乙女の海上護衛戦記

野口健太

プロローグ

 戦争が勃発して三年あまり。

 周辺諸国を蹂躙して大陸沿岸部の覇者となりつつある『帝国』に対し、西方の沖合に位置する島国『連合王国』は抵抗を続けていた。

 緒戦で手痛い損害を受けた連合王国はその国土を取り囲む海洋を天然の防壁としつつ、世界各地に存在する植民地から人員と物資をかき集めて戦力の回復に努めていた。そしてその一部は援助物資として、大陸で抵抗を続ける同盟国にも送られている。

 当然ながらこの動きは敵にとって座視できるものではなく、帝国軍は王国の商船隊、および彼らが用いる海上交通路を標的として各種の兵力を洋上へと展開させた。

 その結果、大陸西方の海域では帝国・王国の両海軍が大小様々な規模の戦闘を繰り広げている。王国ではこれらの戦闘を一括して『海上護衛戦』と呼び、戦争の継続に不可欠な要素として優先的な対応をおこなった。

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