第109話 月の毒

カーテンの隙間から差し込む月明かりが

青白く二人の影を浮かび上がらせて

この夜が静かに深まりゆくのを知る


その光をぼんやり眺めているうちになぜか

あなたの体も魂も全て手に入れてしまいたい

そんなどうしようもない欲望をもて余し始め

その白くなめらかな首筋に手を伸ばす


そんな僕を見ながらあなたは瞳を和らげる

微笑むあなたに導かれるまま指をかけ

ごまかすようにそっと額にキスを落とせば

その指に力を込めて、とあなたは囁いた


苦しみの後あなたのモノになれるのならと

美しいその体を全て僕に捧げるあなたは

まるで全てを悟った哲学者のように

強くて弱くて激しくて静かだった


ああどうか、壊してしまいたい僕を許して

愛しているから壊してしまいたい

矛盾だらけの僕の愛を許して


清潔なシーツに零れる涙はひどく儚くて

親指でそっと白い頬を拭った

目を閉じた僕は虚像の中のあなたを殺して

現実の中のあなたを抱きしめた

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