神殺しの龍

天魔 ハルニャン

第1話 平凡召喚士の奇跡

「はーい!これから卒業生による、『永久召喚儀』を行いたいと思います!」


桜が舞う学校の前

ここ、『冒険者育成推進校 レベリア』では

卒業生達がこれからの冒険や商売、専門業などで使える『モンスター』を召喚する儀式が行われていた。

普通なら一生の『相棒』となるモンスターに興味を持ち、騒がしくなるのが当たり前でる。

しかし僕はそんな気分にはなれなかった。


半月前

僕と先生との二者面談

「えーと、フレン=バーミリア君だね」

「はっ…はい!」

この時の僕はやや緊張気味だった。思えば懐かしいような気がする。

「まず初めにフレン君の将来について聞こうか」

僕は迷わず答えた。

「冒険者です!」

「そうかい、そんな君に悪い知らせだ。これを聞いたら少し自分の『夢』について考え直してみてくれ」

この時、必死に冒険者になる事を望んでいた僕にとって地獄のような一言が飛んだ。

「この間『永久召喚儀 召喚率調査』があっただろう?」

ん?なんで今そんな話を…

先生は戸惑う僕に、可哀想な人を見るよな目で見てきた。

「フレン=バーミリアの『召喚率』は…」

ゴクリ…、僕は一生の『相棒』との可能性にドキドキしていた。

しかし、現実は僕に悪夢を見せた。


「スライム99%です」


え…?聞こえなかった…スライム?

「あ…あの、もう一回教えて下さい」

先生はため息を吐く。


「スライム99%だよ」


状況が理解出来ない。スライム…?

そんな、99%なんて嘘に決まってー


先生が突き出した調査書にはこう書かれている。


フレン=バーミリア

・スライム召喚率99%

推進.商売人、盗賊 等…


「え…?先生、これは何の冗談でー」

未だにこの状況に理解’’したくない’’僕にトドメを刺しに来た。


「次が控えているんだ!早く出なさい!」


この時、僕の心の中で光っていた『希望』が割れる感じがした。


あの日から半月が経ち、今に至る。

この半月で現実を知り、前まであったヤル気や、前向きな気持ち、優しさ等のプラスの心は腐り果てていた。


そろそろフレンの番である。

重たい足取りで魔法陣の上に乗る。

あぁ…召喚した後に聞こえる声はきっと「ピキー!」とかだろうな…


「では詠唱をお願いします」

先生が生徒に指示を出す。その通りにフレンは詠唱を唱える。


「悪意ある外敵よー我ら召喚士の下に契約を結ばんー」

この後、普通は「聖なる書と共に現れん」で詠唱を終了させるのだが、フレンはこの詠唱を無視し、ある詠唱を唱える。


「禁じられし書と共に…んぐぅ!」

しかしそんな悪戯も見抜かれてしまい、口を塞がれてしまった。


「君!1歩間違えば『魔族』や『神』が暴走して生まれる所だったぞ!?って言うか人の話を聞いているのかね?」

担当の先生はフレンに容赦なく怒る。しかし、こんなにイキイキと話しているのは先生だけであった。

周りは何故か口を開けたまま閉じない。

他の先生も硬直している。

そしてフレン自身も担当の先生の後ろを指して震えていた。


「ん?説教中に余所見とは…ヤル気あるのかね?」


「違う…後ろ、後ろをー」

「後ろがどうしたんだ?」

フレンに言われ、後ろを振り向いた。



そこには小さな龍が居た。



「あ…あぁ…『龍』だと?!」

担当の先生も今更に震え出す。

途端、龍がフレンの前に移動する。

周りの生徒は恐れて場を離れる。


「な…なんでスライムじゃないんだ?!」

絶望し切っていた心に焦りと恐怖の他にもう一つ、腐りきっていた心が浄化された。


「なぁ!?なんで僕はドラゴンの召喚に成功したんだい?!」

涙目で言葉の通じないモンスターに抱きついた。


この日、スライム召喚率99%の男フレン=バーミリアは謎のドラゴンの召喚に成功した。

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