第2話

  第二章〔海〕



俺の家から少し走った所に海岸がある。


地元でも有名な、夏になると海水浴客でごった返すような海水浴場だ。



小学生、中学生の頃は、よく夏になると自転車で海に泳ぎに行っていたものである。



バイクの免許を取ってからというもの、意味もなく、よく走りにいっていた。


約1キロの海岸線、ゴールの海水浴場の少し前、俺のお気に入りの場所がある。


お気に入りの場所といっても、別に変わった所ではなく、ただの道沿いの堤防の上。


潮が引いていれば、堤防の下は浜辺だか、満ち潮の時は、すぐ下まで海がある。

そこに座って、海を見るのが俺の定番だった。



何故、その場所がお気に入りかというと、そこから見る夕日がとても綺麗で、なにかと癒され、慰められたからだ。



今、まさに俺はその場所に向かっていた。


最後の夕日を見る為に…


「最後」というのは少しオーバーかもしれないが、引っ越し先には海が無い。


だから今日、その夕日を目に焼き付けておこうと思っていたのである。



とりあえず、先に妹に頼まれていた「タイヤキ」を買い、さっきより色が赤くなっている空を見ながら、海へと向かった。



街を抜け、海岸線に入る。


ちょうど夕日が海を赤く照らし始めた頃だった。


「ちょうどいい時間だな」


右へ左へと、車体を倒しながら、オートバイはカーブを抜けていった。


いくつかあるカーブを曲がりながら、「やっぱ気持ちいいや」


おもわず顔がほころぶ


この場所を走るたび、俺は何か物語の主人公になった気がしていた。



最後のカーブが近づく、あのカーブを抜けると例のお気に入りの場所だ。


ハンドルを握る手にも力が入る。



「見えた……」



「あれ…? 誰かいる…」


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