未定
もの
第1話
古ぼけたチャイムの音が学校中に響く。
夏に近づいてきたせいか、あつい空気の中で音が響いているのか、なんだかチャイムの音が何時もより間延びしている気がする。
窓から時計塔を見れば、学校自慢なのに華がない。校長ももう少し綺麗にしたらいいのにと私は呆れる。そもそもあの時計を置いておくことの利点もない。
教室の中にありがとうございましたの合唱が聞こえてきた。ぼーっと窓を見ている内に授業が終わったようだ。私は終わりの挨拶をせずに授業を終えてしまったらしい。
一人で遅れた私は辺りを見回す。私以外の女子のクラスメイトはお昼にしようと互いの机を近づけ合い、盛り上がっていた。生憎、彼女達の様に私には昼食を共にする相手がいないので、外に食べることにしている。
その光景をぼんやりと眺めつつ、荷物を纏めて、外に出る準備をした。教室のドアに手をかけ、出て行こう、と。その瞬間、彼女達の口からは聞こえよがしに私に対する悪意が紡ぎ出される。今となっては、何時もの事なので、相手にするのも煩わしく知らん顔をして堂々として、出て行く。
教室を出てから、私は彼女達の幼稚さに溜息を吐いた。彼女達は正義と私利私欲を履き違えている気がする。そして、誰かを除け者にしないと気が済まない習性に呆れを感じながら。一息つくとスカートのポッケにしまい込んでいた、小さな電子端末を取り出し、白いブラウスの胸ポケットにしまい込んでいたイヤホンを取り出す。お昼休み特有の雑音を聞きたくなくて、人の声が聞こえないぐらいの大きめの音量を流して、耳に蓋をする。
そのまま、私は教室をあとにして、目的地に行くべく、人々が集まり集っている中、廊下の人混みを掻き分けて突き進む。
そんな私に対して好奇心の視線が一斉に突き刺さる。きっと、傍観者側に立場を置いている彼等に迫害されている側の気持ちを推し量る事は出来やしない。だが、こうやって彼等の事を揶揄している私であっても彼等の立場に転じてしまえば、今、疑問視している事を何も感じなくなってしまうだろう。彼等は生贄が居る事で成り立っている虚構の物に縋り付く以外、成す術がないのだ。それは私だけど。
(曲はいつものを大きな音で流すに限る。)
未定 もの @____Mono
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