×と〇はキョクジツのもと!?〜First.Season〜
歌川 玄龍
File.1 篠懸警察署!?
ウーー。
パトカーのサイレンが鳴り響く。
静かなはずの
「早く金を用意しろ!」
一人の男がある家のベランダで女性を人質にとって叫ぶ。
「立てこもり、か……」
そんな男を見上げるのは篠懸警察署刑事部捜査一課の
同じく
二人ともこの事態をあまり一大事だと思っていないのだろうか、興味なさげに、あるいは哀れんでいるようだ。
「おいおい、そんなに軽く見るなよ。一応大事件だぞ?」
「そーっすよ、先輩方?」
そんな二人の後ろから来たのは一課のベテラン刑事、
「そう思ってるなら一応なんてつけるな」
タクの言葉にリューゴがつっこむ。一応、と言った時点でタクたちも思っていることはリューゴたちと同じようだ。
と、その前に、大先輩に対してそんな口のきき方でいいのかと思うが、先に言っておこう、これが黒崎リューゴだ。
「早く金を用意しろって言ってるだろ!この女がどうなってもいいのか!」
忘れていたがここはとある立てこもり犯のいる現場だった。
「ヒロ、どうだ?」
リューゴがヒロムに聞いた。
「そうですね、人質をとって立てこもりって思えますけど、あの人質共犯ですよ。金欲しさ、ですね。計画はちゃんとしてるっぽいけど、アレ片付けたら終わりますよ」
「じゃあ突入でいいな」
「ですね」
「あぁ」
ヒロムの答えにタク、サクヤ、リューゴがうなずく。いつも通りの光景……。
いやいやいや、どうしてヒロムがそんなことを知っているのか。そして何故みんな納得しているのか。全く普通ではない。
しかしまぁこれもこの先を見ていくためには知っておかなければならないことだ。だから言っておこう、この篠懸警察署は天才しかいない(一部例外を除く)。彼らは皆、天才……では片付かない化け物のような能力(才能)を持っている。非科学的なことではない。ただ単に天才という化け物に生まれ、偶然(?)にもこの篠懸警察署に集まっただけだ。
ま、この天才ぶりは見た方が早い。
例えば先程のヒロム、ヒロムが持つ才能は犯人の心理がわかること。ものすごく簡単に言えば、犯人になりきることができる。
ほかの人の才能は後々分かるとして、ここはそんな天才たちが集まった警察署なのだ。なのでさっきのような事がっあっても何も不思議ではない。
「突入してかまわんよ。ついでにあの人質の女も拘束しといてくれ」
タクの指示が待機していた警察官たちに伝わった。
『突入!』
その後すぐに突入の合図がかかった。
それからは早い。ヒロムの言っていた通り犯人と人質は共犯で目的は金。だから突入した警察官たちに何も抵抗出来ずあっさりと捕まった。
「なんでバレたのよ!」
犯人たちの叫びはもっともだ。普通なら、こんなにもすぐに刑事たちに気づかれるはずがない。しかし、彼らは場所を考えるべきだった。
ここが篠懸警察署の管轄だということをね……。
「クソが!」
突然犯人の男が叫んだ。そして自分を拘束する警官をふりきり、その場から逃走しようとした。
『あぁっ!』
焦る警官たちは再び男を捕まえようとするが、男はそんな警官たちの間をスルスルとすり抜けていった。
「そこをどけ!」
すばしっこく警官の中を通り抜けた男は、目の前にいた最後の一人にそう叫んだ。
「あーあ」
「あらら……」
「しーらないっ!」
それを見ていたヒロム、タク、サクヤが声を揃えて言った。しかしなぜか慌てていない。というかむしろ犯人の方をあわれんでいるようにも見える。
だって……最後の一人がリューゴだから。
リューゴは向かってくる男の前から動かなかった。そして……。
ーーバッシーン!!ーー
迫り来る犯人の腕をつかみ、がら空きの懐に入りながら犯人の首元の服を掴んでスピードを殺さずそのまま一本背負い。
なんとキレイで流れるような技だ。無駄のない動きに伸びる犯人。
「さっすがリューゴ♡」
そして何故か服の埃を払うリューゴに飛びつこうとするサクヤ。
「うるせぇ、黙れ、飛びつくな」
……冷たい言葉と視線で一刀両断。容赦無し。が、何故か嬉しそうなサクヤ。
「あぁ♡それでこそボクのリューゴ♡」
……誤解をしないように言っておくが、サクヤはは決してMではない。この状況を表すのならば、【一方的な愛】だ。それだけは間違えることのないように。
「おつかれさん」
「さすがっすね、リューゴさん」
