く【鑑定】スキルを使った。
「普通のタイニィスライム、LV18!」
タイニィスライムは、通常時の体長が20cmほど――スライムは伸び縮みしながらグニャグニャ動くため、丸っこくひと固まりになった状態を『通常時』と呼ぶ――で、確認されているスライム族の中で最小かつ最弱な魔物だ。
テオは「OK!」と短く受け、右手の指先に【土魔術】を発動する。
「……
――サラッ
指先に渦巻くように現れたのは、直径10cm程の砂の球。
テオはすぐさま指先をバッとタイニィスライムに向け、同時に短く指示する。
「GO!」
彼の合図に
球の中に閉じ込められていた非常に細かい砂が、即座にブワッとスライムの体を覆いつくし、その体内に吸い込まれたかと思うと……スライムは粒子となって消え、後にはドロップ品の透明魔石だけが残った。
テオが使った『
スライムを倒すためには、その体のどこかにある『核』を破壊すればよい。
だが普通に攻撃しても、スライムは攻撃された部分を切り離してしまうため、核へとダメージが伝わらない。よって昔はスライムを魔術で倒す場合、対象の体よりも広範囲を覆える強力魔術でないと倒せず、討伐の効率が悪かった。
そこで消費魔力を抑え、効率よくスライムを倒すべく編み出された“対スライム特化の魔術”が
霧状に具現化することで、広範囲に広がる割には消費MPは低めとなる。
ただ覆うだけのため通常の魔物への攻撃に使っても威力はほぼ無い。
しかし魔力を非常に通しやすい体を持つスライムを
スライムが多いトヴェッテを訪れるにあたり、俺も一応『
またエイバスからトヴェッテへの道中にて、
さて、1体目のタイニィスライムを難なく倒した俺とテオ。
ドロップ品の透明魔石を【鑑定】した俺が、少しがっかりしながら言う。
「……透明魔石……低級だな……」
スライムを倒すともれなく貴重なアイテム『透明魔石――魔術を閉じ込める事ができる特殊な石――』を手に入れられるのだが……たった今、俺が手に入れたのは、透明魔石の中で最も価値が低い『低級透明魔石』。
ちなみに透明魔石および魔石のランクは、上から『最高級』『高級』『上級』『中級』『低級』で、ランクにより、閉じ込められる魔力量と取引価格が大幅に変わる。
スラニ湿原に出現する魔物の大半はタイニィスライムか、スモールスライム――タイニィスライムの倍くらいの大きさのスライム――である。
それらを倒した際の基本ドロップ品は共に低級透明魔石。運が良ければランクが高い透明魔石が手に入ることもあるのだが、確率は非常に低い。
俺を励ますように、テオが明るく言う。
「まぁ、低級でもそこそこの値段で売れるわけだし、がんばって集めようぜ!」
「……そうだな! あ、あそこ……次が生まれるかも!」
「おっし!」
気合いを入れ直した俺達は早速、次の獲物へと向かって駆け出していくのだった。
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