思い出の海

遠く去っていく船を眺めていたら

随分昔の事を思い出す

あの頃、深く傷ついて

どこにも居場所がなくて

あれよあれよと流されて

いつの間にか船の上に立っていた


流れる波を眺めて

知らない風景を眺めて

いつだって海は青くて

深く想えば涙も出たのだろうけど

そんな事は考えないようにしていた


今でもハッキリと覚えている

同じ境遇の仲間たちと出会い

仮初の幸せ気分を味わった

初めての場所で

初めての出会いで

何もかも新鮮で

それ以上でもそれ以下でもなかった


結局今となってはあの頃は思い出にしかならず

あの時出会った友の今の消息を誰一人として知らず

だからこそ今でも思い出すのだろう

余りに美しい思い出として

壊れやすく繊細なガラスの記憶として


遠く海を見ては思い出す

確かに救われたあの数ヶ月間を

穢れなき光に満ちた数ヶ月間を

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