23回目:倉端定光<最後の戦い>
「世界を救ってくれ? ……ああ、いいぜ。ただし、条件がある」
英雄召喚の儀により現れた男の名は
「はい、サダミツ様。どのような条件であっても受け入れましょう」
「たった今から、おまえのすべては俺のものだ」
「え……あ、はい」
「大変です! 魔物の軍勢が! ……西の国境の砦を突破されました!」
兵士の
「俺を案内しろ。そいつらは俺が片付けてやる」
首都を出て馬車で西へ向かうこと三時間、遠目に魔物の軍勢がこちらへと行進しているのが見えてきた。
「よし、ここまででいい。あとは俺一人で十分だ」
そう言って馬車を降りた
「とりあえず、先制攻撃をさせてもらう」
そう言って弓を引くような構えを取った
「開け冥界の門、闇斫の刃振るいし終焉の者、汝は我、我は汝なり、渾沌と絶望の狭間に漂いし幻想の射手、集いて力となれ、我が行く手を遮る愚鈍なる者どもに、神々の鉄槌を下し給え……フォイルニスドンナーシュヴァイゲンプファイル!!」
まるで意味のわからない呪文を口走った
「……む。そうか、俺は戦士系だったのか。ならば仕方ない」
いや、キミは戦士としてだけでなく、ちゃんと魔力を扱う才能もあるからね。そんな私の心の声も虚しく、
振り下ろされる短刀を持つ
本人も無意識のうちに使っている魔力が
「これで最後、っと。……可愛い女の子モンスターの一匹でもいれば、お持ち帰りするんだけどなぁ。まあ、これからに期待するか。それより早く戻って巫女と……ぐふふ」
気持ち悪いセリフとともに気持ち悪い笑顔を浮かべる
その日の夜、
「あ……サダミツ様」
頬を紅く染め、息を荒くする巫女は、抵抗する気などないような僅かな力で
「ん? あ、なんだ、これ?」
「ん、はぁ……、そ、それは、私で、ございます」
「お、おまえ……お、おとこ、だった、のか」
うん、やっぱり、気が付いていなかったようだ。そうである。この金髪の巫女は男である。
「は、はい。……この国では、代々、国で最も美しいとされる男が巫女という大役を」
「いや、そんなことはどうでもいい! くそっ! ふざけんなっての!」
悪態をついて巫女から体を離す
「サダミツ様……? 続きは、してくださらないのですか?」
「ああ? そんなのあたりま」
「ああ、なるほど! ……サダミツ様は、受け側のお方でいらっしゃるのですね。大丈夫です。私は、どちらでも、いけますから、ね」
「は? おまえ、なにを……って、おい、近付くな! おい!! ……ッアー!」
この時の
翌朝、二人の様子を見に来た兵士たちは、その惨状を見て驚愕した。異世界から来た英雄は、その体、の一部も、そして精神も、壊れてしまっていたのだから。
「み、巫女様、これは一体……」
「あはは……、やりすぎちゃった。てへ」
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