平安の兵・今昔夜話~赤眼の鬼子~
嘉月青史
序章
善と悪
今となっては昔の話だ。
その者は、成長の後に「
されど彼の生後は、決して
こんなこともある。
後の世に英雄と呼ばれた者が、皆生まれた直後からそうであると祝福を受けた例は多くない。
また後に悪逆の
そんなことも、少なくない。
生まれもっての英雄など、この世に存在することはなく、生まれもっての悪党など、
誰にも彼にも、
だから……というわけではないが、この世に生を享けたその子もまた、生まれたばかりの頃、その本質を見抜けた者など一人たりともいなかった。当然である。生誕から、その運命や
だが、少なくともその子は恵まれていた。
それだけははっきりといえる。
多くの理解者が周りにはいたし、良き親も友も師もいた。もっともそれに当人は気づかずにいたが、振り返ってみれば、きっと彼もその事に気づいたことだろう。彼は、とても恵まれていた。
一方で恵まれざる者もいた。
その者は己のことを理解する者はいれども、それが決して善なるものとは呼べなかった。
人の生とは難しい。
多くの歴史、多くの人物の伝記に触れる度に、人々はそう思わざるをえない。何を行なえば正解で、何を行なえば
中には、そこが面白いという者もいるが、それを変人と見られても仕方がない節があるのもまた事実である。
――話が
そこに絶対の正解はないし、明確な不正解も存在しない。
ただ、どちらへ行けば「人として」正しき道か、あるいは「人として」過ちかは、おおよその予想はつくものである。
これは、そんな正しき道をいった者と、邪なる道を進む者の、
時代は
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