小さな春便り

朝起きた時はまんまるだった心も

段々削られて磨り減って

いつの間にかトゲトゲで

ちょっとした事にもビンカンになっちゃって


あーもう

もっと普通でいたいのに

あーもう

もっと平和でいたいのに


休憩時間に飲んだミルクティ

ホッと一息落ち着いて

心の中まで降ろして

安らぎの力で修復して


どうにかこうにか誤魔化して

給料分のお仕事をこなして

ヘトヘトになって

心も随分減っちゃって


とぼとぼ私は帰ります

いつもの道を帰ります

心なしか風が冷たく感じます

見上げても星ひとつ見えません


ふと覗いた果物屋さんの店先では

小さな春たちがもうすでに御披露目されていて

見ているだけで少しずつ癒されて

気が付けば春のひとカケラを我が家に御招待


小さな小さな季節の使者は

今お皿の上にちょこんと座って

その無邪気な笑顔で私を和ませて

まだ外は冷たい風が吹いているけれど


甘酸っぱい香りがとても愛しいね

うぶな君は真っ赤に照れちゃって

今はまだ見ているだけでいいよ

ただそれだけで心が潤っていくよ


小さくて赤くて可愛い苺ちゃん

自然の赤い色が何故だか眩しいよ

こんな蛍光灯の灯りの下でも

こんな一人きりの淋しい部屋の中でも


毎日同じような日々で

季節の移ろいを忘れていました

こんな小さな小さな命たちだって

こんなに一生懸命季節と共に歩んでいるのに


苺たちをきれいに洗って

穢れのない純粋な色を愛でて

そのひとつを手にとって

生命の感触を確かめて


その美しい完成された姿

食べちゃうのは少しかわいそうだけど

でもやっぱり食べて欲しいのかな

そうだよね、食べちゃってオーラが出ているもんね


口に入れた瞬間広がるイメージ

それは幼い頃のイチゴ狩りの記憶

毎日が楽しかったあの頃の記憶

あまいあまい気持ちで体中満たされていく


不思議だね

あまい気持ちで満たされちゃうと

今日の色々みんな許せちゃう

甘酸っぱいやさしさで全部許せちゃう


また明日も当たり前のめんどくさい一日だけど

今日までの色々これでリセット出来たから

また心エナジー満タンで出かけていこう

小さな春を胸に宿らせて新しい一日を始めていこう

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