第7話
第6章
〔精霊〕
次の日、友生は不思議な夢で、目が覚めた。
真っ暗な闇の中、両側から押し潰されるような感覚、息苦しい。
もがいても、もがいても、抜け出せない…
そんな、闇の中をさまよっている友生の前に、
1人の女性が現れる。
そう、昨日夢の中で見た、あの女性だ。
昨日は、誰だかわからなかったが、なぜか今日は、ハッキリとわかった。
「憂稀…、」
大人になってはいるが、確かに憂稀だ。
憂稀は友生の前に立つと、
「お願い、友生、みんなを、この世界を救って…お願い…」
とても悲しそうな目だった。
そう言い残すと、憂稀は何かに引っ張られるように、それでも友生の目を見つめながら、闇の中に消えて行った。
友生は憂稀が消えて行った、真っ暗な闇に向かって、精一杯腕を伸ばした。
「憂稀!憂稀!!ゆう~き~!!!」
友生は、ハッと我に帰った。多分、目は覚めてるはずなのだが、まだ目の前は真っ暗だ。
ただ、さっきの夢と違うところがあった。
さっきまで両側から、押し潰されそうな感覚だったが、今は、両側に柔らかく暖かい物が、友生の顔を包んでいた。
何だろうと思い、手を伸ばし、触ってみると、柔らかい。
まるで柔らかい餅みたいだ。
そして、さらに触っていると、
「アンッ、トモキ~ッ。」
「ん?スーの声??」
ちょうどその時、
ドドドドドドドド!
誰かが階段を、駆け上がって来た。
ガチャ!
「ちょっと、スー!友生のベッドで、なにやってんの!!」
「オー、ユウキ、オハヨーゴザイマス。」
「オハヨーじゃないでしょ!って、あなた裸じゃない!?」
「オー、チガイマ~ス、チャント、パンティーハイテマ~ス。」
スーは、布団をめくり、パンティーを見せた。
「見せなくていいから…で、なんで友生のベッドにいるのよ!」
「ワタシ、トモキヲ、オコシ二キマシタ。
トモキノオカアサン、イッテマシタ。
イツモ、ユウキガ、パンティーミセナガラ、トモキヲオコシテルッテ。」
「違う違う!いや、違わないけど…
ちゃんと服は着てるもん。
友生も、いつまでスーの胸に頭を突っ込んでんのよ!!」
憂稀は友生の衿を掴むと、スーの胸から引っ張り出した。
友生は、いきなり目の前が明るくなった。
そして、何もつけてないスーの胸が目に飛び込んできた。
「わっ、わっ!わぁ~!」
友生は、すぐに目を後ろに反らした。
しかし、反らした先には、鬼のような形相をした、憂稀が立っていた。
「友生~、あとでゆっくりと、話をしましょうか。
スーは早く服を着なさい。」
「ハーイ、ワカリマシタ。」
スーは、ベッドから降りると、パンティー1枚のまま、友生の部屋から出ていった。
しばらくして、3人が玄関から出て来た。
いつもと同じ通学路だか、いつもと違う光景があった。
いつもは友生の隣にいる憂稀だが、今日は不機嫌そうに、友生の後ろを歩いていた。
そして、いつもは憂稀が居た場所には、スーがベッタリと友生の腕を組んで歩いてる。
友生は、たまに憂稀を気にして、後ろを振り向くが、憂稀は目を合わさない。
「友生のバカ…」
3人が、学校に着き、憂稀が下駄箱を開けると、
中に手紙のような物が入っていた。
「何だろ?手紙…?」
憂稀は、誰にも気付かれないように、手紙を取り出し、ポケットに入れた。
教室に向かってる途中も、憂稀は手紙の事が気になっていた。
「誰からだろう?友生じゃないよね…」
憂稀はチラッと友生を見たが、スーにベッタリとまとわり付かれ、迷惑そうな顔をしてる。
これといっていつもと変わらない様子だった。
そこへ、いつものように、翔が現れた。
「オッス、友生。今日も相変わらず顔色が悪いな。アハハ」
友生の方をポンと叩き、
「あれ?今日は憂稀ちゃんが、隣にいないんだ。
ケンカでもしたの?」
「いや、そういうわけじゃないけど…」
友生が憂稀に助けを求めようとするが、どこか憂稀は上の空だ。
「憂稀、憂稀ってば。」
