傍観者
倫華
第一章 "物事には側面がある" 仁科千鶴 編
第1話 傍観者、仁科千鶴
傍観者、と言った方がいいのかな。
身の回りで起きてることを、ただ呆然と眺めて裏で楽しんでいる。
要するに人間観察ってやつですね。
奥深い人間関係には興味ないけど、まわりが引っ付いたり離れたりするのを予想するのが、ドラマを見るより楽しい。
例えば、クラスメイトにノリが合って、よく話すAちゃんとBちゃんがいるとする。
その子達はお互い自己主張が多くて傍から見ても合わなそうだけど、一緒にいる。
そこにCちゃんが入ってくる。
ここからが予想しやすい。
さて、Cちゃん、Aちゃん、Bちゃんの人間関係はどうなるでしょう?
まず、三人のうちの一人以上に愚痴を聞くの。
その後、あーこれはおそらく、CちゃんとBちゃんがくつっつくでしょうな〜と予想する。
最後にそのときが来るまで待つだけ。
まぁ、もちろんこんなこと誰にも言えないんだけど、個人的には楽しい。心理学者になってる気分で。
え、何故楽しいかって?
それは、自分が当事者じゃないから。
そう言いつつも私も当事者になろうとしている。最近、私も引っ付いたり離れたりした。
離れたのは幼なじみの陽花里。喧嘩した訳じゃないし、気に食わないところがない訳では無いし嫌いになった訳でもない。そういう時期ってやつなんだと思う。
逆に引っ付いたのは聖奈。自己中心的なお嬢さま。あまり関わりたくないけど理由は、特にない。
中学二年生になった四月。
私、陽花里、聖奈は同じB組になった。その頃の私は、いろんなことが重なってイライラして陽花里に愚痴をスッキリするまで言っていた。それと同じ頃に私と陽花里の間に聖奈が入ってきた。割り込んできた聖奈に私は、『お友達探しお疲れ様ですぅ〜 お友達見つかるといいですね〜 まぁ、見つからないと思うけど』と心の奥で嘲笑った。
気づいたら三人で居ることが多くなったときには、聖奈と陽花里は会話が無くなった。話せばいいのに。
「吹奏楽部に入ろっかな〜」
五月頃に突然、聖奈が爆弾発言を投下した。
『うわ、コイツ爆弾発言投下しやがった
うちの部廃部の危機到来\(^o^)/』と、裏垢のT●itterで無性にツイートをしたくなった。陽花里がいたら恐らく顔は死んでただろうな。
「今の部活は? 楽しくないの? 」と私は聞いた。
「えー、今の部活クソみたいなヤツしかいないし、やっていても楽しくない」
「クソみたいなヤツって……」
やばい、本心が口から出てしまった……!
「だってさぁ〜? 」
あ、良かった、聞いてないみたいだ。
「アイツさ、私が親切にしてやっても仇を返すみたいにグチグチ悪口言ってくるんだもん」
あー、始まった悪口大会。
あらまぁ、今日もよくお口が動きますね。
その滑舌の良さ、絶対何処かで遣えますよ。
まぁ、私も悪口言ってるから人のこと言えないんだけど。
「部活で何かあった訳? 」
「そうなんだよー! ねぇ、千鶴聞いてよ」
「え、うん」
話が長たらしいので簡単に説明すると、
聖奈の前の部活は、初心者と経験者の差が大きいらしく、顧問がひいきするらしい。
そして、顧問が「なんでまともに出来ないんだ! それぐらいやれよ! 」的なことを怒鳴り散らしたらしい。
人それぞれ個人差があるだろうと聖奈は理不尽に感じ、辞めたいと思ったらしい。
他にも、自分は悪く無いのに、自分のせいにされる。先輩から睨まれた。
具体的に言うと、マネージャーがいないその部活は、タオルや水分補給などの管理を自分達でしなくてはならないらしく、その担当が聖奈だった日があった。
仕事をひと段落終えて練習に戻り、休憩時間になると、先輩達が何やらグチグチと愚痴をこぼし始めた。
キレても何があったのか友達からも教えてくれないから、聖奈はそのまま放置した。
しかし、挙句の果てにはまた先生から怒られる羽目になったらしい。
「ねぇ、ひどくない? こんな部活辞めてやろうかって感じ」
「それは酷いな」
「でしょ⁉︎ あり得ない」
このとき、私は少し引っかかったけど、何も気にしなかった。
すると、キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。
あーチャイムありがとう。このまま愚痴話二時間コースを阻止してくれて。お命救われましたわ。
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