第20話 アマリア先生の、イルガード研修

「次は、イルガードの活動についてです。資料の2枚目を見て下さい」

 アマリアに言われた資料の2枚目に目を通す。

 

 私が資料を見たことを確認するとアマリアが説明を始める。

「イルガードは、街の治安維持を目的として活動します。団員は活動時、指定の武器の所持が認められます。また、支給されるピンバッジを必ず身に着けなければなりません」

 

 そういうとアマリアは、自分が着ている受付の制服の胸元についているピンバッジを指さす。

 金色の下地に、表面が赤く施され、細かいデザインが刻まれたピンバッジだ。

「これですね。活動の際はこのピンバッジを必ず着けて下さい。ピンバッジは後でお渡しします」

「はい」


「次は、イルガードの構成についてです。イルガードはスプリンの街全てをカバーできるように支部を作っています。それはもうご存知ですよね?」

「それは聞いています」

 フェヴィルから支部の話は聞いていた。


「支部は、王宮の付近を守る北支部。街の東西を守る西支部、東支部。中央広場周辺を守る中央支部。そしてスプリンとリッシュの街境を守る南支部。最後がこの本部です」

「なるほど」

「これもご存知だと思いますが、支部ごとに必ず2つ以上の班を作るきまりになっています。今回メイルさんは中央支部のギース班への配属になります」

「はい」

「支部によって、活動の日数などは変動するので、詳しくは支部で聞いて下さい」

「わかりました」


 ――その後のアマリアの説明では、中央支部は、朝市があるので、人が集まる場所ではトラブルも多いらしく支部の中でも1、2を争う忙しさだという。

 

「それでは、次の説明です。次は、イルガードから出る手当についてです」

「イルガードって自治組織なのに手当がでるんですか?」

 意外だったので思わず口に出てしまった。

「はい。ちゃんと出るんですよ。詳しく説明しますね。資料の4枚目を見て下さい」

 資料の4枚目に目を通す。

 

「イルガードの様な自治組織はスプリンの街にいくつかありますが、それぞれの規模や活動に応じて国から活動資金の半分を負担してもらえるんです。残りの半分は、ハルシュの民が支払う自治税や寄付でまかなっていて、団員の活動した日数を計算して支給されます」

「そうなんですね。知らなかったです」

「皆さん、自分の仕事をしながら活動しているので、活動する日は、仕事を休むことになりますからね。その日の稼ぎの補償と考えてもらうとわかりやすいと思います」

「なるほど。でも国も活動費の半分を負担するなんて凄いですね」

 自分が王宮に居たときには国の財政などには触れることがなかったので新鮮だ。


「以前までは、街も軍が自治をしていたので、軍が介入できなくなってからは、それにかかっていた費用をイルガードなどの自治組織に転用しているんですよ」

「それなら問題なさそうですね」

 アマリアの丁寧な説明に納得できた。

 

「それでは次にいきます。次はイルガードと軍の関係のお話です」

 そういうとアマリアは資料に目を落とす。

「ハルシュ軍はイルガードなどの自治組織の活動に介入することは許されません。ただし例外として、殺人などの重大な犯罪行為があった場合、軍は捜査及び犯人の逮捕を行います。その際はイルガードも軍に協力をしなければなりません。また、イルガードは街の治安維持の他に、軍の監視も一つの活動になります。軍が不正を働いていないかをチェックする役割も担っているんですよ」

「それは知らなかったです」

 

 街に出て、3ヵ月が経つが、まだまだ知らない事ばかりだなと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る