第59話「商業区での、装備品探し(1)」


 フルーユ湖へと向かう予定の俺とテオに、トヴェッテ冒険者ギルドのギルドマスターであるネレディだけでなく、その娘のナディも同行することとなった。

 ネレディの仕事の都合・準備に必要な期間などをふまえて話し合った結果、出発は5日後、そしてネレディの従者達も護衛として一緒に行くことが決まる。



「テオ、タクト、またねーっ!」


 可愛くブンブン手を振るナディ達に見送られ、俺とテオはレストランを後にした。





 その足で向かったのは、王都で1番大きな商業区。


 様々な店が並ぶ中、本日は武器や防具を扱う店をメインにまわるつもりだ。

 手始めに防具屋が集まるエリアを訪れ、端から順に店内をのぞいてみる。



 気後れしそうなぐらい豪華な店構えの、オーダーメイド専門店。

 貴族の子女をターゲットにしているであろう、子供用高級防具専門店。

 【防護加工――布製の服に防御機能を持たせる加工――】を施したタキシードやパーティードレスなどの、夜会服専門店。



 そういった富裕層向けの高級ブランドショップが大半を占めるのは、トヴェッテならではだろう。

 この辺りでは平気で『数万~数十万リドカ――日本円にして数百万~数千万円――』の高級アイテムが展示してあり、どの店にも強そうな警備員達が配置されていた。


 さすがに今の俺達の手持ちじゃ厳しかったので、高級店は後学のためにサラッとのぞくだけにし、もう少し気軽な価格帯の店にて購入候補アイテムを見繕っていく。





 そんな中、気になる防具店を見つけた。

 手狭な店内に整然と並べられた盾や鎧などが値段の割に良質で、デザインとしても俺好みのものが多かったのだ。



 テオと相談してから、寡黙な年配男性店員に予算や希望を伝え、オススメの防具はないかたずねてみる。


 店員は俺の現在の装備を鋭い目つきでサッと観察してから、無言でうなずく。

 そして腰に付けた魔法鞄マジカルバッグから鎧を1つ取り出し、こちらに見せるようにしながらゆっくり説明し始めた。


「……ミスリルメイルだ……軽量タイプが希望ということだが……お前さんが今つけている革鎧と重さは同じぐらいで、防御力は段違いに上がるはず……魔術への耐性も多少あるしな……」


 説明が終わったところで、店員が鎧を渡してきた。 



 連結部の革ひも以外は全て金属製ではあるが、金属部分は元々素材自体が軽量なミスリルで出来ているため、手に取った際の重量はかなり軽めに感じた。

 装飾があまり無い、実用性重視のシンプルな造りも気に入った俺が「これ、おいくらですか?」と聞いてみると、店員はボソッと答える。



「……3000リドカ



 先程スライム関連素材を売却したお金で十分に買える手頃なお値段。



 ひとまずは、試着をさせてもらうことにした。


 店員に着方を教えてもらいながら、まず金属の輪で組み上げたシャツのような形のチェインメイルを着込み、その上から胸部・肩・腰・前腕を覆う形のプレートを連結するように装着していく。


 

 プレート部分が覆う範囲は元々つけていた『革の軽装鎧』と大差ないけど、チェインメイル部分が腹部や上腕部も覆っているため安心感が段違いで、かつ全く動きの邪魔にならない。


 また革の軽装鎧の能力補正は『物理防御力+7』だけだったのに対し、このミスリルメイルは『物理&魔術防御力+20』と、倍以上にアップする。



 隣で見ていたテオからも「悪くない!」との意見が出たことで、俺は購入を決意。

 代金を支払い、ミスリルメイルはそのまま着た状態で店を後にした。

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