真冬の朝日の昇る頃に

口の中から体温計を取り出して

平熱なのを何度も確認していた

今朝の最低気温がまたやる気の邪魔をする

もっともっとこの楽園にもぐっていたいのに


ビルののっぽさは相変わらずさ

この寒空の下まっすぐに立っている

おやおや宿題でも忘れたのかい

僕の軽口もまるで聞いてない風で


みんなみんな首をすくめているね

今道に百円落ちててもきっと誰も気付かない

僕も多分気付かないかな

拾ってみたら役に立たないメダルだったりね


見上げれば雲が二重三重に

それぞれの速さで泳いでく

なるほど寒い訳だよ

見る見る内に雲の形が変わってく


勿論さ こんな日は暖かい

経験則で分かってる

こんな寒い朝なのに

水たまりの凍る朝なのに


ゆっくりと染まっていく空に

ゆっくりと染まっていく雲に

ああそれは何て静かで清らかな

何て事のないいつもの朝の儀式です


ふわあり ふわあり

空気が熱を帯びてくる

空気が光を帯びてくる

それはまるで母親の愛情のように


あたたかくて

やさしくて

光の当たる場所は

楽園から零れ落ちる慈愛


風のない時間

まるで無声映画のように

ドラマチック劇空間の空

圧倒的な存在感に圧倒される


この世界全て

風景の偉大な力が

心の奥まで響き渡り

呼吸するのも忘れてしまいそう


寒いのはイヤだけど

この景色に出会えるのなら

寝ぼけまなこもシャッキリするよ

さあ 今朝も風と一緒に

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