Last NAME 閃光の英雄と闇の奏者 第十一章

精霊玉

黒白の一族(こくびゃくのいちぞく)


「ほう。ならばその願い、かなえてやろう」

 その言葉とともに自分の身に起こったこと。それは自分の中に眠っていた力が目覚めたこと。そして……自分の中の『何か』が決定的に変わってしまったことがわかった。




数時間後、凛珠は城に帰還した。お帰りなさいと言おうとした燈華は彼の変化に気づいてはっとなった。

「陛下……あなた、まさか」

燈華の様子を見て凛珠は言った。

「さすがだな。……お前が察しているように俺はもう『人』ではない。……俺は人であることをやめた」



その言葉に燈華の表情がゆがんだ。そして彼女は凛珠に近寄るとその顔を思いっきりひっぱたいた。

「ねぇ、どうして?どうしてあなたは人であることをやめたの?凛珠……どうして!?」

彼女の眼から涙がこぼれおちた。凛珠はそんな彼女を見ても表情一つ動かさなかった。

「あいつを助けるために神の力が必要だったからだ。それは人の身では絶対に手に入らないからな」

淡々とした口調で凛珠は言う。その様子を見て燈華は何を言っても無駄だということに気づいた。それほどまでに彼の決意と覚悟は重いのだ。それをさっとった燈華は言う。

「そう……。でもね、これだけは言わせて。たとえ何があっても私はあなたのそばにいるわ。そう、約束……したよね」

その言葉に凛珠はほほ笑み、燈華を抱きしめて言った。

「約束したな。……こんな俺になってもずっと一緒にいてくれると言ってありがとう」

その様子を、千尋は見ていた。そして彼自身も、覚悟を決めた。




満月が天頂に差し掛かる時間帯。千尋は昼間凛珠がいたあの社の前にいた。

「いるんだよね?『創造主』」

千尋の声はとてつもなく冷たい。その声にこたえるように『創造主』が姿を現した。

「何の用だ?『狭間』の子供よ」

こちらも千尋の声音に負けぬほど冷たい声。

「僕はお前に訊きたいことがあってきた」

その言葉に『創造主』は言う。

「ほう?訊きたいこととは?」

その言葉に千尋は目を一度閉じ、そして言った。

「『神』となったあいつと一緒にいられる方法はあるのか?僕はそれが知りたい。たとえどれほどの代償を払うことになっても、僕は修一を闇に落とした責任を負わなければならないからな」

その言葉に『創造主』はいった。

「凛珠と一緒にいられる方法か?あるぞ。それは、己が魂の未来と引き換えに老いることも死ぬこともない体になること」

その言葉に拍子抜けした様子で千尋は言った。

「なんだ、その程度でいいのか」




次の日の朝、凛珠は千尋の姿を見てぎょっとした。

「ヒロ……お前」

言葉を無くす凛珠の様子を見て言った。

「へえ、すぐわかるんだね。……もしかして僕がこうなったの自分のせいだと思ってるかい?」

凛珠の固まった様子を見て千尋はため息をついていった。

「これは僕自身が選んだことなんだ。キミが責任を感じる必要はない」

千尋のその言葉に凛珠が胸ぐらをつかんで言った。

「だが俺が『神』となったからだろう!?お前が修一のこと闇に突き落としたとでも思っているからなんだろう!?違うか!?」

その言葉に千尋はむかっと来た。凛珠の手を振りほどくと怒鳴った。

「相変わらず昔からごちゃごちゃ言うな。これは僕が選んだことだ。お前が責任を感じる必要なんてどこにもないって言ってるだろう!」

凛珠はその言葉に黙りこくった。なにも反論できなかった。言い募るなんてこともできない。その様子を見て千尋は言う。

「修一のことを助けだすんだろう?お前ひとりでできるとでも思っているんじゃないだろうね?」

凛珠のそのとき一瞬だけ浮かんだ表情を見て千尋はわかった。本気で一人でやるつもりだったらしい。

「僕はお前に協力する。僕も、あいつのことを助けたいから」




かくして、この時に世界の監視人にして守護の一族は誕生した。

 その名は、黒白の一族

 闇と光をつかさどる、不老不死の力を持った一族

 そして、ずば抜けた『異能』を持つ一族

  

そして、この黒白の一族誕生のときより

蒼天華一族と玖翠一族の果てしない戦いが始まった。


そしてこの戦いが終わるのは

これよりもはるか時が経った、

   光の神の血のみを受け継ぎし少年の現れし時

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