犬猿の仲



ついに模擬戦が始まった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「いくぜ!!!!!」


「来なさい」


ハンナはとても落ち着いているのに対してレオンはとても気合いの入った声で木剣をハンナに向けて振っていく。本当にハンナのことを女だと思っていないようだ。


俺は少し心配してみていたが周りはそんな様子はまったくない。その理由は模擬戦を見ているとすぐにわかった。


ヒュン ヒュン カーン カッ キーン


「どぉりゃぁーーーー」


どう見ても攻めているのはレオンのハズなのに顔だけ見るとレオンの方が辛そうだ。


レオンは性格通りまっすぐ力で勝負する「剛」とするなら、ハンナはあの性格からは想像できない相手の力を利用するかのような「柔」だ。


それを証明するかのようにレオンの剣はハンナの脚さばきによって交わされるか剣同士のわずかな触れ合いによりそらされてしまっている。


レオンにとっては何倍にも長く感じられる5分の攻防の均衡はあっさり崩れた。


「はぁはぁはぁはぁ」


「もうおしまいなの?いつもの勢いはどこに行ったの?」


「まだ…ぜぇせぇ…これからだ」


レオンは呼吸が乱れ剣の鋭さが落ちもう動くのも辛そうなのに対し、ハンナの方は呼吸もほとんど乱れておらず疲れはほとんど見て取れない。


「こんどはこっちから行くわよ」


さっきまでの攻防が嘘のようにレオンは防戦一方となった。



キンッ キーン サッ ドン ガシュッ


致命的な一撃は食らってはいないがレオンは確実にハンナの剣を食らっていた。


「そろそろ諦めたらどうなの?」


「はぁはぁ…ぐっ…はぁぁぁぁ!」


レオンは最後の力を振り絞ったように一直線にハンナに突っ込んだ。これを食らったらハンナでもただでは済まないだろう。


しかしそんな一撃をみすみす食らうハンナではない


キーーーーーーーーン


レオンの剣が宙を飛んだ。

ハンナは単純になったレオンの剣を完璧に見切りレオンの剣の根元に1ミリのズレもなく自分の剣を合わせたのだ。


「そこまで」


「勝者ハンナ」


再び剣闘場は歓声に包まれた。レオンは疲れて今は立つこともできない。流石のハンナも額に汗を浮かべている。


「さすがハンナね」


「レオンも懲りないわねぇ」


「レオンも惜しかったぞ」


「次は勝てるぞ」


両者にはそれぞれみんなから労いの言葉が送られた。


「「「お疲れレオン」」」


戻ってきた俺たちはレオンにねぎらいのことばをかけた。レオンはとても悔しそうだった。


「くそ〜。また負けた〜」


「レオンの・・・54敗目・・」


「私に勝とうなんて100年早いわねレオン」


「次は絶対勝つからな」


レオンとハンナがいつも通りの会話をするなか、あんなすごい模擬戦を見て


「俺はこの世界でやっていけるのだろうか」


こう思わずにはいられなかった。










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