新任女神のサツリク異世界転生術
@masayama
1回目:須々木辰也<異文化交流>
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
見慣れぬ風景を目にした男が興奮を抑えられずに歓喜の大声を上げる。
「漫画やアニメで見た中世っぽい街並み!そこらにいる亜人たち!!これぞ!まさに異世界転生か!!!」
男の名は
先日、自宅の階段から転げ落ちて命を失ったが、私の力で異世界に転生した。
転生後の人生を見届けるのは、彼を転生させた女神として当然の義務だ。
「あっちには猫耳の
辰也は可愛い女の子や綺麗な女の子に嘗め回すような視線を向ける。
ちょっと気持ち悪い。人選を誤っただろうか。
「……ふう。いずれすべてのかわいこちゃんが俺のモノになるというわけだ。異世界転生様様だな!」
高らかに笑い声を上げる。
まあ、喜んでくれてるようで何よりだ。
「さて、異世界に来て最初にすべきことは……冒険者ギルドにでも行けばいいのか?」
さすがは私の選んだ転生者だ。こういうときのセオリーを理解してくれている。
大丈夫。ちゃんと冒険者ギルドのある世界と街を選んで転生させたからね。
「ギルドの場所を聞くなら、やっぱり可愛い女の子だよな」
辰也はそう呟くと、近くにいた亜人の女の子に声をかける。
兎のような耳を頭につけたプーリッシュという種族の女の子だ。
「やあ、そこの可愛いキミ。教えてほしいことがあるんだけど」
しかし、ウサミミの女の子は
うーん。セリフに問題ありかな。
「冒険者ギルドはどこにあるのかな」
辰也の質問に女の子は無反応だ。
「……えーっと。もしかして冒険者ギルド、ないのかな」
そんなわけはない。絶対にある。
しばらくして、ようやく女の子が口を開いて言葉を返してくれる。
そこでようやく、私は自分の失敗に気が付いた。
「……何語だよこれ」
そう。私は辰也に言語習得させるのを忘れていたのだ。
「……別の人に聞いてみるか」
前向きな考えを持つ辰也だったが、誰に話しかけても結果は同じだった。
辰也の言葉を理解できる者は誰もいない。
そして、日が暮れる頃になって、ようやく辰也は諦めたようだ。
途方に暮れた様子で座り込んでいる。
果たして、これから辰也はどんな人生を歩むのだろうか。
それは私のあずかり知るところではなかった。
うん。これは仕方ないよね。
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