ハロウィンパーティ

ようやくだ

この時を待っていた

ゲートが開く瞬間

懐かしさで胸が溢れてた

偽りの時間は動き出し

見えない力がそこへと誘う

耐えられない孤独は 

今この時をもって振り出しに戻る


ロウソクの火が満ちる夜

誰か 誰か僕の名前を知りませんか

虚空に空しく響く声

誰の耳にも届かない言葉


そうか もう 僕の身体は世界にとけていた

全てに触る事の出来ない理から離れた存在

けれども だからこそ見える景色もある

そこらじゅうに飛び回る異形の輩

ロウソクは彼らを近づけさせないために


家々を飾るカボチャのおばけ

僕も幼い頃飾ったっけ

そろそろ仮想パーティーの時間だ

みんなみんな楽しそうにはしゃいでる

少し前の僕がそこにいる

みんなみんな楽しそうに笑ってる


一人寂しく眺めていたら

空から魔女がやってきて

ねえ、あなたももっと楽しみなさいよ

また明日から暗い闇の中に戻るんだから

誰かの耳元でそっと囁くのよ

僕と踊ってくれませんかってね


それでも僕は近づけなかった

見られるはずのないこの姿を見られるのが怖かった

あの日、世界が閉じてから

ずっとずっと暗い孤独の闇の中で

ずっとずっと寂しかったのに


仕方ないわねえ

じゃあ私たちと一緒に楽しみましょ

僕は魔女に誘われて

いつ終わるとも知れないパーティーへ

もう抜け出す事の出来ない闇の楽園へと


眼下の街では楽しい宴も終わりを告げる

子供たち楽しい夢を見ておやすみなさい

そして夢の中で僕と一緒に踊ろうよ

二度と覚めない夢を一緒に楽しもうよ

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