31回目:園美弥史月<英雄の帰還>
千年前、この世界は魔神王によって滅亡の寸前まで追い込まれた。それを阻止したのは、女神の祝福を授かった一人の英雄である。英雄は自らの命と引き換えに、魔神王の魂をフォルモントに封じたのだ。
だが、封印の効力は徐々に失われつつある。永遠に続く力など、ないということだ。
封印強化のため、
「……このまま魔神王が復活してしまえば、この世界は終わりの時を迎えるのですね」
同じように空を見上げる
「そんなことは、俺がさせない。この世界も、おまえも、俺が守ってみせる」
「……はい、私も、信じております」
それから更に一ヶ月、エンデベルトで最も魔力が濃いとされる、世界の魔力の中心地と言われる、その場所で、衛星フォルモントへと転移するための大魔術の準備が完了した。
一瞬にして衛星フォルモントに転移した
「――――!」
だが、その声は聞こえない。そして、
今、
そのことに気が付いた
再び聖剣を大地に突き刺した
その言葉に反応し、青い光がフォルモントの大地を覆う。聖剣の力が衛星フォルモントに注ぎ込まれ始めたのだ。
「……これで、終わったんだな」
安堵のため息を漏らし、全身から力を抜く。後ろを振り返れば、青い惑星エンデベルトが目に映る。
それは、
結論を言ってしまえば、彼は賭けに勝つ。何故ならば、私が彼に授けた女神の祝福のひとつが、今、発動するからだ。異世界転生後に、ただ一度だけ起こせる奇跡の力。
私は祈った。それによって、
「
その声に視線を巡らせた
「……何故、聖剣が、ここにある!?」
「……まさか、俺の転移魔術で、……聖剣も転移させてしまったのか? ……たしかに、転移魔術を発動する瞬間、今までにない強い魔力を感じた。それが原因で、転移の対象範囲が広がってしまったのか……」
「……魔神王が、復活する」
誰かが呟いたその言葉は、数日もしないうちに真実となった。封印から解き放たれた魔神王の魂が、エンデベルトの大地へと降りていく。赤く染まっていくエンデベルトを、私は、ただ茫然と見ていることしかできなかった。
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