そしてこれが当たり前だと思うように。だからこの状況(サクヤの態度)が当たり前だと思っているタクとヒロムは特に気にもとめず、リューゴを労う。
「……終わったなら帰る」
相変わらず無愛想で口が悪い。まだ素晴らしい身体能力しか見ていないが、篠懸警察署に居るくらいなのだから、リューゴも天才なのであり、刑事としての実力もかなりのものなのだろう。
さて、それが彼ら篠懸警察署の刑事達であり、黒崎竜吾、彼がこのふざけた話の主人公だ。
ーー篠懸警察署刑事部捜査一課(通称一課)ーー
「帰った」
先の事件、(リューゴの一本背負いがかっこよかった立てこもり事件Byサクヤ)を解決してリューゴが帰ってきた。その後ろから、
「たっだいま〜!」
「帰ったぞ〜」
「ただいま戻りました〜」
サクヤ、タク、ヒロムも戻ってきた。
「おかえり、みんな」
「おつかれ〜」
そんな四人を迎えたのは、一課のポッチャリ優男、
それから……。
「お疲れ様、リューゴ、花宮君、佐藤君
藤嶋君。今日も大活躍だったようだね」
笑顔で四人を労うのはここの一課長、
「うす」
そんな謎の一課長、フミヒロ。一見優しいそうなおじいさんなのに、あのリューゴがこの警察署で唯一敬語を使う相手だ。
「フミさん、珍しいですね。こんな時間までここにいるなんて。何かあるんですか?」
いつもはここにいないらしいフミヒロの姿があり、不思議そうにタクが聞いた。
「少し大切な話があってね。みんな集まってもらってもいいかな?」
フミヒロの一声で一課のメンバーはやっていることの手を止め、フミヒロの前に集まった。
「なんすか?フミさん」
リューゴも何やら興味ありげだ。
「実は一課に新しい子が来ることになったんだ」
『おぉ……』
一般的に見るとこの警察署はおかしい。だからこの基本天才しかいない警察署に新しく入ってくる者など普通はいない。そんな所に新入りとなればそりゃあ驚く。
「ねーねーフミさん。ここに来るってことはなにか特別な事情があるって事ですよね?」
サクヤが聞いた。一応ここがおかしいということは分かっているようだ。
「君たちなら明日彼に会えば分かるよ」
そう言うと謎の笑顔を残し、フミヒロは出ていった。
「明日になれば分かる、か……」
リューゴはフミヒロが出ていった方を見ながら何かを考えていた。が、その時間はアイツによって強制終了されられた。
「新人かぁ。楽しみだね、リューゴ♡」
そう言って飛びついてくるサクヤに露骨に嫌な顔をするリューゴ。そんなことは気にせずほかの人たちは話を続ける。
「しかし本当に珍しいな。篠懸に新人なんて」
男らしい物言いだが、言ったのは一課唯一の花、ユリである。
「そうだねぇ。ヒロムくんが来てからしばらくは誰も来なかったからね」
「そうっすね」
コウジとヒロムは話し方から少しテンションが上がっているように感じる。
ヒロムが来てから誰も来ていないということは、篠懸には5年間新人が来ていないということになる。だから世話好きのコウジと、一番下っ端だったヒロムにとっては嬉しい出来事だった。
「ま、全ては明日分かるんだ。新人の歓迎を兼ねて今から飲みに行かないか?」
しっかり話をまとめて終わらせるのはやはりタクだ。だが……何故まだ新人が来てもいないのに歓迎会なのか。まぁ世の酒好きの方なら分かるだろう。こいつらがただ飲みたいだけだということが。
「いいですね、仕事も終わったことですし、パーっと飲みましょうよ!」
「いいね!行こういこ〜!」
飲むと言って反応するのはだいたいこの二人。ユリとサクヤだ。ちなみに言い出すのも基本この三人だ。
残りはというと……。
「みんなが行くならぼくも行くよ」
「おごりなら行っきまーす!」
結局来る。
なんだかんだでコウジもヒロムも飲みたい人だ。まぁ、ここまでは普段の飲みに行くまでの流れだ。ここから先はその時によって違う。
「リューゴ、お前はどうする?」
タクが聞いた。
「一件なら。仕事が残ってるからな」
「珍しいな、黒崎が飲みに来るなんて」
少々驚き気味のユリ。実はリューゴが一緒に飲みに来るのはかなり珍しい。が、別に仲が悪い訳では無い。ただ仕事が終わってないだけという場合がほとんどだ。まぁ、その理由はいずれ分かるとし、この日はまだ顔も知らない新人の歓迎会という理由で、一課の飲み会が定番の飲み屋で行われたのだった。
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