第25話マサルの憂鬱。

後ろから、ざわざわと走る音がする。なんだ?

その瞬間、リリィが叫んだ。


「こいつらはゴブリンだ。みんな、急いで上に向かいなさい。私の中の邪神が言ってるわ。これは危ないってね。」


は?なんでゴブリンがいるんだよ。今までなにもなかったじゃねーかよ。


全力で走るが、ゴブリンも早い。すぐにでも追いつかれそうだ。


「ギャ、ゴエゴエ」


ゴブリンが何かを言っているように思える。


そんな事を気にしつつ、僕は追ってくるゴブリンに捕まらないように逃げ、洞窟に入ってから今までのことを思い起こしていた。

考えて見ても、あの堕天使(ミキエル)が原因だと言うアンサーが頭に中で浮かぶ。


隣で羽根をパタパタしながら逃げているミキエルがいる。


「おい。堕天使(ミキエル)、もしかしてさっきのパンチが原因か?」


「……。てへぺろ」


それはそれは和かな笑顔だった。


「この堕天使ーーーー!!!!」


全力で走っている。目の前は一本道だ。ゴブリンの数は40体以上いる。1体ずつ倒しても倒しきれない。


「ゴリャマデ!!ゴリャ!!」


「なんか、『待てお前ら、殺すぞワレ』って言ってますー」


「え?エミリー言葉分かるのか?」


「あ、はい。私これでもドラゴンの端くれなのでー。人の言葉はもちろん、モンスターの言葉、精霊の言葉も分かりますー」


凄いなそれは。色んな言葉が分かるとは。

僕はエミリーを感心していると、リリィが僕をディスってきた。


「あったりまえよ。あんたバカァ。ドラゴンってのはね、知能が高い所属なのよ。それよりもゴブリンをなんとかしなさい!!」


そんな事を言われてもな。今の僕には対処の仕様がない。


「ゴリャゴリャゴリャ」


「なんかすごくキレてますー。『ワレ待たんかい。殺されたいのか。兄貴こいつら今晩の晩飯でどうですか?』と言ってますー」



こいつらに捕まったら殺される。早く逃げないと。

僕たちは必死こいてまっすぐ逃げている。すると、目の前に大きなドアぽい壁が見えてきた。



「どでかいドアだとおおおお〜」


僕は叫んでしまった。いや叫ばない方がおかしいだろ。止まったら殺される。目の前には行き止まり。僕の異世界生活はこれで終わるのだろうか。

……、ちょっと待てよ。ここで死んだら普通に日本に戻れないじゃないか。ラノベの続きも読めないじゃないか。クソ、考えろ僕。考えろ。考えろ。


クソったれ。何も浮かばない。なんだよ。こんな最後。主人公じゃないじゃないか。誰がこんな設定を考えたのだろうか。誰か助けやがれーーーーー!!!



隣にいた堕天使(ミキエル)が話しかけてきた。


「マサル。ここで諦めたら試合終了よ。私たちには目指すものがあるじゃない」


何を行ってるんだ?こんな緊急時に。生きるか死ぬかの瀬戸際だぞ。


「この扉は希望を持つものには光を。愚痴をこぼすものには堕落を。

光あるものには、ここの扉は開くのよ」


ごごごごご。


なんだとーーーー。本当にあいたぞ!!さすが大天使様(ミキエル)感謝するよ!!

僕は不覚にも心の中で思ってしまった。



しかし、その時。



崖だった。




「あーーーーー。この堕天使(ミキエル)が……結局、こんな結果か……」



僕は死を覚悟した。


「……。ん?浮いている?」


背中を持っているのはミキエルだった。


「うっ、重い。ちょっと動かないでよね。私までこの崖に落ちちゃう」


「大天使様!!ありがとうございます!!感激です」


「あら〜そう。もっと褒めてもいいわよ」


ミキエルは両手を頭において、顔が赤くなっている。


僕はと言うと真下に落ちている。


「あーーー。落ちるーーーーー。クソ天使が!!」



「あーーーー。マサル!!……」



落下ギリギリ、間一髪で堕天使(ミキエル)が助けてくれた。



採取クエストなのに、僕は1日という少ない時間で生命の危機が2回もあった。

今現在、空を移動しているのだがミキエルが僕を、リリィがエミリーを持っていた。

僕は思う。最初の討伐クエストや今回の採取クエストと言い、比較的難易度は簡単なはずだ。だがしかし、この堕天使がやらかしてからは、難易度は格段に跳ね上がっている気がする。



そんなミキエルはと言うと、落とした事は謝ってきたが、何も気にしてる様子はないようだった。

僕はふと頭の中で考える。次、女神様に会えたなら、天使チェンジしてもらおうかな。そう思った。


「なんだかマサルからの視線が気になって、背中がビクってなるんだけど、なにか噂してる?」


「してない」


察しだけはいい奴だ。こいつは地獄耳の持ち主なのか。

僕は運んでもらっている間、何もできなかった時間は終わりようやく地に足が着いた。

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