170705「もう戻らない私をどうか許して」38

 柵が曲がる程握りしめ、彼女は懇願した。

「もう戻らない私をどうか許して」

 冷たい風の吹き込む地下牢で、膝を折って何度も許しを請う。

 毎日毎週毎月毎年。

 繰り返し、繰り返し、行われてきた光景だ。

「――――」

 塀の向こうで僕はまた、言葉にならない許しを与えた。

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