第99話 願望

夜の帰り道 妙に人の群れは静かで

ひたすら寒さが体に刻み込まれていく


時が経つにつれ強まっていく風は

まるで発作みたいにその力を見せつける


突風は空の雲を粉々に蹴散らし

並んでいた自転車をなぎ倒す


ほんの少しだけ残っていた秋の葉は

地に叩きつけられ木は裸体を晒す


ねえそんな意味のない破壊活動やめて

あたしをどこかに連れてって

その強い力でさらって

どこか遠くへ吹き飛ばして


荒れ果てた大地に投げ捨てても構わない

その暴力に飢えた目で

どうしようもないあたしだけ見つめて

砕け散るまで叩きつけて


そんなあたしの願望をせせら笑うように

風はこの鼻先をかすめ過ぎ去っていく


置き去りにされたあたしは一人

コートの襟をほんの少しだけ立てて

無慈悲に吹き荒ぶ風の中を

何事も無かったかのように歩いて行く

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