第13話 影と僕

白く浮かび上がる街は夢のように

漂う僕にやさしく手招きする

誘われて歩き出すのは一体なぜ?

理由を知ることもなく流れにまかれて


加速すればするほど忘れ物はふえて

知らんぷりで目を閉じてやりすごすけど

胸に空いた穴は広がりゆくばかり

それをむなしく思うことすら忘れて


照りつける陽射しが体を貫いて

かすむ意識の中で現実を拒む

僕の足下から伸びる黒い影は

ゆらゆらと熱気の中で淡く揺れた


ふわり浮かぶ影が僕の右手つかむ

決して逃がすまいと強く爪を立てて

取り残されまいとあがく僕を笑う

だけどその目だけはどこか哀しそうで


ちゃんと見てよと僕の影は僕に言う

僕の歩きたい道は本当にここかと

誰かの速度じゃなく自分の足で

自分の目で確かめろと背中を押す 


ふわり浮かぶ影に僕は手を取られたまま

歩き始めるさっきとは違う道を

揺らがない足下を踏みしめながら

この目で見えるその先だけを信じて

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る