「え?!あ、うん。スーが押しかけて来ちゃって、友生にベッタリなの。」
「へ~、スーちゃんがね~。モテる男は辛いね~。」
翔は友生の肩をグッと抱き寄せた。そして耳元で、友生にしか聞こえないような、小さな声でささやいた。
「今日の放課後、大切な話がある。屋上に来てくれ…」
友生は「え?」っと思ったが、「あの翔がこんなこと言うなんて、ただ事じゃない。」直感的にそう思い。小さくうなずいた。
「じゃあな、友生!!」
翔は、すぐにいつもの翔に戻り、笑顔で去って行った。
その日の昼休み、トイレの中で手紙を読んでる、憂稀の姿があった。
封筒の表には「神成 憂稀様」
裏に差出人の名前はない。
封を開け、手紙を読んでみると、
「突然、このような手紙を差し上げ、申し訳ありません。
ただ、どうしても、神成さんに上地君の事で、伝えておかなくてはならない事があるので、今日の放課後、1人で屋上に来て下さい。
氷河 透 」
「氷河君?何だろ、友生の話って…」
憂稀は少し不安な気持ちになった。
その日の放課後、友生が帰る用意をしてると憂稀が、
「友生、ゴメン。今日、清美達と一緒に帰るから、先に帰ってて。スーちゃんがいるから、大丈夫だよね?」
友生は、何かいつもの憂稀とは違う感じがしたが、翔との約束もあったので、
「うん、わかった。僕も翔と約束があるから、また明日ね。」
「うん…。」
憂稀は無理矢理、笑顔を作り友生を見送った。
友生は屋上に行く前に、スーを玄関まで送って行った。
なかなか1人で帰ろうとしないからだ。
今日は一緒の部屋で寝ていいという条件で、やっと説得した。
友生達が、下駄箱に着くと、帰ろうとしている、清美と香を見つけた。
しかし、そこには憂稀の姿はなかった。
「あれ?水川さんと花咲さん、憂稀は一緒じゃないの?」
「憂稀?ううん、知らない。友生君達と、一緒に帰るんじゃないの?」
「いや、憂稀が「水川さん達と一緒に帰るから、先に帰ってて。」て言ってたから。
「ん?でも、憂稀ちゃん、さっき屋上の方に向かってたよ。」
香が思い出したように言った。
「屋上…?」
友生は、胸騒ぎがした。
「ゴメン、スーをお願い!」
そう言い残すと、友生は屋上に向かって走って行った。
屋上では、もうすでに憂稀が透が会っていた。
「氷河君、友生の大事な話って?」
「あまり、大きな声じゃ言えないから、もう少し近くに来て。」
憂稀はゆっくりと近づいた。
手を伸ばせば届きそうな距離に来ると、透は手を伸ばし、黙ったまま憂稀のおでこに、人差し指を当てた。
すると、その瞬間、憂稀は意識を失い、透に倒れ込んだ。
「君は死なせたくないからね。」
透はそう言うと、憂稀を抱き上げた。
その時、
「ガチャ!!」
「ハァ、ハァ、ハァ…」
今にも倒れそうな友生が入って来た。
そして、憂稀を抱いて立っている、透を見つけた。
「憂稀!!!」
「氷河!貴様、憂稀に何をした~!!」
こんな友生は見たことがない。
「上地 友生…なぜ、お前がここにいる?」
「そんなことはどうでもいい!憂稀を離せ!」
「ふん、まあいい。どうせ、お前も後で始末するつもりだったからな。」
「そんな事はさせないわ!!」
友生は、聞き覚えのある声に振り向いた。
そこには、緑、清美、香、スー、の4人が立っていた。
「君達、なんでここに?」
4人は、顔を見合わせ、
「当たり前でしょ、私達はあなたを守るために、生きているんだから。」
清美は友生の目を見ながら言った。
「さぁ、憂稀を助けるよ!」
緑の言葉と同時に、4人は駆け出した。
「アハハ、それはどうかな?」
「僕達もいるんだけどな。」
「イエス!」
右から、レイが、左から、冬季と光が現れた。
「あなた達も…?」
「さてと、これで全員揃ったわけだ。
それじゃ、始めるとするか、精霊戦争を。」
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