第63話 つなぎ止めるもの

お日様をたっぷり浴びた洗濯物のにおいとか

秋空の下坂道を自転車で行くときの風とか

心の奥底に刻み込まれた記憶の数々が

どんなときもきっとここへつなぎ止めるから


だから僕たちは知らなければならない

冷たい雨に身をすくめるようなときも

息を潜めて痛みが過ぎるのを待つときも

ただゆっくりと時が流れているということを


今日はこんな穏やかな風が吹き

やわらかな時があたりを満たしているから

目を閉じて大きく息を吸い込もう

昨日の痛みを洗い流そう


変わらないものなんてどこにもなくて

でも揺るぎないものはきっと胸にあるから

その思いの在処を確かめながら

ここにあるこの存在を抱きしめよう



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