第107話 せつなさの穴ぼこ

少女の手から離れた風船は

みるみる空へと吸い込まれ

嘆くヒマもなくその赤は

雲の奥に消えていった


それはよくある日常の景色

よくあるただの風景の一コマ

それでも一体どこへと

思い返すたびせつなくて


空から零れる氷の欠片が

涙みたいに頬を濡らす


ほんの少しだけ感じる痛みに

なぜだか妙にほっとして


せつなさという名の穴ぼこを

胸にそっと抱きしめた

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